魔法使いが死んだ夜

ねこしゃけ日和

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 夕食のあと、私はシャロンに部屋へと呼ばれた。シャロンがシャワーを浴びている間、私はベッドに腰を掛けて自問自答していた。

 私は一体なにをしているんだろう? そしてなにをさせられるんだろう?

 相手はあんな少女だ。いや、外見はそうでも中身は違う。ならやはりそういうことを求められているのか? 私はそんなことのために軍人になったわけじゃない。

 とかなんとか思っているうちにシャロンは体を拭き、長い髪をタオルで巻くとダボダボのバスローブ姿でやってきた。

 そしてベッドにうつ伏せになると当たり前のように言った。

「マッサージをお願い。それが済んだら戻っていいわ」

 私は口をポカンと開けた。そして溜息をついてバスローブの上からシャロンの細い足や腰を揉んだ。

 シャンパンを飲んでマッサージ。これじゃあまるっきりおばさ――

「無駄なことを考えないで心を込めて揉みなさい。この体は疲れるのよ。ああ。そう。そこよ。そこを重点的にお願い」

「……分かりました」

 本当に大丈夫なのか? そもそも子供の体にマッサージが必要なのか?

 不安は益々大きくなっていく。

 そうこうしているうちにシャロンは寝息を立て始めた。どうやら満足してくれたようだ。

 寝ている時だけは愛くるしい少女に見える。ずっとこのままでいてくれればいいのに。

 私はそう思いながらシャロンを起こさないようにゆっくりと部屋をあとにした。

 明日が来るのが怖かった。
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