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奴隷編2-3
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鍬を振り上げ、固い土を延々と掘り返し、暑い日も寒い日も水を上げて、草をむしり……収穫する。
そんな毎日を想像していたんだけど……朝迎えに来てくれたおじいちゃんは確か……庭師のヴィックさん?
おじいちゃんと一緒に手入れの行き届いた庭園を……見回りだと一緒に散歩して、休憩だと公園にある休憩所みたいなとこでお茶を貰って……今は小鳥達に餌をやっている。
こんなので良いのか?これは労働?いや、ただの散歩だろう。
小鳥達は人によく慣れているようで、手のひらから餌を啄んでいく。
「かわいいなぁ……癒される……」
可愛い小鳥達に癒されて、これはこれで俺の欲求不満を治めるにはいいかも。
バードセラピーだと楽しんでいたのに、いきなり小鳥達が一斉に飛び立った。何だろうと周囲を見回すと手すりのところに鳩ぐらいの大きさの鳥が止まっていた。
この辺のボス鳥かな?
「すごい……綺麗……」
その体はキラキラと光っていて……氷?宝石?
様子を伺いながら、ゆっくり手を差し出すと俺の手の上に乗って来た。ひんやりと冷たい。氷の鳥なんて……さすが異世界。
「お前、綺麗だね……どこからきたの?」
逃げようとする気配はないので、もう片方の手で撫でてやると手に擦りついてくる。
「人懐っこいなぁ……何処かから逃げて来たのかな?保護しておいた方が良いのか?」
もしかしたら、見たことなかっただけでこの家の子なのかも。これだけ綺麗な鳥だ。ペットとして珍重されるだろう。
首を傾げ続ける姿すら可愛くて、ついそのくちばしにキスをした……途端、コテンと俺の手から落ちて固まって動かなくなった。
「うそ!?何で!?俺の所為!?」
どうしよう!!こんな貴重そうな鳥、殺したとか知られたら……サァッと顔から血の気が引く。動かない鳥を胸に抱くと、ヴィックさんを捜して庭を走った。
そうしている間に、氷の鳥はどんどん小さくなっていき、俺の胸元が濡れていく。
「ヒョーイ先生!!」
頼りになる人物の姿を見つけて駆け寄った時には胸の中にはもう何も残っていなかった。
「チハナ?どうした、何を泣いているんだ?」
「鳥が……鳥がぁ……」
何も残さず、俺の腕の中で溶けてしまった鳥に悲しみと恐怖と混乱で涙が溢れた。
「落ち着きなさい、何があったのかちゃんと話しなさい」
俺が氷の鳥の話を詳しく話すとヒョーイ先生は深く溜め息を吐き出した。
「心配いらない。チハナのキスぐらいで固まるなんて情けない……」
「???」
「リオルキース坊ちゃんには私から話しておく。チハナは部屋に戻っていなさい」
部屋に戻るように言いつけられ、重い足取りで部屋へ向かった。
ご主人様、怒るかな?
敷地内とはいえ、折角外に自由に出させて貰えるようになったのに……また明日から引き蘢り生活だろうか?何時もは楽しみなご主人様の帰宅が重いものになってしまった。
ーーーーーー
窓から外を覗いているとご主人様が帰って来るのが見えた。
どうしよう……出迎えに行った方が良いのだろうか……でも部屋に居なさいとヒョーイ先生に言われたし……部屋の中をうろうろして悩んでいるうちに扉が開かれた。姿を現したご主人様の口は真一文字に結ばれている。
キスしただけで死ぬなんて知らなかったんです……と、言ったところで許してくれるだろうか?
手を伸ばされてつい、体が強張ったけれどご主人様の手は優しく目尻に触れた。
「チハナ……泣いていたのか?」
「……申し訳ありませんでした。鳥を……殺めてしまいました」
「そんな事より……着替えなかったのか?こんなに冷たくなってるじゃないか……早く着替えないと」
衣装部屋に押し込まれた。
服を着替えて部屋を出るとご主人様が「おいで」と言うように手を広げてくれて……俺は厚かましくもその腕の中に飛び込んだ。
「あんなに綺麗な鳥だったのに……申し訳ありません!申し訳ありませんでした!!」
ご主人様の腕が優しく包み込んでくれて、その温もりに涙がまたじんわりと滲んだ。
「チハナは優しいね……大丈夫。あの鳥は簡単に死んだりしないよ……ほら」
ご主人様が顔を窓に向け、俺も同じ様に窓に目を向けると……コンコン……コンコン……と微かにガラスを叩く音がする。
恐る恐る近づいてカーテンを開けてみると、あの氷の鳥が嘴で窓を叩いていた。
「生きてた!!」
窓を急いで開けると、バサバサと羽ばたいて俺の肩に止まり顔を頬に擦り付けてくる。怖がられてもない。
「……馴れ馴れしいな……」
氷の鳥と頬を擦り寄せ合っているとご主人様が何かを呟いた
「なんでしょうか?」
「何でも無いよ。さぁ、生きているのもわかったなら安心してゴハンが食べられるだろう?鳥を巣に返してあげなさい」
氷の鳥を外に放す様に言われて鳥を帰すとご主人様に後ろから抱き締められた。
「チハナ……悲しい思いをさせてすまなかったな……」
唇を掠め取られ……
「次の休み。街に買い物に行くんだが、ついてくるか?」
ご主人様に初めて買い物に誘われた!!ご主人様のお供だ!!
