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第1章
暴かれる
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「え?新しい事務員を募集するのか?じゃあなんでココをクビにしたんだ?」
「ココ?クビ?」
「そうだよ。あんたが来る前に働いていた事務員だよ。あんたが事務兼弟子になるから辞めてくれって言われてココは泣いていたんだ。急に言われても困るって…」
「俺はただの弟子だ。事務と弟子を兼任するなんて一言もいってないし、給金も貰っていない」
2人は沈黙し、ザリを見る。ザリは固まって顔が青くなっている。
「いや、ち、違うんだ…」
なんとか言い訳を考えていたザリだったが、業者がなぜか強めに詰め寄りザリはその迫力に負け、とうとう白状した。
元々経営難だった所に間引きに参加していないロゼを見つけた。ロゼに弟子として雑用を押し付けてしまえば、事務員の給金が浮くのではと考えた。
以前の講習で黙って片付けをしてくれて便利な男だと思ったのだと。
それで間引きを引き合いに出し、他では苦労すると大げさに言ってロゼを焦らそうとしたのだ。焦ってはいなかったが、まんまと引っかかった形になった。
ロゼの件がうまくいったのでザリは事務員をクビにした。ようは事務員の給金をケチったのだ。そういえば、準備があるから来週から来てくれと言っていた。
なんの準備があるかと思っていたのだ。
そもそも去年、講習を受けるときなぜ、たくさんいる錬金術師の中でザリの工房にしたのか。それは人気がなかったからではないか。人が少なくあまり活気がなかったからだった。
あの時の講習人数は7名だ。人気のある講習は50名と多く、ギルドから部屋を借りて行う人もいた。しかし、人と深くかかわらないようにしていたロゼには人気がない方が都合はよかった。
だがなぜ人気がなかった?それは腕が悪いから他ならない。では今人気があるのはなぜだ?人気が出始めたのはロゼが出入りし始めての夏の後半からだ。
弟子の仕事だと言うので、薬草選びから切ったり煮たり煎じたり乾燥させたり調合をしていたのは、最近ではすべてロゼだった。わざわざ器に薬草を小分けにして机の上に並べていたりもした。後は仕上げに水魔法で配合すると言うのがザリだった。
軽く犯罪ではないか?
ようは最近のザリの人気はロゼのおかげだった。業者はこのことを商人ギルドに報告すると言って帰っていった。
ザリの顔は真っ青だ。
「ロゼ、その…すまなかった」
「…あんたは俺の心配をするフリをして自分の利益を計算していたんだな」
ふぅと、ロゼはため息を吐く。
「…このことは」
「レオンと相談する」
「いいのか…年齢のこと、お世話になった人たちを偽り騙してきたのだろう?ロゼこのことをその…レオンには自分から言い出したことにしてくれないか?
ロゼは事務員のことは知らなかったことにすればいい!それからきちんとココにもお詫びして保証金を納めるよ。これからはロゼにも事務の給金を払おう。
どうか許してくれないか。田舎に妻子を置いてきている。金が必要だったんだ。」
ザリは、なんとか許してもらおうと言ってはいけないことを言ってしまっている。
年齢のことをバラすぞ、と最初に言っている。後半の部分を先に言えばもう少し温情が出たかもしれないが己のことしか考えていないのかバレバレである。妻子も本当にいるのかどうか…。
「レオンと相談する」
ロゼは冷たく言い放した。
本当はザリの支離滅裂のよくわからない言い訳がおもしろくてもっと聞いていたかったが逆上してなにをするかわからない。さっさと帰ることにする。
がっくりと肩を落とすザリを見ながらロゼはどうしてもっとうまく俺を使わないのだろうかと思うのであった。
このまま普通に俺が弟子として来ていたら繁盛していただろう。俺が使えると分かったなら、事務員を雇い直すか呼び戻すかして薬草の調合だけに集中させて、ザリが水魔法の配合だけしていれば大儲けだったじゃないか。
事務員の給金なんてそんなに高くない。俺はただ働きな訳だし。しかも、俺は成人までこの街にいるのだし後2年は荒稼ぎが出来ていたのにバカなヤツ。
まっ自滅してくれて俺は助かった。
レオンにことの経緯を説明して調べてもらう。またおまえかと呆れているが、ロゼだって不本意である。
しばらくすると、ココという従業員がいたことやその日にクビになりこの件に関して黙認するように言われたことがわかった。なぜ、黙認することに従ったかというと公表すればおまえの評判が悪くなる、嫁の貰い手がなくなるぞと言われたらしい。
自分の落ち度でクビになったかのような気になったのだそうだ。
50代のおばさんでも騙されるのだ、若いお嬢さんでは無理もない。
しかもザリはロゼが弟子になったと近所にそれとなく流し、嫁候補を探してやっていると吹聴していたのだ。既にピストル弾での功績があったロゼは人気があった。
見合いを斡旋する変わりに商品を安くしてくれと交渉したのだ。ロゼとお近づきになれるならと無料にしていた商店もある。との報告もあった。
