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第5章 巡りの外
第1話 残された印
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夜明けの館は、妙に澄んだ空気を纏っていた。
だが、それは嵐の前の静けさに似ていた。
西棟の廊下に残る湿った匂いと、壁の奥で脈打つような気配——何かがまだ終わっていない。
翔は窓際の椅子で靴紐を結び直していた。
ふと視線の先、水沢の足元で、絨毯の色が微かに変わっているのに気づく。
「……それ、さっきからあったか?」
声をかけられた水沢が、足元を覗き込む。
「え……なにこれ……」
そこには、丸く縁取られた黒い染みがあった。輪郭は靴底の形を思わせ、じわじわと広がっている。
触れもしないのに、まるで生き物のように。
「踏み跡……?」結衣の声が震える。
森は無言で膝をつき、手袋越しに縁をなぞった。
「……型の核だな。完全には壊せなかったってわけだ」
「核?」翔が眉をひそめる。
「こいつが残ってりゃ、巡りは続く。外に出して境を越えさせれば……切れる」
そう言った森の横顔は険しかったが、その目の奥には別の影が差していた。翔は、それが気になった。
「外に……でも、出口は塞がってるよな?」結衣が問う。
森は窓の外を見やり、短く答える。
「昔はあった。西棟の奥に吊り橋が一つ……今は巡りの境に沈んでるはずだ」
水沢は染みを見下ろし、唇を噛んだ。
「……これ、私を引っ張ってるみたい。外じゃなく……どこかへ」
その声音には怯えだけでなく、何か後ろめたさのようなものが混じっていた。
翔は小さく息をつき、水沢から視線を外す。
館に来てから、誰も自分の過去を語らない。結衣だけは違う——彼女の眼差しには澱みがない。
だが、他の者たちは……ときおり、何かを避けるように視線を逸らす瞬間があった。
「……行くぞ。境界までだ」森が立ち上がる。
足音が廊下に落ちるたび、黒い染みはわずかに濃さを増していった。
まるでその足跡こそが、この場に集められた理由を暴き出すもののように——。
だが、それは嵐の前の静けさに似ていた。
西棟の廊下に残る湿った匂いと、壁の奥で脈打つような気配——何かがまだ終わっていない。
翔は窓際の椅子で靴紐を結び直していた。
ふと視線の先、水沢の足元で、絨毯の色が微かに変わっているのに気づく。
「……それ、さっきからあったか?」
声をかけられた水沢が、足元を覗き込む。
「え……なにこれ……」
そこには、丸く縁取られた黒い染みがあった。輪郭は靴底の形を思わせ、じわじわと広がっている。
触れもしないのに、まるで生き物のように。
「踏み跡……?」結衣の声が震える。
森は無言で膝をつき、手袋越しに縁をなぞった。
「……型の核だな。完全には壊せなかったってわけだ」
「核?」翔が眉をひそめる。
「こいつが残ってりゃ、巡りは続く。外に出して境を越えさせれば……切れる」
そう言った森の横顔は険しかったが、その目の奥には別の影が差していた。翔は、それが気になった。
「外に……でも、出口は塞がってるよな?」結衣が問う。
森は窓の外を見やり、短く答える。
「昔はあった。西棟の奥に吊り橋が一つ……今は巡りの境に沈んでるはずだ」
水沢は染みを見下ろし、唇を噛んだ。
「……これ、私を引っ張ってるみたい。外じゃなく……どこかへ」
その声音には怯えだけでなく、何か後ろめたさのようなものが混じっていた。
翔は小さく息をつき、水沢から視線を外す。
館に来てから、誰も自分の過去を語らない。結衣だけは違う——彼女の眼差しには澱みがない。
だが、他の者たちは……ときおり、何かを避けるように視線を逸らす瞬間があった。
「……行くぞ。境界までだ」森が立ち上がる。
足音が廊下に落ちるたび、黒い染みはわずかに濃さを増していった。
まるでその足跡こそが、この場に集められた理由を暴き出すもののように——。
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