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30.生誕祭2
しおりを挟む隣にいる私に気付いていないのか、それともただ単に眼中に無いのか、
「ちょっとユーリス!!私、貴方に言いたい事がたっくさんあるのよ⁉︎」
そう言ってツカツカと私たちに近づいてくる。
ただでさえユーリス様が注目を集めていたのに、更に輪をかけて注目の的となってしまっているが、彼女は全く気付かずに続ける。
ユーリス様が一歩前に踏み出し、私を後ろに隠して立つ。アリエラを見るその目は、先程、私に微笑みかけてくれた人とは同じ人物とは思えない程冷たい。
「聞いてる~⁉︎やっと隣国から帰ってきたと思ったのに、ドレスどころか何一つ贈り物もしないで!極め付けは迎えにも来ないだなんて…私じゃなかったら愛想尽かされていた所よ!」
プンッと、頬を膨らませて片手を腰に手を当て、もう一方の手でこちらを指差す。
「何を勘違いしているのか知らないが、なぜ私がお前に贈り物をしなければならないんだ」
ユーリス様が冷静に返すと、アリエラは心底驚いた顔をしている。
「えっ…?ど、どうしたの?ユーリス…昔からユーリスは私の事を好きだったじゃない…。私に会いに隣国から帰って来たんでしょ…?」
「…は?私はお前の事など一度も好きになった事は無いし、帰国したのもお前には何も関係は無い。そして…」
ユーリス様が私の腰に手を回し抱き寄せる。
「私が愛するのはここにいるシャティアだけだ。分かったらすぐにこの場を去れ」
「えっ…?まっ待って…?なんで!?なんでアンタがユーリスといるのよっっ!!」
やっと私を認識したようで、先ほどまでの可愛らしい声と表情はどこへ行ったのやら、敵意を剥き出しで私に食ってかかる。
まさか、アンタ呼ばわりされるなんて…。何も懲りていないようだ。
「アリエラ様、お久しぶりです。なぜ…?と言われましても…。ユーリス様が私の婚約者だからです」
そう言ってにっこり微笑む。
事実だし、これくらいの意地悪は許されるはず。
案の定、アリエラの顔が真っ赤に染まっていく。
「なっなっこっこっこっ婚約者ですってぇ!?!?アンタ、ダンテは!?ダンテの事が好きなんでしょう!?」
「婚約者を蔑ろにして、他の女性と誤解を産むような行動ばかりしている人のどこを好きになれば良いのでしょう?それに…アリエラ様とダンテ様はあんなにも仲良しなんですもの。私、喜んで身を引かせて頂きました」
ユーリス様の腕に抱かれながら、アリエラの目を真っ直ぐに見る。
「やっぱり学園での噂は本当だったのね…」
「え…アリエラ様って、前はダンテ様に言い寄っていたのに次はユーリス様…?」
「えっ何何…?アリエラ様に近づいたら婚約者狙われるって…?」
この異様な光景を見ている周りの人達がヒソヒソと小声で話す声にアリエラは追い詰められていく。
「えっ…えっ…嫌…。嘘でしょ…?私、婚約破棄されて、借金もあって…」
アリエラがその場でへたり込む。
「ここは皇太子様の祝いの場だ。これ以上醜態を晒すのはやめておけ。勿論、この騒ぎの責任は後できっちり取ってもらう」
ユーリス様がそう言って、再び彼の手を取って歩みを進めようとすると、もう1人お呼びではない人物が私たちの目の前に立ちはだかった。
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