風の聖女は護れないっ! ~聖女の力を分けた結果、聖女は“あほの子”になった~

笹色 ゑ

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 ヴァーナードにお屋敷で働いている人に挨拶をさせてもらってから、私の日課に屋敷探索が加わった。

 料理場でお菓子を習ったり、警備の人の訓練に参加して運動不足の解消をしている。

「図書館っ」

「図書室ですね。ヴァーナード様が集めている蔵書もありますし、このお屋敷を買った時に蔵書もそのままついていましたから、前の所有者のものも多く残っていますよ」

「へぇ~」

 どうせ難しい本ばかりだろうと思いつつ、図書館のような図書室に入る。

「使用人も休日や休憩時間は自由に利用ができます。特に高価な蔵書は別に保管していますが」

 本は買えない額ではないけど、たくさん買えるものではない。福利厚生としてはいいと思う。

「色々と見てみたいので、シファヌも自由にしてていいですよ」

 ここから出る時は声をかけるように約束して、本棚の間を歩いて回る。

 魔法陣の本はもちろん。色々な種類の本があった。

 世界各国の郷土料理の本なんかもある。実用的なものはヴァーナードが増やしたもので、なんかちょっと変わっているのは前の屋敷の所有者が置いて行ったものだろうと思う。

「……?」

 本棚の中で異国に関してのコーナーがあった。初めて見る文字に興味を感じて手に取る。

「おぉっ」

 そんなに分厚い本ではないけど、開いてちょっと声が出た。

 画集らしいが、不思議な文字が書かれている。絵本のようでもあるが、子供向けではなかった。

 私はどうやら色々な記憶が実はあるらしいが、それでもこれは見たことがなくてとても新鮮だった、

 画集は不思議な服を着ていて、ボタンではなく太いリボンみたいなのをベルトがわりに使って留めている。だけど着崩れしているようでどう着ているのかよくわからない。

 服を全く着ていないものもあるけど、大抵はちょっとだけ服を着ている。

 一番面白いのは、男の人の代わりにタコが女の人の体にまとわりついていたものだ。

 夜にヴァーナードとぎゅっとするのは好きだけど、いつもヴァーナードに任せていた。

 ふと、私は仕事もせず、のんびり暮らしていのにそう言う時も全部ヴァーナードに任せるのは良くないのではないかと気づいてしまった。

 ふんふんと真面目に勉強しておく。ハポナリアの文字らしいから、ハポナリアの言葉の本は借りて、書いている文章も読めるように頑張ろう。

「何かいい本はありましたか?」

 シファヌに問われてハポナリア語初級の本を掲げてみせる。

「これから始めてみようと思います」

「ああ、ヴァーナード様のお母様はハポナリアのご出身ですからね。ご主人様のことをお知りになりたいのですね」

 シファヌがそう言って、ヴァーナードのお母さんがあの画集の国の人だと知った。ならばやはりあれをできるようになったらヴァーナードは喜ぶかもしれない。

「ハポナリアは遠いですか?」

「島国で、閉鎖的な国だと聞いています。私もあまり詳しくは知らないのですが、独自の文化を持たれているとか。ヴァーナード様の髪色や髪質はあちらの国では珍しくないようです」

 ヴァーナードのサラサラな黒髪は好きだ、それがいっぱいいるのか。

「頑張って、勉強します」

 勉強は嫌いだけど、ヴァーナードをびっくりさせよう。



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