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第3章
バルの心中
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バルは相変わらずリリスの家にも行けず、忙しい日々を送っている。
マキシミリアン国王が退位すれば、俺は陛下の側近ではなくなる。実の弟のセリア様が公爵となり、ソロモン王をお支えするだろう。自分はまた一般人に戻るのもいいかもしれない。
なにをするのかは決めてはないが、少しは鍛えないと…リリスにコテンパンにやられてしまった。自分の貧弱さはわかっていたが女の子にも敵わないとは…キース殿がリリスは自分似だからと嬉しそうに言っていたがそれでも情けない。
リリスと陛下が初めてお茶会をした日から、夕食に行けていない。王都に来る途中の宿でリリスの流した涙を見ていたのに、それを忘れていた自分がなんとも情けない。リリスは辛い寂しい思いをずっとしていたのに、それを許せとリリスに言ってしまった。リリスの味方をしたいが陛下をないがしろにも出来ない。そんな事を考えていたら、なんとなく行かない日が続いてしまった。
どっちつかずの自分がとても情けない。あの暖かな居心地のいい場所にこんな情けない顔など見せられない。
たまたまリリスの同級生になったセリア様は、背が高くイケメンで下の者にも気さくに話をされ、横柄な態度を取られない王子として皆から慕われている。リリスの同級生とご一緒の夕食会にはリリスをエスコートし、とても似合いであった。
セリア様の同級生が陛下のプライベートのお住まいで食事をするなど前代未聞であり許可を取るのにも苦労した。陛下が良しとしても危険がないと証明されない者は他の貴族から却下される。まず3人の近辺調査からしなければならなかった。リリスは兎も角ほかの2人もなんの問題のない人物でよかった。貧しい出というだけで却下になったりもする。そうなるとまたリリスが暴れ出すかもと思っていた。
陛下はずっとセリア様の進学を反対されていた。王族が他の国に留学される事例はあるがいち職人のアカデミーに入るなど王子としてどうなのかという議論があった。しかしなぜか急にお許しになった。それはたぶん、リリスがいたからに他ならない。自分から接近しようとしたのだ。どんな人物か興味があったのだろう。まぁ世界樹を伐った者に興味があるのは当たり前の事だと理解はしている。
しかし、その後も話をしたいと持ち掛けられ、リリスを城に呼ぶよう何度も打診があった。リリスは謁見など堅苦しい事はやりたがらない。だからあのようなお茶会にしたのだ…しかしなぜそこまでリリスに興味を示すのか…はあ
陛下がリリスにファミリーネームであるリアンと呼ぶように言われたと聞いたあの日、なぜだか不快に思った。そして平気な顔をしているリリスにもイラだった。俺はなにをイライラしているのだ。
「陛下…失礼ながらプライベートの質問になりますがよろしいでしょうか?」
「なんだね」
「リリス嬢の件です。陛下はリリス嬢に陛下のファミリーネームで呼ぶようにと言われたようですが…」
「リアンと呼ぶようにと?」
「はい、事実ですか?その意図は?」
「別にそう呼んでほしいからそう言ったのだが…王ともなると面倒だね…」
「ファミリーネームをというのは…所謂婚姻を示します。これからそう動くことになるのでしょうか?わたくしは公爵として」
腹がムカムカする。
「そうだね、私はあの娘と結婚したいのかもしれない。王妃が死んで他の姫と婚姻させようと色々動かされたがどうにも食指が動かなかった。だがあの娘はなんだか若い頃の王妃に似ている。あの娘となら第2の人生を楽しくやっていけそうだ」
陛下はバルを見ながらにこにこと答える。機嫌はすこぶる良さそうだ。
あのリリスと婚姻をしたい…
「そうでしょうか?リリスは言いたいことをはっきりと言いますし、人を顎で使いますよ。傍若無人ですし陛下も振り回されますよ。王妃様はそんな人でしたか?」
「フフそうか…私は実は小心者なのだ。王妃はそんな私をグイグイと引っ張てくれる勇ましい人だったんだよ。まさかあんなに早く逝くなんて思わなかったがね…」
「バル、リリス嬢との婚姻は本人次第だよ。私の第2の人生を共に過ごしてくれるのであれば、というだけだ」
「…なぜリリスなのです?美しい女性になりましたが、美しい姫は今までもたくさんいらっしゃったでしょ?あんな気の強い女性でなくても…」
「バルはお上品で清楚な、なんでも言う事を聞く女性が好きなんだね」
「え?いえそういう…」
「私は自分の意見を真っ直ぐに言ってくれる人が好ましいよ」
「あれは真っ直ぐというのか…八つ当たりというか…」
「しかしあの癒の精霊を大きくしていたのはどうやるのだ?私の癒の精霊は1体だからあんなに大きくはならない。何体か集合していたような…」
「なんです?」
「いや、なんでもないよ」
陛下は特に婚姻を無理やり進める意向ではないことがわかった。バルはふっと安堵する。
ひと安心だ。ん?ひと安心とはなんだ?リリスも年頃のお嬢さんだ。もし陛下が本気で思ってくださるのであれば承諾するかもしれない。偉大なお方だし…
