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2章 冒険者としての生活
科学です
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なかなか泣き止まないコリンナ様を、なぜ泣いているのかも分からず、しばし彫像と化していた。
抱きしめるのも、なにか色々とまずい気がしたし、ポーション飲ませて落ち着かすのもどうかと思うしな。
ちなみに一部のポーションは飲まなくても効果を発揮するものも存在するが、ポーションという分類なだけで湿布や軟膏になっているだけで、飲むポーションを振りかけても効果が出たりはしない。
ゲームでは飲んでもぶっかけても、瓶ごとぶつけても効果があったのに、現実となったこの世界では飲むか塗るか貼るしか方法が無くなっている。
危ない薬を彷彿とさせるせいか、全年齢向けのゲームだったので吸入や注射系のポーションは存在しなかったのである。
時間になったのか、それとも他の用事があったのか、ヴァルターさんが修練場にやってきたので現実逃避を終了する。
コリンナ様が泣きながら俺に抱きついている状況を見た瞬間、寒気がする程の殺気を感じた。
「何をされておいでですか?」
ヴァルターさんが笑顔で手袋をハメなおしながら、ゆっくりと近づいて来る。
いや、ちょっと笑顔なのがむしろ怖いんですが!?
「あ、いえ、そのっ、発火の魔法がちゃんと使えたのが嬉しかったらしく、感極まったようでしてですね」
ゴゴゴという擬音が聴こえてきそうなヴァルターさんに、しどろもどろになりながらも状況を説明する。
「な、なんと、お嬢様が魔法を!?」
「本当ですわ、コリンナ様は発火の魔法を完璧にお使いになられましたわ」
エーリカも加勢してくれて、ヴァルターさんの殺気が収まった。
そのやり取りで、少し落ち着いたのかコリンナ様が俺から離れた。
あ、鼻水ついてる……。
「ヴァルター聞いて! 私魔法が使えたのよ! 魔法が!」
泣き腫らした顔で、一生懸命報告をするコリンナ様にヴァルターさんはしゃがんで笑顔で目線を合わせるとハンカチを取り出してで涙を拭いてあげている。
「それはそれは良うございました。 はいチーンしてください」
鼻をかませたあとで、ヴァルターさんがコリンナ様の泣いて目や鼻が赤くなっている顔に手をかざすと、失礼します。と声を掛けた。
すると、コリンナ様の顔から腫れや赤みが引いていき、元の可愛らしい顔に戻った。
ヴァルターさん回復魔法が使えるのか。
「ありがとうヴァルター、あのね、ヴァルターこっち。 ヴァルターよく見てて!」
「はい、しっかり拝見させていただきます」
コリンナ様がヴァルターさんの手を引っ張ってまだ火のついていないろうそくの前まで引っ張っていった。
「ティンダー!」
自信を持って発せられた魔法名とともに、ろうそくに小さな火が灯る。
「おお、まさしく発火の魔法でございますな。 大変素晴らしゅうございます」
ヴァルターさんがパチパチと手を叩いて褒める。
ひとしきり魔法が使えたコリンナ様を褒め称えた後、俺の方に振り返り深々と頭を下げてきた。
「このような素晴らしいご成果をあげてくださったのにもかかわらず、先程は大変失礼をいたしました。 如何様な処罰でもお受けいたします」
「いやいや、何もされてませんし、処罰とかしませんし!」
確かに妙な迫力があって怖かったけど、それだけで処罰するとかは、いくらなんでも考えられない。
しばしの押し問答の末、ではせめてこれだけはと、服についた涙とか鼻水を魔法で綺麗にしてくれた。
生活魔法と言うやつだろうか? 便利そうなので是非とも憶えたいところだが、ふと俺は消えた涙や鼻水はどこに消えたのかと気になってしまった。
物理法則がしっかりと存在しているにも関わらず、一方で完全に物理法則を無視したような事が度々起こっている。
今まで、異世界だし元の世界と全く同じ物理法則では無いのだろうと深く考えていなかったが、気になりだすと、今考える事では無いと解っているのだが困った事にそのことが頭から離れなくなってしまった。
俺が思案にくれている間、コリンナ様は、楽しそうにろうそくをつけたり消したりを繰り返していた。
なんとか思考の海から浮上して、火事とか危ないからそろそろコリンナ様を止めよた方が良いだろうと話か掛けようとした。
「コリンナ様、あまりやりすぎますと魔力を消費しすぎてお体に障りますわ」
「あ、はい、そうですね。 嬉しくてつい……」
俺よりも早くエーリカが気がついて止めてくれたようだ。
さて、この後俺はどうしたら良いのだろうかな。
授業を続けるのか、今日はここまでと終わりにするのか。
俺が色々と考え込んでいるうちにヴァルターさんがジークフリード様に報告に行ったようで、全力疾走してきたらしいジークフリード様がハァハァ言いながらやって来て、ものすごく感謝された。
コリンナ様の魔法を見たがっていたが残り魔力の問題で回復するまでしばらくお預けということになってしょげていた。
とりあえず、コリンナ様を休ませた方が良いという話になり今日は解散する運びになった。
そのまま歩いて帰ろうかと思っていたら、すでに馬車が用意されていたので、エーリカと一緒に馬車で帰ることにした。
「はあ、私はこれでお役御免ですわね」
「え? どうしてだ?」
「どうしてって……。私がいくら授業をしても一向に魔法を使える気配の無かったコリンナ様が、たった1回の授業で使えるようになったんですのよ。 今後はあなたが、引き継いで授業を行うのでしょう?」