初めての街に俺は想像を膨らませて力強く頷いて、心は浮き足立った。
そんな毎日を想像していたんだけど……朝迎えに来てくれたおじいちゃんは確か……庭師のヴィックさん?
おじいちゃんと一緒に手入れの行き届いた庭園を……見回りだと一緒に散歩して、休憩だと公園にある休憩所みたいなとこでお茶を貰って……今は小鳥達に餌をやっている。
こんなので良いのか?これは労働?いや、ただの散歩だろう。
小鳥達は人によく慣れているようで、手のひらから餌を啄んでいく。
「かわいいなぁ……癒される……」
可愛い小鳥達に癒されて、これはこれで俺の欲求不満を治めるにはいいかも。
バードセラピーだと楽しんでいたのに、いきなり小鳥達が一斉に飛び立った。何だろうと周囲を見回すと手すりのところに鳩ぐらいの大きさの鳥が止まっていた。
この辺のボス鳥かな?
「すごい……綺麗……」
その体はキラキラと光っていて……氷?宝石?
様子を伺いながら、ゆっくり手を差し出すと俺の手の上に乗って来た。ひんやりと冷たい。氷の鳥なんて……さすが異世界。
「お前、綺麗だね……どこからきたの?」
逃げようとする気配はないので、もう片方の手で撫でてやると手に擦りついてくる。
「人懐っこいなぁ……何処かから逃げて来たのかな?保護しておいた方が良いのか?」
もしかしたら、見たことなかっただけでこの家の子なのかも。これだけ綺麗な鳥だ。ペットとして珍重されるだろう。
首を傾げ続ける姿すら可愛くて、ついそのくちばしにキスをした……途端、コテンと俺の手から落ちて固まって動かなくなった。
「うそ!?何で!?俺の所為!?」
どうしよう!!こんな貴重そうな鳥、殺したとか知られたら……サァッと顔から血の気が引く。動かない鳥を胸に抱くと、ヴィックさんを捜して庭を走った。
そうしている間に、氷の鳥はどんどん小さくなっていき、俺の胸元が濡れていく。
「ヒョーイ先生!!」
頼りになる人物の姿を見つけて駆け寄った時には胸の中にはもう何も残っていなかった。
「チハナ?どうした、何を泣いているんだ?」
「鳥が……鳥がぁ……」
何も残さず、俺の腕の中で溶けてしまった鳥に悲しみと恐怖と混乱で涙が溢れた。
「落ち着きなさい、何があったのかちゃんと話しなさい」
俺が氷の鳥の話を詳しく話すとヒョーイ先生は深く溜め息を吐き出した。
「心配いらない。チハナのキスぐらいで固まるなんて情けない……」
「???」
「リオルキース坊ちゃんには私から話しておく。チハナは部屋に戻っていなさい」
部屋に戻るように言いつけられ、重い足取りで部屋へ向かった。
ご主人様、怒るかな?
敷地内とはいえ、折角外に自由に出させて貰えるようになったのに……また明日から引き蘢り生活だろうか?何時もは楽しみなご主人様の帰宅が重いものになってしまった。
ーーーーーー
窓から外を覗いているとご主人様が帰って来るのが見えた。
どうしよう……出迎えに行った方が良いのだろうか……でも部屋に居なさいとヒョーイ先生に言われたし……部屋の中をうろうろして悩んでいるうちに扉が開かれた。姿を現したご主人様の口は真一文字に結ばれている。
キスしただけで死ぬなんて知らなかったんです……と、言ったところで許してくれるだろうか?
手を伸ばされてつい、体が強張ったけれどご主人様の手は優しく目尻に触れた。
「チハナ……泣いていたのか?」
「……申し訳ありませんでした。鳥を……殺めてしまいました」
「そんな事より……着替えなかったのか?こんなに冷たくなってるじゃないか……早く着替えないと」
衣装部屋に押し込まれた。
服を着替えて部屋を出るとご主人様が「おいで」と言うように手を広げてくれて……俺は厚かましくもその腕の中に飛び込んだ。
「あんなに綺麗な鳥だったのに……申し訳ありません!申し訳ありませんでした!!」
ご主人様の腕が優しく包み込んでくれて、その温もりに涙がまたじんわりと滲んだ。
「チハナは優しいね……大丈夫。あの鳥は簡単に死んだりしないよ……ほら」
ご主人様が顔を窓に向け、俺も同じ様に窓に目を向けると……コンコン……コンコン……と微かにガラスを叩く音がする。
恐る恐る近づいてカーテンを開けてみると、あの氷の鳥が嘴で窓を叩いていた。
「生きてた!!」
窓を急いで開けると、バサバサと羽ばたいて俺の肩に止まり顔を頬に擦り付けてくる。怖がられてもない。
「……馴れ馴れしいな……」
氷の鳥と頬を擦り寄せ合っているとご主人様が何かを呟いた
「なんでしょうか?」
「何でも無いよ。さぁ、生きているのもわかったなら安心してゴハンが食べられるだろう?鳥を巣に返してあげなさい」
氷の鳥を外に放す様に言われて鳥を帰すとご主人様に後ろから抱き締められた。
「チハナ……悲しい思いをさせてすまなかったな……」
唇を掠め取られ……
「次の休み。街に買い物に行くんだが、ついてくるか?」
ご主人様に初めて買い物に誘われた!!ご主人様のお供だ!!
初めての街に俺は想像を膨らませて力強く頷いて、心は浮き足立った。
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