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2.カフェでの日常・非日常
8.日常の一コマと回想
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予想通りというべきだろうか。
セラスの接客はまるで問題なかった。
というより寧ろ、当初の懸念通り彼女目当のお客が増え、店の売り上げは右肩上がりだった。
プライベートーーもとい、仕事以外の喋り口調は相変わらずであったが、お客と接する時の口調・態度は浅井がかつて体感したソレと同等であった。
結果、彼女目当の客は増えたが、彼女を口説こうとする強者はいなかった。
誰しも一度は考えただろう。
晴れやかな笑顔に、
さらさらと靡く髪に、
すらりと伸びた足に、
あざとさを体現した服に、
心を躍らせる透き通る声に、
そしてーーその柔らかな胸故に。
彼女の美しさを愛で、
彼女との会話を愉しみ、
彼女と過ごせる時間に幸福を感じている。
美のランクが一定以上を超えると、それは信仰に近いものになるようだ。
それは男も女も、老いも若きも区別なく。
『我々如き凡庸民草が触れていいものではない』
そのような、暗黙の了解が、店内に厳かかつ不思議な空気を漂わせている。
ランダムに流されるクラシック音楽と、注文をとるセラスの声だけが響く。
その様子を、浅井は遠巻きに眺めていた。
店は確かに忙しくはなかったが、そういった謎の協力的な態度のおかげで、浅井は淡々と紅茶に向き合いことができた。
心なしか、自身の技量も上がった気がする。
まだ望む味への到達は遥か遠いが、着実な一歩を感じている。
ーー
セラス人気、とは言ってもあくまでカフェに美人店員がいる、ということに過ぎない。
お客にはお客の人生があり、生活がある。
彼らとしても四六時中、店に入り浸り、彼女との時間を楽しみたいのだろうが、そうはいかない。
それ以上に、閉店時間となれば、お客は帰るしかない。
セラスと浅井。
二人きりの店内。
「お疲れ様。今日もありがとう」
「何、契約だからな。当然だ」
仕事モードを解除し、口調が戻るセラス。
この切り替えの早さは見習いたいところである。
外国の文化、というやつなのだろうか。
どこの国かは知らないが、国民性というものなのかもしれない。
「ところでーー前から疑問だったのが、どうしてそこまで紅茶にこだわる?」
思い出したように、彼女は尋ねた。
気まぐれに、
なんとなく。
そんな雰囲気ではあったが、セラスの目は真剣だった。
蒼い目が、浅井のことをじっと見つめている。
「小さい頃から紅茶が好きだから……なんて、誤魔化しめいた回答は、ご希望じゃあないようですね」
「もちろんだ。嫌なら話さなくてもいいが」
嘆息しつつ、浅井は口を開く。
別段、隠し立てするような話ではない。
少し面倒で、
些か恥ずかしい。
その程度の問題だ。
「いや、話します。変に気を使われても困りますし」
浅井は立ち上がり、店の奥へと向かう。
併せて、彼女の顔を見た。
「長い話ではないです。それに、面白い話でもない。なので、一杯飲みながら話ましょうか」
その言葉に、彼女は微笑む。
強気な美女ではなく、お菓子に喜ぶ、あどけない少女のような微笑みで。
セラスの接客はまるで問題なかった。
というより寧ろ、当初の懸念通り彼女目当のお客が増え、店の売り上げは右肩上がりだった。
プライベートーーもとい、仕事以外の喋り口調は相変わらずであったが、お客と接する時の口調・態度は浅井がかつて体感したソレと同等であった。
結果、彼女目当の客は増えたが、彼女を口説こうとする強者はいなかった。
誰しも一度は考えただろう。
晴れやかな笑顔に、
さらさらと靡く髪に、
すらりと伸びた足に、
あざとさを体現した服に、
心を躍らせる透き通る声に、
そしてーーその柔らかな胸故に。
彼女の美しさを愛で、
彼女との会話を愉しみ、
彼女と過ごせる時間に幸福を感じている。
美のランクが一定以上を超えると、それは信仰に近いものになるようだ。
それは男も女も、老いも若きも区別なく。
『我々如き凡庸民草が触れていいものではない』
そのような、暗黙の了解が、店内に厳かかつ不思議な空気を漂わせている。
ランダムに流されるクラシック音楽と、注文をとるセラスの声だけが響く。
その様子を、浅井は遠巻きに眺めていた。
店は確かに忙しくはなかったが、そういった謎の協力的な態度のおかげで、浅井は淡々と紅茶に向き合いことができた。
心なしか、自身の技量も上がった気がする。
まだ望む味への到達は遥か遠いが、着実な一歩を感じている。
ーー
セラス人気、とは言ってもあくまでカフェに美人店員がいる、ということに過ぎない。
お客にはお客の人生があり、生活がある。
彼らとしても四六時中、店に入り浸り、彼女との時間を楽しみたいのだろうが、そうはいかない。
それ以上に、閉店時間となれば、お客は帰るしかない。
セラスと浅井。
二人きりの店内。
「お疲れ様。今日もありがとう」
「何、契約だからな。当然だ」
仕事モードを解除し、口調が戻るセラス。
この切り替えの早さは見習いたいところである。
外国の文化、というやつなのだろうか。
どこの国かは知らないが、国民性というものなのかもしれない。
「ところでーー前から疑問だったのが、どうしてそこまで紅茶にこだわる?」
思い出したように、彼女は尋ねた。
気まぐれに、
なんとなく。
そんな雰囲気ではあったが、セラスの目は真剣だった。
蒼い目が、浅井のことをじっと見つめている。
「小さい頃から紅茶が好きだから……なんて、誤魔化しめいた回答は、ご希望じゃあないようですね」
「もちろんだ。嫌なら話さなくてもいいが」
嘆息しつつ、浅井は口を開く。
別段、隠し立てするような話ではない。
少し面倒で、
些か恥ずかしい。
その程度の問題だ。
「いや、話します。変に気を使われても困りますし」
浅井は立ち上がり、店の奥へと向かう。
併せて、彼女の顔を見た。
「長い話ではないです。それに、面白い話でもない。なので、一杯飲みながら話ましょうか」
その言葉に、彼女は微笑む。
強気な美女ではなく、お菓子に喜ぶ、あどけない少女のような微笑みで。
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