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故郷は遠くで思い出す位が良い話

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ポカポカした陽気に、ヒュウガと二人でお昼寝をした。モフモフしたヒュウガのお腹は柔らかくて気持ち良い。

目が覚めて、辺りを見回して二人して驚く。

ヒュウガは俺の顔を嬉しそうに舐めると尻尾を振って走っていってしまった。

ーーーーーー

眠る前まで何もなかったその場所に、岩が剥き出しの山が出来ていた。喜んで駆けていったって事はヒュウガの故郷はこんな感じなのだろうか?
スキル、頑張ってくれたんだなぁ……。

俺はその場にまた寝転んだ。
ヒュウガは嬉しそうだったけど、あんな険しい山に登って何が楽しいのかわかんない。
やっぱりあれだな、犬にはある程度の運動が必要なのか。



故郷か……もう帰りたいと思わないなんておかしいのかな?
死んだもんとばかり、思ってたし……。

……良い……思い出もないし。

…………………。


ーーーーーー

『……お前がそんなんだから大和の成績が上がらないんだろう!?俺が子供の時はあんなんじゃなかったし、お袋はもっとなぁ!』

『何よ!?私が全部悪いって言うの!?俺が子供の時はって、大和は貴方と違うんだから違うのは当然でしょう!?そんなに自分のクローンが欲しいならお義母さんに大和を育ててもらえば良いじゃない!』

あぁ……また父さんと母さんが喧嘩してる。

『………だから大和が!!』
『でも大和が……!!』
『大和!』
『大和!!』


俺のせいか……俺のせいで二人はいつも喧嘩してるのか。

……早くこの家から離れなければ……俺がいなくなれば、二人はもう喧嘩することはないだろう。

早く……ここから消えなくては……。

ーーーーーー

ゆらゆら……大きなヒュウガの背中。

またいつの間にか眠っていたみたいだ。

いっぱい走り回って来たのか。
汗の匂いがする。

景色が赤い、夕方まで寝てたのか。

「起きたか?」

「ありがとう、起こしてくれれば良かったのに」

「気持ち良さそうに寝てたから」

そんなに気分の良い夢は見ていた訳じゃないんだけどな……。

「故郷を思い出せた?楽しかった?」

おんぶされて顔は見えないけど声は満足そう。

「故郷に似てたからって言うよりも……俺の為だけにスキルを使ってくれるとは思わなかったから、それが嬉しい」

「生命の泉もスキルの力だよ」

あれはヒュウガを回復させるために出現した物だ。

「そうだったな……ありがとな……もう少し距離あるし狼になるか?」

ヒュウガの服を掴んで、体を密着させる。

「ヒュウガが辛くなければ、もう少しこのままが良い」

「了解しました。お姫様」

真っ赤な夕焼けはカラスでも鳴き出しそうな空だった。
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