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〇66 顔がすべて
しおりを挟む私は自分の部屋で鏡を見つめる。
そこにうつったものを見て、大きなため息が出た。
鏡は嫌いだ。
自分の嫌いなものを、隠さずうつしだしてくるから。
大して可愛くもない自分の顔を見つめる。
どうしてこんな顔にうまれついてしまったのだろう。
どうして自分の体は好きに選べないのだろう。
それは親だってそうだ。
私の親も、正直あんまり可愛くない。
自分の顔にコンプレックスを持っていて、人前にあまりでたがらない。
きっと遺伝してしまったんだ。
自分の顔が、可愛くて美人だったら、どんなにいいか。
そうしたら、悩みごとなんて抱かずにすんだのに。
勤めている会社で、顔をからかわれたり、笑われたりする事なんてなかったのに。
そう思った私は、がっかりした気持ちで、鏡の前から離れた。
あんな事を考えていたからなのか、私はよくあるなりゆきで異世界転生をして、美人へと生まれ変わった。
そこにいたる経緯は色々あったけれど、関係ないし、特に面白くないし、美人でもなかった頃の私がただ狼狽していただけなので省く。
第二の人生で可愛くなった私は、様々な人にモテモテだ。
「○○ちゃん、一緒に遊ぼう」
「だめだ! ○○ちゃんは、俺と遊ぶんだ」
「いーや、俺だよね。○○ちゃん」
様々なというか、主に男性にだけど。
私は幸せだった。
前々から思っていたけどやっぱり顔が全てなんだと思った。
顔さえよければ、みんな親切にしてくれるのだ。
そんな私は、以前の自分のような少女を見かけた時、残酷な一言を言っていた。
周りの子にイジメられて、石をなげられてふさぎ込む少女。
普通の正しい人間なら、その肩を抱いてなぐさめる所だけど。
「不細工な顔でうまれたんだから、そうなるのは当然よ。恨むなら運命を恨む事ね」
それはどうしようもならない事で、ずっとそういう環境に置かれ続けるものだと、その少女に向けて言ったのだった。
すると、その少女は私に対して怒った。
「そんな事分かってるわよ! 言わなくてもいいでしょ!」
なきながら走り去っていく少女。
その涙にぬれた顔は、以前の私にそっくりだった。
「分かるわよ。分かるから。私がそうだったから、そう言ったんでしょ。早く諦めなさいよ。大人になっても希望なんて実りはしないんだから」
私はそれ以上、彼女を助けない。
だって、不細工だった私に誰も手を差し伸べてくれなかったから。
私は遠くなる少女へ背中を向けて、その場から去っていった。
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