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本音3

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 辛い。あんまりだと思った。
 たとえ恋愛対象が同性だったとしても、慶も普通の人間と変わりはない。酷い言葉を投げかけられれば傷付くし、好きな人と幸せになりたいという願いもある。それを影で侮辱する行為に、胸が締め付けられた。
 そして慶はようやく兵藤が頑なに何も言わなかった理由を理解した。きっと兵藤は、本当の若王子を慶より先に知ったのだ。兵藤は若王子の変貌ぶりに、驚いたに違いない。慶は兵藤にいつも若王子は王子様のようだと言っていたのだから。
 そしてきっと、今のように慶の気持ちを嘲笑うようなことをを聞いてしまったのだろう。だから若王子に詰め寄った。そして慶を傷付けまいと、慶がいくら兵藤に理由を話せと言っても、決してそのことを口にしなかったのだ。若王子に恋する慶を、悲しませないように。
「ほんっとに兵藤って生真面目。変な気を回してんじゃねぇよ……」
 不器用な兵藤が必死で口を閉ざした理由に、慶は目に熱いものが込み上げた。鼻の奥がツンと痛み、慶は必死で感情を抑える。
「俺ってマジでみる目がないよな」
 この場にいない兵藤に語りかけるように、慶はそう言った。
 上辺だけの優しさと、爽やかな容姿に惹かれて若王子を好きになった。本当の若王子がどんな人間か、知ろうともせず、勝手に運命の王子様だと信じて好きなんだと意地になっていた。
 本当に最初から優しかったのは兵藤で、同性愛者だと知ってもそれを軽々と受け入れ、隣にいてくれたのは若王子ではなく兵藤だ。
 ただ一度きりの、事故のような性行為で責任をとって慶を幸せにすると言ってくれた兵藤。大切な存在だからいざという時は守ると言ってくれたのも、兵藤清正という男だ。
 兵藤はいつも慶を大切にしてくれる。王子様ではなく殿様みたいな容姿と性格だが、そんな些細なことは兵藤の誠実さの前では霞んでしまう。
 もう認める、と慶は思った。兵藤の頬にキスをしたとき、本当は頬ではなく唇を重ねたいと思ってしまった。若王子ではなく兵藤を信じると口にしたときには、すでにそうだったのだろう。
 自分は兵藤清正という男に、恋をしている。
 見てくれだけの一目惚れなんかよりも、もっともっと深い所で、慶は兵藤を好きになってしまっていた。
 兵藤が側にいないだけで、隣が少し寒い。会えないだけで苛立ち、寂しくて仕方がないのは恋のせいだ。兵藤に会いたい。声が聞きたくて堪らなかった。
「そういえばあの堅物、なんて言ったっけ」
 堅物の単語に、慶は反応する。若王子たちの会話もまだ終わっていなかったらしい。
「突っかかってきたやつ? なんだっけなー、戦国武将みたいな名前のやつ」
 言い得て妙だな、と慶は感心する。若王子は、少し考えたあと、兵藤だと口にした。
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