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初めてのダンジョン
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勇者と僧侶の2人は秘境のダンジョンを訪れていた。旅に出てまだ日も浅く、パーティのメンバーも揃いきっていなかった為、比較的初心者でも攻略しやすいダンジョンに来ていた。
……はずだった。
勇者「ここ……で、合っているか?」
僧侶「多分……。」
2人の前には子供が入れる程度の小さな洞穴とその両脇に朽ちた石製の柱が立っていた。柱の上には何かのオブジェクトが祀られていたであろうが、今は酷く損傷していて何か分からない。
僧侶が腰を屈め発光魔法を使いながら覗いてみると5m程先が空洞になり、中央に白い塗料で書かれた何かが見えた。
僧侶「あそこに魔法陣のようなものがある。」
勇者「本当か?行ってみよう。」
僧侶「でも何が起きるか分からないから、勇者はここで待機してて。安全そうなら呼ぶから。」
勇者「分かった。」
新米冒険者でも簡単に攻略出来るとギルドから紹介されたダンジョンだったが、念には念を入れてトラップの恐れがないか二手に別れることにした。
僧侶が中腰で人1人やっと通れる洞穴を進むと、すぐに大きな空洞に繋がった。空洞の入口で杖先の光る発光魔法をかざし中の様子を確かめてみると高さ2m、奥行き、横幅10m程の空間だった。壁や床、天井は何の変哲もない洞窟。しかし、その空間の中央には所々かすれた魔法陣が合った。それなりに魔法に詳しい僧侶でさえ、その魔法陣がどんな効力があるのか分からなかった。
僧侶「ギルドで聞いた情報と違う。これは一旦帰った方が良いかもしれない。」
難しい顔をしてそう呟くと、僧侶は勇者の居る出口へと向かった。その時、音もなく姿の見えない何かが僧侶を捕らえた。
僧侶「うわっ!」
勇者「僧侶?!」
勇者が安否を尋ねた頃には、僧侶の身体は水色に発光する魔法陣に飲み込まれかけていた。
僧侶「来ちゃダメだ!罠だ!」
そう叫ぶのと、ほぼ同時に僧侶は怪しげな魔法陣の中に飲み込まれてしまった。
あっという間の出来事に、洞穴の入口で待機していた勇者は混乱した。だが、すぐに冷静になり未知のダンジョンに単騎で挑むよりも、一旦ギルドに戻り応援を要請することを選択した。
一刻も早く僧侶を助けなければ!そう思い、その場を離れようとしたその時。
???「逃げるの?」
不意に下卑た嘲笑を含む声が聴こえ、その声の主を特定しようと後ろを振り返ると、そこには桃色の20cm程の球体に単眼の魔物が浮遊していた。羽もないのに飛んでいる事から魔法の類で浮いている事は確かだろう。
魔物「早く助けないとぉ~。あの人死んじゃうよ?」
声がするまで気配を感じられなかった。シンプルな見た目に反して強者であろうソレから、どう逃げるか考えていた勇者だったが、魔物の発した言葉に釣られてしまった。
勇者「お前は何者だ。死ぬとはどういう事だ。」
本当は魔物の言葉なんかに耳を傾けては行けない。頭では分かっていたが、小さい頃から幼なじみとして一緒に過ごして来た僧侶の安否が気になり、つい言葉を返してしまう。
魔物「このダンジョンは、入ったら1時間以内に脱出しないとぉ~、……死んじゃう呪いがかけられてるのぉ~。し・か・もぉ~2人で同時に解かなきゃイケナイ仕掛けが有るから、1人では絶対CLEAR出来なぁ~い。……の。」
煽るような口調で話す魔物を冷静に見据えながら勇者は必死に考えていた。もし、この魔物が言っていることが本当なら僧侶を助けるには、ギルドへ応援を要請している時間は無い。だが、もし嘘なら俺まで入ってしまえば2人とも未知のダンジョンに挑む事になる。それならギルドの応援を呼んだ方が確実に僧侶を助けられるだろう……。一体どうすれば……。どうする……?どうしたら……。
魔物「ねぇねぇ。どうするのぉ?進むのぉ?逃げるのぉ?仲間を見捨ててぇ?君一人だけぇ??助かっちゃうの~?」
思考に捕らわれていた勇者がスっと顔を上げる。そこには覚悟を決めた強い瞳が輝いていた。勇者は最悪の自体を考えた。魔物の言っている事が本当なら助ける一択。それしかない。例え嘘でも俺達2人なら……何とか脱出出来るだろう。いや、何がなんでも脱出してみせる。例え俺がダメになっても僧侶だけは……。