「バルには癒が効いているな…」
マキシミリアン国王が退位すれば、俺は陛下の側近ではなくなる。実の弟のセリア様が公爵となり、ソロモン王をお支えするだろう。自分はまた一般人に戻るのもいいかもしれない。
なにをするのかは決めてはないが、少しは鍛えないと…リリスにコテンパンにやられてしまった。自分の貧弱さはわかっていたが女の子にも敵わないとは…キース殿がリリスは自分似だからと嬉しそうに言っていたがそれでも情けない。
リリスと陛下が初めてお茶会をした日から、夕食に行けていない。王都に来る途中の宿でリリスの流した涙を見ていたのに、それを忘れていた自分がなんとも情けない。リリスは辛い寂しい思いをずっとしていたのに、それを許せとリリスに言ってしまった。リリスの味方をしたいが陛下をないがしろにも出来ない。そんな事を考えていたら、なんとなく行かない日が続いてしまった。
どっちつかずの自分がとても情けない。あの暖かな居心地のいい場所にこんな情けない顔など見せられない。
たまたまリリスの同級生になったセリア様は、背が高くイケメンで下の者にも気さくに話をされ、横柄な態度を取られない王子として皆から慕われている。リリスの同級生とご一緒の夕食会にはリリスをエスコートし、とても似合いであった。
セリア様の同級生が陛下のプライベートのお住まいで食事をするなど前代未聞であり許可を取るのにも苦労した。陛下が良しとしても危険がないと証明されない者は他の貴族から却下される。まず3人の近辺調査からしなければならなかった。リリスは兎も角ほかの2人もなんの問題のない人物でよかった。貧しい出というだけで却下になったりもする。そうなるとまたリリスが暴れ出すかもと思っていた。
陛下はずっとセリア様の進学を反対されていた。王族が他の国に留学される事例はあるがいち職人のアカデミーに入るなど王子としてどうなのかという議論があった。しかしなぜか急にお許しになった。それはたぶん、リリスがいたからに他ならない。自分から接近しようとしたのだ。どんな人物か興味があったのだろう。まぁ世界樹を伐った者に興味があるのは当たり前の事だと理解はしている。
しかし、その後も話をしたいと持ち掛けられ、リリスを城に呼ぶよう何度も打診があった。リリスは謁見など堅苦しい事はやりたがらない。だからあのようなお茶会にしたのだ…しかしなぜそこまでリリスに興味を示すのか…はあ
陛下がリリスにファミリーネームであるリアンと呼ぶように言われたと聞いたあの日、なぜだか不快に思った。そして平気な顔をしているリリスにもイラだった。俺はなにをイライラしているのだ。
「陛下…失礼ながらプライベートの質問になりますがよろしいでしょうか?」
「なんだね」
「リリス嬢の件です。陛下はリリス嬢に陛下のファミリーネームで呼ぶようにと言われたようですが…」
「リアンと呼ぶようにと?」
「はい、事実ですか?その意図は?」
「別にそう呼んでほしいからそう言ったのだが…王ともなると面倒だね…」
「ファミリーネームをというのは…所謂婚姻を示します。これからそう動くことになるのでしょうか?わたくしは公爵として」
腹がムカムカする。
「そうだね、私はあの娘と結婚したいのかもしれない。王妃が死んで他の姫と婚姻させようと色々動かされたがどうにも食指が動かなかった。だがあの娘はなんだか若い頃の王妃に似ている。あの娘となら第2の人生を楽しくやっていけそうだ」
陛下はバルを見ながらにこにこと答える。機嫌はすこぶる良さそうだ。
あのリリスと婚姻をしたい…
「そうでしょうか?リリスは言いたいことをはっきりと言いますし、人を顎で使いますよ。傍若無人ですし陛下も振り回されますよ。王妃様はそんな人でしたか?」
「フフそうか…私は実は小心者なのだ。王妃はそんな私をグイグイと引っ張てくれる勇ましい人だったんだよ。まさかあんなに早く逝くなんて思わなかったがね…」
「バル、リリス嬢との婚姻は本人次第だよ。私の第2の人生を共に過ごしてくれるのであれば、というだけだ」
「…なぜリリスなのです?美しい女性になりましたが、美しい姫は今までもたくさんいらっしゃったでしょ?あんな気の強い女性でなくても…」
「バルはお上品で清楚な、なんでも言う事を聞く女性が好きなんだね」
「え?いえそういう…」
「私は自分の意見を真っ直ぐに言ってくれる人が好ましいよ」
「あれは真っ直ぐというのか…八つ当たりというか…」
「しかしあの癒の精霊を大きくしていたのはどうやるのだ?私の癒の精霊は1体だからあんなに大きくはならない。何体か集合していたような…」
「なんです?」
「いや、なんでもないよ」
陛下は特に婚姻を無理やり進める意向ではないことがわかった。バルはふっと安堵する。
ひと安心だ。ん?ひと安心とはなんだ?リリスも年頃のお嬢さんだ。もし陛下が本気で思ってくださるのであれば承諾するかもしれない。偉大なお方だし…
「バルには癒が効いているな…」
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