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69.〖レイド〗過去
しおりを挟む魔術塔に行くと、まるでヤツのように熱い連中がわんさかいた。俺はげんなりしながらも、今起こっている説明のつかない事件を調査することにした。
調査により。曰く付きといわれている場所へと、しらみ潰しに足を運んでいると――身体の自由がきかない様子である男性が、女性に凌辱されている現場に遭遇することになった。
その時に、俺でも撒かれそうになる程の俊敏さで逃げ去ろうとする女へ、何とか拘束魔法をかけ、そのまま連行した。
すると、驚くことに。俺達が追い求めていた機械のような物を女は手に持っていた。
直ぐに、魔術塔の人間がそれを解析してみると、その機械は恐ろしいものであることが分かった。
魔法をほんの少しだけ流すだけで使用出来るものであり。例え低級魔術師でさえも、それを使うことが可能なのだ。しかも、極級魔術師ですらかかってしまう程の強力な術であるという結果も出た。
魔術塔はそれの呼び名を【禁術機】として。これは絶対に使用してはいけない禁術とし、市民の目に触れさせないよう厳重に保管することにしたという。
そして、どんな解術魔法を使おうと。俺が救った男性は、未だに首から下を動かすことが出来ないでいる。
魔術塔の者達が、必死に解析を進めていくも……。
禁術機は、何かの条件で解術する仕組みがあるらしいが。その何か、までは分からずに時間だけが過ぎていく――。
********
「――……禁術機には何かしらの磁気が発生しているようです。それで、恐らくは同じ禁術機同士でテレパシーのようなものを送り合っているかと……」
「これは、生物なのか?」
俺がそう聞くと、科学班の者は困った表情を浮かべた。
「それは……分からないのです。私達人間と同じ意思があるのか。それとも、機械の機能による設定なのか……。ただひとつ言えることは、仲間が危機に瀕した場合は、己の活動を活発化させるようです」
「ああ……」
最近、禁術機の事件らしきものが、この国で頻繁に起きている。
「禁術機の追跡が出来る機械が、もう暫くで完成します。それまでは特に、国中に注意喚起をしないといけませんね……」
「そうだな、俺からも注意を呼び掛けるようにしよう」
その後。俺がしようとしている今後の動きについて、話をし。俺は魔術塔を後にした。
*********
「レイド、俺……。炎竜に助けを求めて来る」
――ヤツが真剣な表情を浮かべ、俺に話しかけて来た。
「炎竜……? 何百年経っても使役を断られているんだろ? 行くだけ無駄だ」
今更、何を言っているんだか。
「でも、あまりにも禁術機による事件が多すぎる。このままじゃ……」
「はあ……。だから今、科学班達が頑張っていることを……お前だって知っているだろう?」
それでも、ヤツはう~う~と唸っている。
「とりあえず。今は、それを待とう」
「レイド、じゃあさ……」
ヤツが顔を引き締め、俺を見詰めてきた。
「な、なんだ……?」
最近、こいつを見ると……何だかおかしな気持ちになる。
いや、初めてこいつと会った時から。何故だか、妙に俺の視界に入り込んで来ていた。
最初は、ただ煩い奴だから、目に付くのかと思っていたが……。こいつと関われば関わるだけ、俺は――。
「魔術塔の塔主になってくれよ~~~ん!!」
「はああ……?」
ヤツはくねくねとしながら、お願いお願いと手を擦り合わせている。
「最近、魔術塔の皆も、めちゃくちゃレイドのことを慕ってるじゃん? もう、俺とレイド2人で塔主になろう! いや、これはなるべきだ~~っ!!」
「断る」
ヤツは、なんで! なんで! と言いながら、俺の肩をガクガクと揺らしてくる。
「はあ~……。だから、俺はそういう地位に興味が無いし……。何より、面倒だ」
「じゃあ、じゃあ! 塔主じゃなくて、最終的の決定権を与えるみたいな、マイルドな感じにするからさぁあ~~!!」
「それでも、断る」
「えぇ~~~!!?」
ヤツは、嫌だ~! 嫌だ~! と言い。あろうことか、俺の膝に座り、身体にしがみついてきた。
「――ッ!? な、にをしてっ!」
「了承するまで、絶対に退かないぞ!! もし、了承してくれたら、前に話したお酒2本やるからさ~! 俺と一緒に盃を交わそうぜ!」
何? 酒だって……?
俺は、そんなものより――。
「……? ん? なんか、固いもんが――ふぎゃっ!? 痛っ! レイド、痛いじゃんか! いきなり、魔法を撃つなよ~!!」
「くっ……! 煩いっ!! 黙れっ!! 喋るなっ!!」
嘘だ。
誰か、嘘だと言ってくれ……。
ヤツは、その契約書を作成しておくだとか。お酒は、ヤツが認めた者しか開けられない、魔法のかかった引き出しに入れてるとか……。何か、ごちゃごちゃ言っていたが――俺は諸事情により、空間魔法を使ってその場から逃げた。
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