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その23 受け継がれしもの
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◇◇◇
だが、ミイナの言葉にロイは軽く首を振る。
「竜人族だからって訳じゃない。俺にとって特別なのはお前だけだ」
ロイから真っすぐに向けられた視線に戸惑うミイナ。
「それってどういう……」
だがロイはその質問には答えなかった。そんな二人の様子を面白そうな顔で観察していたダイアンだったが、とりあえずミイナに話を戻す。
「とりあえず先にいいか?」
「あ、はい」
「もちろん、急な提案に君が困惑しているのは百も承知だ。今までの生活もあるしな。差し支えなければ、君のことを色々聞かせてほしい。名前や年齢、出身、家族や友人関係。今までどこでどのようにして過ごしてきたのかを。この国にはしばらく滞在できるか?部屋を用意するから、これからのことを決めるのは、気持ちの整理がついてからで構わない」
「ご配慮に感謝いたします。私の名前はミイナ。出身はドラード国です。年は16歳。母は私が幼いころに亡くなり、父とは……もうずっとあっていません」
「そうか、兄弟はいるのか?」
「ええ、まあ……兄がひとり」
国王の寵姫だった母が亡くなった後、ミイナはドラード国での立場を失い、父王から顧みられることはなかった。物心ついてから父王がミイナを訪ねてきたことはなく、舞踏会や晩餐会に呼ばれることもない。幼いころは与えられた小さな離宮で過ごしていたが、それも新しい側室に奪われ、それからは使用人が使っていた小屋で一人寝起きしていた。名ばかりの無力な王女。きっと、このままミイナが消えても誰一人として気に留める者はいないだろう。厄介者が一人いなくなったというだけだ。ミイナが兄と呼べる存在はラナードひとりだけ。
「お兄さんとは仲がいいのか?もし君が望むなら君の家族ごと一緒に移住しても構わないが」
「本当ですか!?」
ドラード国で力を失い、命の危険さえあるラナード。上手くラナードを救い出すことができれば、ラナードの亡命先として使えるかもしれない。
ミイナの弾んだ声にダイアンも目を細める。
「血の繋がりがあるなら、君の兄も竜の血筋ということになる。こちらとしてもぜひ会ってみたい」
「あ、兄とは母親が違うんですが」
ダイアンはふむ、と少し考え、
「そうか。ミイナの竜の血が母親譲りなら君のお兄さんは竜の因子は持っていないことになるな。そこから君のルーツもわかるかもしれない」
ダイアンの言葉にミイナも頷く。もし、竜の血が父親譲りだとするなら、ドラード国の王族は全員竜の血を引くことになる。もし、神にも等しい竜人の血を引いているとしたら、王族としての神格化を高めるために、もっと大々的に公表してもいいはずだ。なんらかの逸話が残されていてもおかしくない。国の成り立ちの中でもそういったものを全く聞いたことがないため、考えられるとすれば母親の血筋だろう。
「もし、私に本当に竜の血が流れているのだとしたら。多分、母から受け継いだんじゃないかと思います」
「君の母親の名前は?」
「ジェニファーです。結婚前の名字は分かりません。異国の踊り子だったと聞いています」
「ジェニファーだって!?君はジェニファーの娘かっ!」
驚いて立ち上がるダイアン。後ろの二人も目を丸くしている。
「ロイ、お前……知ってたのか!?」
ダイアンの問いに、ロイは静かに頷いた。
だが、ミイナの言葉にロイは軽く首を振る。
「竜人族だからって訳じゃない。俺にとって特別なのはお前だけだ」
ロイから真っすぐに向けられた視線に戸惑うミイナ。
「それってどういう……」
だがロイはその質問には答えなかった。そんな二人の様子を面白そうな顔で観察していたダイアンだったが、とりあえずミイナに話を戻す。
「とりあえず先にいいか?」
「あ、はい」
「もちろん、急な提案に君が困惑しているのは百も承知だ。今までの生活もあるしな。差し支えなければ、君のことを色々聞かせてほしい。名前や年齢、出身、家族や友人関係。今までどこでどのようにして過ごしてきたのかを。この国にはしばらく滞在できるか?部屋を用意するから、これからのことを決めるのは、気持ちの整理がついてからで構わない」
「ご配慮に感謝いたします。私の名前はミイナ。出身はドラード国です。年は16歳。母は私が幼いころに亡くなり、父とは……もうずっとあっていません」
「そうか、兄弟はいるのか?」
「ええ、まあ……兄がひとり」
国王の寵姫だった母が亡くなった後、ミイナはドラード国での立場を失い、父王から顧みられることはなかった。物心ついてから父王がミイナを訪ねてきたことはなく、舞踏会や晩餐会に呼ばれることもない。幼いころは与えられた小さな離宮で過ごしていたが、それも新しい側室に奪われ、それからは使用人が使っていた小屋で一人寝起きしていた。名ばかりの無力な王女。きっと、このままミイナが消えても誰一人として気に留める者はいないだろう。厄介者が一人いなくなったというだけだ。ミイナが兄と呼べる存在はラナードひとりだけ。
「お兄さんとは仲がいいのか?もし君が望むなら君の家族ごと一緒に移住しても構わないが」
「本当ですか!?」
ドラード国で力を失い、命の危険さえあるラナード。上手くラナードを救い出すことができれば、ラナードの亡命先として使えるかもしれない。
ミイナの弾んだ声にダイアンも目を細める。
「血の繋がりがあるなら、君の兄も竜の血筋ということになる。こちらとしてもぜひ会ってみたい」
「あ、兄とは母親が違うんですが」
ダイアンはふむ、と少し考え、
「そうか。ミイナの竜の血が母親譲りなら君のお兄さんは竜の因子は持っていないことになるな。そこから君のルーツもわかるかもしれない」
ダイアンの言葉にミイナも頷く。もし、竜の血が父親譲りだとするなら、ドラード国の王族は全員竜の血を引くことになる。もし、神にも等しい竜人の血を引いているとしたら、王族としての神格化を高めるために、もっと大々的に公表してもいいはずだ。なんらかの逸話が残されていてもおかしくない。国の成り立ちの中でもそういったものを全く聞いたことがないため、考えられるとすれば母親の血筋だろう。
「もし、私に本当に竜の血が流れているのだとしたら。多分、母から受け継いだんじゃないかと思います」
「君の母親の名前は?」
「ジェニファーです。結婚前の名字は分かりません。異国の踊り子だったと聞いています」
「ジェニファーだって!?君はジェニファーの娘かっ!」
驚いて立ち上がるダイアン。後ろの二人も目を丸くしている。
「ロイ、お前……知ってたのか!?」
ダイアンの問いに、ロイは静かに頷いた。
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