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23.生誕祭にむけて
しおりを挟む「ユーリス様…。婚約の件ですが…」
「あぁ、貴女の心が落ち着いてからで結構です。考えてくださりありがとうございます」
遠くを見ていたその目線が、次は私の瞳に移される。その瞳にどきりとしながらも、自分を律して声を出す。
会えなくなる前に。伝えなければ。
「その…私、私で良ければ喜んでお受けしたいと思います…!」
言えた…!
ユーリス様はポカンとした表情を5秒程した後、喜色満面に溢れた。
「ほん…とに…?あぁシャティア嬢!私は本当に幸せ者です。ありがとうございます。私の事を選んでくださった事を後悔させないように努力します!必ず貴女を幸せにします」
子どものようにユーリス様が喜ぶので、思わずこちらも笑みが溢れる。
と同時に、明日からはこの笑顔を当分見る事ができない事に少し心が曇ってしまう。
「私…私は明日、自国へ戻りますが、ユーリス様の事…いつまでもお待ちしております」
彼は無期限の留学だ。
もしかすると、帰国は1年後、2年後、いや5年後がしれない。
「あぁ、それならば待たなくて大丈夫ですよ」
「えっ?」
「私も明日、自国へ帰ろうと思っているので」
「あ、明日ですか!?」
会えなくなる前に伝えなければと気合を入れたのだがちょっぴり肩透かしを食らった気分だ。
「一通りこの国のことは学べたし、再来月にある皇太子様の20歳の生誕祭には必ず出席する様に父にも言われていますので…」
そういえばすっかり抜け落ちていたが、我が国では王族の20歳の誕生日は国を挙げて盛大に祝う。その為、特別な理由が無い限り貴族は必ず参加しなければならない。
「その…シャティア嬢が良ければ、生誕祭のパーティで貴女の婚約者としてエスコートしても良いですか?」
「勿論です。とても…楽しみです」
2人で微笑み合ったのも束の間。ふと不安がよぎる。
「ユーリス様のお父様、マテリア伯爵はこの婚約についてどうお考えになるでしょうか…」
数日前に婚約解消した身である私は受け入れて貰えるだろうか。
しかも元婚約者は、ユーリス様の幼馴染であるダンテであるし…。
反対されてしまうかもしれない。
「父はこの婚約について大賛成なので心配しないでください。むしろ、応援してくれました」
「応援…ですか?」
まだ婚約解消もそれ程知れ渡っていないだろうし、求婚されたのも数日前だし、私が返事をしたのも数秒前だ。
「貴女に再会して婚約者に立候補したその日のうちに、父に手紙を送っておいたのです。昨日父からも返事が届き、"絶対にシャティア嬢の心を掴め息子よ!"と書いてありました」
マテリア伯爵には久しく会っていないが、歓迎されているようでホッと胸を撫で下ろす。
2人で笑い合う。
「そして…。もう一つお願いがあります。生誕祭で着るドレスを送らせて貰っても良いですか??」
「急ですが、よろしいのですか?」
「任せてください。実は、貴女が私のものだと周囲に知らしめたいという下心もありますが…お許しください」
照れたように笑うユーリス様に心が温かくなる。
生誕祭にはほぼ全ての貴族が参加する。
という事は元婚約者のダンテと、アリエラも来ることだろう。
会いたく無い相手だけれど…。
(もう何も私の人生に関係の無い人達だわ)
そう思ったのだけれど。
そういうわけにはいかないのだった…。
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