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白井 真 14
しおりを挟む小南に車に乗せられてから、5分程が経ち。降ろされた場所には、大きな倉庫が見えた。
その倉庫内に入り、小南が一つのドアを開けると――頑丈な柵の向こうに、犬小屋のような物が目に入る。
そして、犬小屋に繋がれるように、三葉が顔を伏せ、寝転がっていた。
「――みっ、三葉!」
(まさか、暴行されていたのか!?)
柵をガタガタと揺らし、何度も「三葉! 三葉っ!」と叫ぶ。
「……んぁ? ……あれ~、マコちゃんが見える……。んん~、夢かぁ」
寝ぼけた顔で俺を見上げ、目をしばたたき。コテンと、再び頭を下げた。
見た目では、暴行を受けた痕跡はなく。ただ眠いといったような様子だった。
小南が柵に近付き。その柵を強く握って「三葉、起きて。夢じゃないよ」と、静かに声を出した。
三葉がハッとしたように顔を上げ、目を大きく開き――。
「……っ、は!? ……え、夢じゃない? な、なんで、マコちゃんと、奈央子がここに……」
目を白黒させ、キョドキョドとしながらも身体を起こした。
(……三葉は、助けに来ることを知らなかったみたいだな。じゃあ、小南は……ただ三葉を助けたくて此処に来たってことか?)
奈央子は少しの間、動揺する三葉を見ていたが。面白いというように、大きな笑い声を立てた。
「理由もなく、警備の厳重なマンションに入れなかった。だから、三葉が――あの男のいるマンションに部屋を持っていて良かったわ。『幼なじみである、三葉の部屋に行く』という名目で入れたから」
蔑むような顔で、淡々と言葉を発する小南。
「……まさか、協力するってのは嘘……だったのか?」
三葉は、酷く傷付いたように顔をクシャリと歪めた。
「いいえ、全部が嘘じゃないわよ。だから、ほら……。三葉には、あそこのマンションに出入り出来る手引きをしてくれたお礼に――“終わり”を見届けさせてあげたかったの」
2人の緊迫した雰囲気に、戸惑っていると。後頭部に、硬い物が押し付けられた。
「やっ、止めろ! 奈央子っ、お願いだ……! 止めてくれっ!」
「……え、な、何?」
血の気の引いた、三葉の顔。俺の後ろに押し付けられている、物を見ている。
「『止めろ』って……何故? 三葉は、篠崎家を潰したかったのよね? この人間が死ねば、あの【篠崎 奏多】も自ら死んでくれるのよ? そうすれば、後は隙を見て、内側からじわじわと崩壊させることが可能になる」
小南の言葉に、息を呑む。
(どうして、小南が……そのことを知っているんだ?)
そして、その言われた内容によって。頭に押し付けられているのが【拳銃】であると察する。
「何故知っているかって……不思議?」
小南が、後ろでクスクスと笑う。
カチ、カチャといった音が近くで鳴り、じわりと手に汗が滲む。
――いつ、撃たれてもおかしくはない。
「三葉が、部屋に盗聴機を仕掛けてくれたの。奏多の弱みになる会話でもないかな~ってね」
「盗聴機……」
三葉は、下唇を強く噛みしめ「マコちゃん、ごめん」と俺に謝った。
「ということで……。思い残すことは、もう無いわね? じゃあ、さようなら」
「奈央子、止めろっ! ……ッ、クソッ!」
三葉がこちらに来ようと、鎖を引っ張り、激しく暴れている。首輪の隙間から血が滴り、噛みしめた唇からも血が流れ落ちていた。
その必死な姿を目の当たりにし。だからこそ、これが冗談ではなく、本当に自分が殺されるのだと認めざるを得なかった。
(……はは、マジで、死ぬのか……。スゲー巻き込まれ死に、じゃねぇか)
何故か、脳裏に……柔らかく笑う奏多の姿が浮かんだ。
――パァーンとつんざくような音が、辺りに反響する。
「……はぁ、悠長にし過ぎたわ」
カラカラカラと、地面を滑る拳銃。
「――奏多!」
奏多が、小南と似たような小型の銃を手に持ち。その銃口からは、細い煙が立っている。
「真くんから、さっさと離れてくれない?」
ゾクリとするくらい暗い目を、俺の後ろへと向け。手に持っている銃は、小南へと照準を定めていた。
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