頑なな決意を胸にした勇者は洞穴の中へ入って行った。
……はずだった。
勇者「ここ……で、合っているか?」
僧侶「多分……。」
2人の前には子供が入れる程度の小さな洞穴とその両脇に朽ちた石製の柱が立っていた。柱の上には何かのオブジェクトが祀られていたであろうが、今は酷く損傷していて何か分からない。
僧侶が腰を屈め発光魔法を使いながら覗いてみると5m程先が空洞になり、中央に白い塗料で書かれた何かが見えた。
僧侶「あそこに魔法陣のようなものがある。」
勇者「本当か?行ってみよう。」
僧侶「でも何が起きるか分からないから、勇者はここで待機してて。安全そうなら呼ぶから。」
勇者「分かった。」
新米冒険者でも簡単に攻略出来るとギルドから紹介されたダンジョンだったが、念には念を入れてトラップの恐れがないか二手に別れることにした。
僧侶が中腰で人1人やっと通れる洞穴を進むと、すぐに大きな空洞に繋がった。空洞の入口で杖先の光る発光魔法をかざし中の様子を確かめてみると高さ2m、奥行き、横幅10m程の空間だった。壁や床、天井は何の変哲もない洞窟。しかし、その空間の中央には所々かすれた魔法陣が合った。それなりに魔法に詳しい僧侶でさえ、その魔法陣がどんな効力があるのか分からなかった。
僧侶「ギルドで聞いた情報と違う。これは一旦帰った方が良いかもしれない。」
難しい顔をしてそう呟くと、僧侶は勇者の居る出口へと向かった。その時、音もなく姿の見えない何かが僧侶を捕らえた。
僧侶「うわっ!」
勇者「僧侶?!」
勇者が安否を尋ねた頃には、僧侶の身体は水色に発光する魔法陣に飲み込まれかけていた。
僧侶「来ちゃダメだ!罠だ!」
そう叫ぶのと、ほぼ同時に僧侶は怪しげな魔法陣の中に飲み込まれてしまった。
あっという間の出来事に、洞穴の入口で待機していた勇者は混乱した。だが、すぐに冷静になり未知のダンジョンに単騎で挑むよりも、一旦ギルドに戻り応援を要請することを選択した。
一刻も早く僧侶を助けなければ!そう思い、その場を離れようとしたその時。
???「逃げるの?」
不意に下卑た嘲笑を含む声が聴こえ、その声の主を特定しようと後ろを振り返ると、そこには桃色の20cm程の球体に単眼の魔物が浮遊していた。羽もないのに飛んでいる事から魔法の類で浮いている事は確かだろう。
魔物「早く助けないとぉ~。あの人死んじゃうよ?」
声がするまで気配を感じられなかった。シンプルな見た目に反して強者であろうソレから、どう逃げるか考えていた勇者だったが、魔物の発した言葉に釣られてしまった。
勇者「お前は何者だ。死ぬとはどういう事だ。」
本当は魔物の言葉なんかに耳を傾けては行けない。頭では分かっていたが、小さい頃から幼なじみとして一緒に過ごして来た僧侶の安否が気になり、つい言葉を返してしまう。
魔物「このダンジョンは、入ったら1時間以内に脱出しないとぉ~、……死んじゃう呪いがかけられてるのぉ~。し・か・もぉ~2人で同時に解かなきゃイケナイ仕掛けが有るから、1人では絶対CLEAR出来なぁ~い。……の。」
煽るような口調で話す魔物を冷静に見据えながら勇者は必死に考えていた。もし、この魔物が言っていることが本当なら僧侶を助けるには、ギルドへ応援を要請している時間は無い。だが、もし嘘なら俺まで入ってしまえば2人とも未知のダンジョンに挑む事になる。それならギルドの応援を呼んだ方が確実に僧侶を助けられるだろう……。一体どうすれば……。どうする……?どうしたら……。
魔物「ねぇねぇ。どうするのぉ?進むのぉ?逃げるのぉ?仲間を見捨ててぇ?君一人だけぇ??助かっちゃうの~?」
思考に捕らわれていた勇者がスっと顔を上げる。そこには覚悟を決めた強い瞳が輝いていた。勇者は最悪の自体を考えた。魔物の言っている事が本当なら助ける一択。それしかない。例え嘘でも俺達2人なら……何とか脱出出来るだろう。いや、何がなんでも脱出してみせる。例え俺がダメになっても僧侶だけは……。
頑なな決意を胸にした勇者は洞穴の中へ入って行った。
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