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第3章

披露宴

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 寒さが本格的になり始め王都でも雪が積もり出した頃、キシとルキが結婚をした。リリスは深い青のドレスに身を包み黒のモコモコのショールで身体を温めながらルキの新居へ行く。リエとキース、キキも一緒だ。転移して行ってもいいのだが雰囲気を出して馬車で向かう。石畳の道を馬の蹄の音がなんとも心地いい。

 ルキは王都で店を構え成功していた。カヤの存在が大きいのだがカヤは表に出るのは好んでおらず、すべてルキに任せていた。ルキは目立つ美しい容姿のため余計に話題になって店は大繁盛だった。新作のプレート皿を「リリス」でも頼み、お店でも使用している。

 ルキの新居は一般住宅街と高級住宅地の中間にあり、まさしく中間層が暮らすエリアにあった。リエの邸には負けるが立派な邸には違いなかった。馬車でルキの玄関前に付くと邸内から聞こえる話し声や音楽などがこの寒い冬になんとも暖かで楽しそうな宴になりそうな予感がしてリリスはワクワクした。

「リリス、いらっしゃい。待っていたわ」
 ルキから満面の笑みとハグが扉を開けられた途端に訪れた。ルキは大人っぽく赤い髪をアップにし、それにも負けない深紅のドレスを着こなしていた。この国の花嫁は赤を基本にドレスを選ぶらしい。ルキはリリス一行を招き入れると楽しそうに、懐かしい馴染みの顔に合わせてくれた。

「リリス、ふふ、まずは私のだんな様を紹介するわね、キシよ。キシ!友人のリリスよ」
「やあ、はじめまして。リリス嬢。王都騎士団第2部隊のキシといいます。名前がややこしくて悪いね」
 と、ウィンクをした。いつもはじめましての人には言うフレーズなのだろうか。
「リリスといいます。よろしく」
 にっこりと笑顔をキシに向ける。
「ルキにこんなキレイなお嬢さんの友人がいたなんて初耳だよ」
 キシはそういいながら、ルキの頬にキスをする。

 あら~ラブラブなのね

 父と母、キキにも紹介をし、何気ない会話が続くが全然キシは奥さんに夢中で昔の友人には気が付かない。それはそれで腹が立つ。
「おい、キシ!全然気が付かないじゃないか!もう忘れたのか。恩人とか言ってたくせに!」
 キシは上品そうでキレイなお嬢さんから急に罵声が聞こえて来て耳を疑った。キシは先に王都に向っていたのでロゼが女性だったことも知らない。急に現れた美女がボロのアパートで共同生活していたなど普通思わない。

「え?」と固まるキシに対して、大きく下品な笑い声が聞こえた。
「ガハハハッそう言ってやるなよ。ロゼ、いやリリス嬢か…しかし、女はこわいね~数年でここまで化けるかね…キシが分からないのも仕方ないぞ」
 ルキの父親のレオンだ。
「確かに、見事に化けてキレイになったなロゼは、いやリリス嬢は。口調以外はな!」ははと笑っている。
 後ろから、ひょっこと現れたのは精算係のムカイだ。

「おっ久しぶりだな、レオン、ムカイ。元気そうだな。横にいる人は奥さん?キレイな人だね」
 レオンとムカイの顔を見た途端、昔に戻るリリス
「ああ、久しぶりだ。家内のアオだ。ルキからは便りで聞いてはいたが元気そうで安心した」
「アオよ。よろしくね。私もずっと会いたかったのよ!」
「父キースと母リエだよ」
 アオはルキと似ているが髪は真っ青だ。ここまで青い人はめずらしい、名前はアオ。ぴったりだね
 とても気さくな人でリエと話しが合いそうだ。

「ムカイも久しぶり。エトたちは元気?」
「元気だよ。エトたちも王都に来たがっていたな」
 今イージュレンでは薬草ブームらしい。森でエトの指導の元、緑の精霊付の人たちで薬草を育てている。冬の講習化され、他の街や王都からも見学や習いに来ているらしいのだ。忙しくて来れなかったようだ。

「おっなんだよ。みんなして集まって俺にも紹介してくれよ」
 後から来たのは、ずいぶんと身体も大きくなり、たくましくなったセドがいた。
「おお、セド久しぶりだな。第1部隊に所属してるんだろ?花形部隊じゃないか。すごいな」
「え?」
 美女を紹介してもらおうと思っていたのに先手を打たれた。
「ロ、リリス。セドもわからないよ」
 ムカイは困った顔で言う。
「セド、ロゼだよ。久しぶりだな」
「ちょっと待て、ロゼって…」固まるセド
「おい、キシおまえか?!」なぜかキシに当たりだす。
「俺が知っていたらこんな顔しているはずないだろう。もっと笑ってたよ」
 キシがしかけたイタズラだと思っているのか女装姿もいいなどと言っている。
誰が女装だ!などと言いながらキシとルキの披露宴パーティーは続く。

「そっか…本当に女なんだな…。そうか!なら仕方ないな。俺が嫁に貰ってやってもいいぞ!どうせ相手がいないのだろう!」
 やっと女だと認めたと思ったらセドらしい言葉が出てきた。今まで楽しく話をしていたのに急にキースがずんとセドの前に現れた。

「俺は第5部隊隊長キースだ。そしてリリスの父親だが…先ほどの言葉は本気か」
 セドは第1部隊と言っても平の平だ。末端の平が隊長などと話せるはずもないし、キースはスマートだが長身だ。セドを見下ろして睨みつけている。セドは大慌てで「申し訳ありません!」と敬礼している。

「あははは、キースの愛娘を嫁に貰ってやるなどと大口を叩けるなんて度胸があるな。さすがは第1部隊だ」
 褒めているのではなく嫌味を言っているようだ。現れたのは濃い緑の髪の色に赤い瞳をしているなんとも派手な顔立ちをしてた男だ。
「第2部隊隊長のカオス・オリドーだ。キースとは同じ士爵の位を頂いている」
 キシの上司のようだ。なぜ、私に挨拶をするのだ。
「やあ、ひさしぶりだな。ロゼ。ははは、イージュレンの時には考えられないくらいの美女になったな」
「今はリリスだ」
「そうか、よろしくな、リリス」
 ジンだ。オレンジの長い髪を振り翳し太陽のような明るいオーラを放ち、数年前よりもっといい男になっていた。
「なんだ?ジンは驚かないな」
「まあ、キレイになったのは驚いているよ。でも女の子だったのは知っていたし」
「知っていたのですか?」キシだ。
「ああ、精霊たちが『女の子、でも秘密』って言ってたし。だから言わなかった」
「立派な騎士になれると言ってなかったか?」
 ジンたちが王都に戻る日に言われた言葉だ。
「女でも騎士になれるぞ」
 なるほど。騎士になるのも悪くない…などと思いながらひさしぶりに昔の仲間たちと話が弾む。気のいい仲間たちでよかった。誘拐の件もリリスのことだと薄々感づいてはいるようだが、セドも含め皆なにも言わず楽しんでいる。
 キースやリエもイージュレンでのリリスの話を聞きたがった。

 楽しくパーティーは終わり、皆とまた会うことを約束して帰宅した。
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