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その17 花嫁の正体
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◇◇◇
「なるほど。アスタリアの姫君か」
「姫様の名前はアイリス。ドラード王の花嫁になるはずの姫君が海で行方不明になったって、アスタリアではそりゃもう大騒ぎになってたぜ。生存は絶望的だろうって思われてるから、生きて竜王の番になってると知ったら驚くだろうなあ」
宰相の執務室で、リュカとキールはダイアンに調査結果の報告をしていた。宰相直属の諜報部に属する二人はダイアンの指示を受けすぐに調査に向かうと、近海の国々を調べる中でドラード王の新たな花嫁が海で遭難したという話を聞き、アスタリアに向かったのだった。街中に貼られた絵姿からアイリスがアスタリアの姫君であることを確認した二人は、いったん報告のため、アルファンド王国へ戻ることにした。
「厄介なことになるくらいならこのまま亡くなったことにする……という手もあるが。それはフィリクスが納得しないだろうな」
溜息をつくダイアン。小国とはいえ人族の姫君ともなれば、国や家族とのしがらみも多そうだ。体調が回復した花嫁が家族に逢いたいと言えば、フィリクスは否とは言わないだろう。となれば、正式に国を通して婚儀の申し込みをする必要がある。
「平民の娘なら話は簡単だったんだがな。まあ、身に着けているものから高位の貴族か王族だと思っていたから想定の範囲内だが。アスタリアか。あそこは竜神信仰が根強い国だし、まあなんとかなりそうだな。問題はドラード国のほうか」
「先にドラード国に向かいましたが、すでに花嫁を迎えに行った使節団は全員処刑されたあとでした。ドラード王の姫君に対する妄執はすさまじいものがあるようで、今回使節団の代表を務めた後継候補の王子まで幽閉されてましたね。一月後に公開処刑になるとか」
「自分の息子の命よりも新妻の価値が重いと言うことか。厄介だな。ご苦労だった。この件については、フィリクスと協議する必要があるな」
「あ、あと一件報告があるんだけど」
「なんだ?」
「実は俺たち、アスタリアで竜人族の娘を見つけたんだよな」
「竜人族を?それは確かか?」
「ええ。見たことのない娘でした。まだ幼体で竜の目覚めもないから、本人に竜である自覚もないようで。おそらく、先祖返りかはぐれ竜だと思うのですが」
「それは朗報だな。竜の一族として新たな仲間を歓迎する準備をしよう。で、その娘はいまどこにいるんだ?」
思わず身を乗り出すダイアン。竜人族は希少種であり、新たな竜人族の誕生は一族にとって悲願ともいえる。ここ数百年、新しい竜人族は誕生していない。多種族から稀に生まれる先祖返りや、群れからはぐれた幼い竜ともなれば、即刻保護しなければいけない。
「それが逃げられちゃってさ~。俺たちもとりあえず報告に戻らなきゃいけないから深追いしなかったんだけど」
「なんだと?それでそのまま置いてきたのか?悪いやつに捕まったらどうする!」
、軽い態度のキールにムッとするダイアン。確かに花嫁の情報は必要だが、新たな竜人族の存在は、この国にとっても一族にとっても、勝るとも劣らないほどの一大事だ。
「あ~、そこは大丈夫。すでにつよ~いお兄さんに保護されてっからさ」
「下手に私たちが手出ししたら、怒られそうでしたしねえ」
「どういうことだ?お前たち以外から報告は上がってないが」
「実はもう一人迷い竜を見つけちゃいまして」
「迷い竜だと?まさか……」
「そのまさかです」
「なるほど。アスタリアの姫君か」
「姫様の名前はアイリス。ドラード王の花嫁になるはずの姫君が海で行方不明になったって、アスタリアではそりゃもう大騒ぎになってたぜ。生存は絶望的だろうって思われてるから、生きて竜王の番になってると知ったら驚くだろうなあ」
宰相の執務室で、リュカとキールはダイアンに調査結果の報告をしていた。宰相直属の諜報部に属する二人はダイアンの指示を受けすぐに調査に向かうと、近海の国々を調べる中でドラード王の新たな花嫁が海で遭難したという話を聞き、アスタリアに向かったのだった。街中に貼られた絵姿からアイリスがアスタリアの姫君であることを確認した二人は、いったん報告のため、アルファンド王国へ戻ることにした。
「厄介なことになるくらいならこのまま亡くなったことにする……という手もあるが。それはフィリクスが納得しないだろうな」
溜息をつくダイアン。小国とはいえ人族の姫君ともなれば、国や家族とのしがらみも多そうだ。体調が回復した花嫁が家族に逢いたいと言えば、フィリクスは否とは言わないだろう。となれば、正式に国を通して婚儀の申し込みをする必要がある。
「平民の娘なら話は簡単だったんだがな。まあ、身に着けているものから高位の貴族か王族だと思っていたから想定の範囲内だが。アスタリアか。あそこは竜神信仰が根強い国だし、まあなんとかなりそうだな。問題はドラード国のほうか」
「先にドラード国に向かいましたが、すでに花嫁を迎えに行った使節団は全員処刑されたあとでした。ドラード王の姫君に対する妄執はすさまじいものがあるようで、今回使節団の代表を務めた後継候補の王子まで幽閉されてましたね。一月後に公開処刑になるとか」
「自分の息子の命よりも新妻の価値が重いと言うことか。厄介だな。ご苦労だった。この件については、フィリクスと協議する必要があるな」
「あ、あと一件報告があるんだけど」
「なんだ?」
「実は俺たち、アスタリアで竜人族の娘を見つけたんだよな」
「竜人族を?それは確かか?」
「ええ。見たことのない娘でした。まだ幼体で竜の目覚めもないから、本人に竜である自覚もないようで。おそらく、先祖返りかはぐれ竜だと思うのですが」
「それは朗報だな。竜の一族として新たな仲間を歓迎する準備をしよう。で、その娘はいまどこにいるんだ?」
思わず身を乗り出すダイアン。竜人族は希少種であり、新たな竜人族の誕生は一族にとって悲願ともいえる。ここ数百年、新しい竜人族は誕生していない。多種族から稀に生まれる先祖返りや、群れからはぐれた幼い竜ともなれば、即刻保護しなければいけない。
「それが逃げられちゃってさ~。俺たちもとりあえず報告に戻らなきゃいけないから深追いしなかったんだけど」
「なんだと?それでそのまま置いてきたのか?悪いやつに捕まったらどうする!」
、軽い態度のキールにムッとするダイアン。確かに花嫁の情報は必要だが、新たな竜人族の存在は、この国にとっても一族にとっても、勝るとも劣らないほどの一大事だ。
「あ~、そこは大丈夫。すでにつよ~いお兄さんに保護されてっからさ」
「下手に私たちが手出ししたら、怒られそうでしたしねえ」
「どういうことだ?お前たち以外から報告は上がってないが」
「実はもう一人迷い竜を見つけちゃいまして」
「迷い竜だと?まさか……」
「そのまさかです」
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