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第1章

裏切り

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 ザリの申し出を何度も断っていると、直接親から言ってくるようになった。
まず、風呂屋に一緒にいって裸の付き合いをしようとしてくる。

 もう…勘弁してくれ。

 もちろん断る。
しかし、腕を取って無理やり連れて行こうとするので水圧で投げ飛ばす。
その親とケンカになる。
街の兵士が仲裁に入る。
兵士にお見合いを進められる。
断る。
それが冬の間、何度か続いた。去年と同じだ。

 いい加減にしろと兵士に言われる。俺のセリフだと言う。お見合いは誰ともしないと宣言する。これも去年と同じ。

 見合いの件で全然集中できない。ザリの世話で忙しいし、自身の練習がまったく出来ない。弟子なので給金がない。弟子になる前は少し給金をもらっていたが弟子に昇格してからは給金が出なくなった。それが普通なのだそうだ。
 じゃあどうやって生活するか、師匠が面倒を見るのだそうだ。見てもらってないのだが、今だにギルドのアパートから通っている。

 なんかイライラしてきた。でも中級ポーションの資格をザリに貰わなければ王都の錬金アカデミーには入れない。いや、入らなくてもいいのだが、入ればと進めてきたのはザリだったか、まさか雑用をしてもらう為にあんなこと言ったのではないだろうな。疑心暗鬼になる。直接聞いた方が早い。

「ザリ、この雑用も弟子の仕事なのか?」
 冬も中盤になる頃、聞いてみた。雑用とは注文・発注などの事務作業のことだ。
ザリは一瞬ピクリと顔が強張り、ロゼの方を向き直りにっこり笑う。

「いや、違う…。実は事務仕事は別の子を雇っていたんだがやめた直後にロゼが入って来てな。随分と手慣れていたからそのまま仕事をしてもらっていた。すまん、新しい子が来るまでお願いしたい」

 悪気のなさそうな顔で言われる。手慣れているのは当然である。ロゼの前世の仕事は経理事務員だ。

「給金を請求する。今までの分もだ。これからはしない。自分でやれ。」 
ロゼは溜まっている事務仕事を放り投げた。
「ロゼ、すまいない。給金は払う。も、もう少し事務兼弟子を続けてくれないか?」
ザリは慌てて金を出そうとする。
「金はきちんと計算をして請求する。そして金が払われるまで事務の仕事はしない」

 ザリには裏切られた。良かれと思ってやっていたら利用されていた。今までは受付や注文・発注、その他すべてを作業を中断させロゼが対応していた。それも弟子の仕事だと思っていたからだ。弟子の仕事ではないのならもうしない。
 しかし、今までロゼが対応してきていたのに急にザリが対応してしまうと変な噂が流れかねない。業者が来るたびにザリの行いを説明するとしよう。

「なのでこれからは新しい事務員が来るまでザリが対応する。俺を呼ばないでくれ」

 そう業者に説明した。これから事務員が来るまでザリが自分で対応するのだ。
冬は新しい人材の確保がむずかしいだろうが、俺の知ったことではない。
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