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本音2

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「気まぐれでアイツに付き合わなきゃ良かったよ、まったく」
「ひっでぇヤツだな、若王子って」
「どこが。佐倉が望む王子様ってのを演じてやってきたんだから、むしろ俺ってかなり優しい部類だろ」
「面倒だと思うなら素をみせりゃいいじゃん。佐倉のやつ、卒倒するんじゃね?」
「そりゃ俺だってそうしたいよ。でもここまで演じてやって、俺になんの得がないのもムカつくじゃん」
 これは夢だろうか。慶は思わず自分の頬をつねりそうになる。間違いなく若王子なのに、そこにいるのは別の男だった。
 慶の中で理想の王子様が音を立てて崩れていく。王子様の若王子が偽物で、今目にしているこちらが本物なのだ。
「そもそもさー、なんで王子様なんて演じてやってたんだよ。女の子相手ならまだしも、男にそんなことやっても意味ないじゃん」
 あー、と若王子の歯切れが悪くなる。少し間を置いた後、若王子は再び口を開いた。
「一回男も試してみようかと思って」
「は、はぁ!? お前マジで言ってんの? ってか若王子ってそっち……?」
「違うって。ほら、俺ってモテるからさー、正直女の子相手も飽きてきちゃって。なんていうかゲテモノ喰い? 経験してみるのもありじゃん?」
 ゲテモノ、という単語が慶に重くのしかかる。慶は力なくずるずるとその場にしゃがみ込んだ。
「フェラとか手コキとか女の子にやってもらうよりイイって聞くし。勃つか分かんねぇけどバック試すのも良いかなーって」
「お前……マジで節操ないなー。ってかお前が抱かれる選択肢はないんだ」
「は? 当たり前じゃん。男に抱かれるとかキモいって。バックは女の子とも出来るけど、正直一から慣らしていくのが面倒じゃん。それだったら佐倉のほうが慣れてそうだし、男だったら多少手荒にしても壊れないっしょ」
「えげつないヤツだな、若王子」
「なんで? 優しいじゃん俺って。嘘でも王子様演じてやって、抱いてやってもいいなって思ってんだから。まあ男でもイケるってなったら、もうちょい小柄で可愛い感じのやつに乗り換えるけどな。佐倉はお試し……オナホ変わりってことで」
「マジでエグいってお前」
 そう言いながらも若王子とその友人は、嘲笑うような声を上げていた。
 慶はその笑い声を聞いているだけで、体温がスッと下がっていくのを感じる。
 そうか、そんなふうに思われていたのか。衝撃を受けすぎたのか、涙すら出ない。
 正直、振られることには慣れている。男同士の恋愛だ。うまくいくことの方が稀だった。ましてや若王子はヘテロなのだ。優しく接してくれていたが、最後にはやはり受け入れてもらえないだろいなと、どこかで覚悟をしていた。
「それでも流石にオナホ呼ばわりはキツいって……」
 自分の好意を、そんなふうに思われていたことにショックを受けた。若王子がどうやって自分をベッドへ誘うつもりだったのか知らないが、きっと慶は舞い上がっただろう。それを若王子はどんな感情で接しようとしたのだろうか。
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