なるほどそういう使い方をしていたわけだ。
「ココ?クビ?」
「そうだよ。あんたが来る前に働いていた事務員だよ。あんたが事務兼弟子になるから辞めてくれって言われてココは泣いていたんだ。急に言われても困るって…」
「俺はただの弟子だ。事務と弟子を兼任するなんて一言もいってないし、給金も貰っていない」
2人は沈黙し、ザリを見る。ザリは固まって顔が青くなっている。
「いや、ち、違うんだ…」
なんとか言い訳を考えていたザリだったが、業者がなぜか強めに詰め寄りザリはその迫力に負け、とうとう白状した。
元々経営難だった所に間引きに参加していないロゼを見つけた。ロゼに弟子として雑用を押し付けてしまえば、事務員の給金が浮くのではと考えた。
以前の講習で黙って片付けをしてくれて便利な男だと思ったのだと。
それで間引きを引き合いに出し、他では苦労すると大げさに言ってロゼを焦らそうとしたのだ。焦ってはいなかったが、まんまと引っかかった形になった。
ロゼの件がうまくいったのでザリは事務員をクビにした。ようは事務員の給金をケチったのだ。そういえば、準備があるから来週から来てくれと言っていた。
なんの準備があるかと思っていたのだ。
そもそも去年、講習を受けるときなぜ、たくさんいる錬金術師の中でザリの工房にしたのか。それは人気がなかったからではないか。人が少なくあまり活気がなかったからだった。
あの時の講習人数は7名だ。人気のある講習は50名と多く、ギルドから部屋を借りて行う人もいた。しかし、人と深くかかわらないようにしていたロゼには人気がない方が都合はよかった。
だがなぜ人気がなかった?それは腕が悪いから他ならない。では今人気があるのはなぜだ?人気が出始めたのはロゼが出入りし始めての夏の後半からだ。
弟子の仕事だと言うので、薬草選びから切ったり煮たり煎じたり乾燥させたり調合をしていたのは、最近ではすべてロゼだった。わざわざ器に薬草を小分けにして机の上に並べていたりもした。後は仕上げに水魔法で配合すると言うのがザリだった。
軽く犯罪ではないか?
ようは最近のザリの人気はロゼのおかげだった。業者はこのことを商人ギルドに報告すると言って帰っていった。
ザリの顔は真っ青だ。
「ロゼ、その…すまなかった」
「…あんたは俺の心配をするフリをして自分の利益を計算していたんだな」
ふぅと、ロゼはため息を吐く。
「…このことは」
「レオンと相談する」
「いいのか…年齢のこと、お世話になった人たちを偽り騙してきたのだろう?ロゼこのことをその…レオンには自分から言い出したことにしてくれないか?
ロゼは事務員のことは知らなかったことにすればいい!それからきちんとココにもお詫びして保証金を納めるよ。これからはロゼにも事務の給金を払おう。
どうか許してくれないか。田舎に妻子を置いてきている。金が必要だったんだ。」
ザリは、なんとか許してもらおうと言ってはいけないことを言ってしまっている。
年齢のことをバラすぞ、と最初に言っている。後半の部分を先に言えばもう少し温情が出たかもしれないが己のことしか考えていないのかバレバレである。妻子も本当にいるのかどうか…。
「レオンと相談する」
ロゼは冷たく言い放した。
本当はザリの支離滅裂のよくわからない言い訳がおもしろくてもっと聞いていたかったが逆上してなにをするかわからない。さっさと帰ることにする。
がっくりと肩を落とすザリを見ながらロゼはどうしてもっとうまく俺を使わないのだろうかと思うのであった。
このまま普通に俺が弟子として来ていたら繁盛していただろう。俺が使えると分かったなら、事務員を雇い直すか呼び戻すかして薬草の調合だけに集中させて、ザリが水魔法の配合だけしていれば大儲けだったじゃないか。
事務員の給金なんてそんなに高くない。俺はただ働きな訳だし。しかも、俺は成人までこの街にいるのだし後2年は荒稼ぎが出来ていたのにバカなヤツ。
まっ自滅してくれて俺は助かった。
レオンにことの経緯を説明して調べてもらう。またおまえかと呆れているが、ロゼだって不本意である。
しばらくすると、ココという従業員がいたことやその日にクビになりこの件に関して黙認するように言われたことがわかった。なぜ、黙認することに従ったかというと公表すればおまえの評判が悪くなる、嫁の貰い手がなくなるぞと言われたらしい。
自分の落ち度でクビになったかのような気になったのだそうだ。
50代のおばさんでも騙されるのだ、若いお嬢さんでは無理もない。
しかもザリはロゼが弟子になったと近所にそれとなく流し、嫁候補を探してやっていると吹聴していたのだ。既にピストル弾での功績があったロゼは人気があった。
見合いを斡旋する変わりに商品を安くしてくれと交渉したのだ。ロゼとお近づきになれるならと無料にしていた商店もある。との報告もあった。
なるほどそういう使い方をしていたわけだ。
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