「え? そいつは正直困る。 俺の魔法の有様は知っているだろ? 発動のきっかけは教えられるかもしれないが、実際の使い方までは無理だ。 だから経験豊富なエーリカが助けてくれないとどうなってしまうか分からない」
うっかり初めての魔法とか使ったら爆発したり、吹き飛んだりするからな(経験談)
「そ、そういう事なら、助けてあげないことも無いですわ」
「良かった。それじゃあ、今後ともよろしく頼む」
まだまとまってはいないが俺も聞きたい事がたくさん出てくるだろうしな。
「それにしても、錬金術の流れで魔法を解釈しているとヴァルターさんから伺って半信半疑でしたけど、本当に錬金術の実験から魔法が使えるようになるなんて不思議ですわ」
いやいや、俺からしたら精霊がどうのという方がよっぽど不思議だけどな。
「まあ、錬金術じゃないからな」
「そうなんですの? それじゃあ一体あれはなんなんですの?」
「ああ、あれは科学というんだ」
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ここいらへんで投稿済み分の誤字脱字等の修正を行わせていただきたいと思います。
そのため次回更新は一日空けて2日とさせてください。
修正は行いますが、ストーリーや内容自体の変更予定はありません。
抱きしめるのも、なにか色々とまずい気がしたし、ポーション飲ませて落ち着かすのもどうかと思うしな。
ちなみに一部のポーションは飲まなくても効果を発揮するものも存在するが、ポーションという分類なだけで湿布や軟膏になっているだけで、飲むポーションを振りかけても効果が出たりはしない。
ゲームでは飲んでもぶっかけても、瓶ごとぶつけても効果があったのに、現実となったこの世界では飲むか塗るか貼るしか方法が無くなっている。
危ない薬を彷彿とさせるせいか、全年齢向けのゲームだったので吸入や注射系のポーションは存在しなかったのである。
時間になったのか、それとも他の用事があったのか、ヴァルターさんが修練場にやってきたので現実逃避を終了する。
コリンナ様が泣きながら俺に抱きついている状況を見た瞬間、寒気がする程の殺気を感じた。
「何をされておいでですか?」
ヴァルターさんが笑顔で手袋をハメなおしながら、ゆっくりと近づいて来る。
いや、ちょっと笑顔なのがむしろ怖いんですが!?
「あ、いえ、そのっ、発火の魔法がちゃんと使えたのが嬉しかったらしく、感極まったようでしてですね」
ゴゴゴという擬音が聴こえてきそうなヴァルターさんに、しどろもどろになりながらも状況を説明する。
「な、なんと、お嬢様が魔法を!?」
「本当ですわ、コリンナ様は発火の魔法を完璧にお使いになられましたわ」
エーリカも加勢してくれて、ヴァルターさんの殺気が収まった。
そのやり取りで、少し落ち着いたのかコリンナ様が俺から離れた。
あ、鼻水ついてる……。
「ヴァルター聞いて! 私魔法が使えたのよ! 魔法が!」
泣き腫らした顔で、一生懸命報告をするコリンナ様にヴァルターさんはしゃがんで笑顔で目線を合わせるとハンカチを取り出してで涙を拭いてあげている。
「それはそれは良うございました。 はいチーンしてください」
鼻をかませたあとで、ヴァルターさんがコリンナ様の泣いて目や鼻が赤くなっている顔に手をかざすと、失礼します。と声を掛けた。
すると、コリンナ様の顔から腫れや赤みが引いていき、元の可愛らしい顔に戻った。
ヴァルターさん回復魔法が使えるのか。
「ありがとうヴァルター、あのね、ヴァルターこっち。 ヴァルターよく見てて!」
「はい、しっかり拝見させていただきます」
コリンナ様がヴァルターさんの手を引っ張ってまだ火のついていないろうそくの前まで引っ張っていった。
「ティンダー!」
自信を持って発せられた魔法名とともに、ろうそくに小さな火が灯る。
「おお、まさしく発火の魔法でございますな。 大変素晴らしゅうございます」
ヴァルターさんがパチパチと手を叩いて褒める。
ひとしきり魔法が使えたコリンナ様を褒め称えた後、俺の方に振り返り深々と頭を下げてきた。
「このような素晴らしいご成果をあげてくださったのにもかかわらず、先程は大変失礼をいたしました。 如何様な処罰でもお受けいたします」
「いやいや、何もされてませんし、処罰とかしませんし!」
確かに妙な迫力があって怖かったけど、それだけで処罰するとかは、いくらなんでも考えられない。
しばしの押し問答の末、ではせめてこれだけはと、服についた涙とか鼻水を魔法で綺麗にしてくれた。
生活魔法と言うやつだろうか? 便利そうなので是非とも憶えたいところだが、ふと俺は消えた涙や鼻水はどこに消えたのかと気になってしまった。
物理法則がしっかりと存在しているにも関わらず、一方で完全に物理法則を無視したような事が度々起こっている。
今まで、異世界だし元の世界と全く同じ物理法則では無いのだろうと深く考えていなかったが、気になりだすと、今考える事では無いと解っているのだが困った事にそのことが頭から離れなくなってしまった。
俺が思案にくれている間、コリンナ様は、楽しそうにろうそくをつけたり消したりを繰り返していた。
なんとか思考の海から浮上して、火事とか危ないからそろそろコリンナ様を止めよた方が良いだろうと話か掛けようとした。
「コリンナ様、あまりやりすぎますと魔力を消費しすぎてお体に障りますわ」
「あ、はい、そうですね。 嬉しくてつい……」
俺よりも早くエーリカが気がついて止めてくれたようだ。
さて、この後俺はどうしたら良いのだろうかな。
授業を続けるのか、今日はここまでと終わりにするのか。
俺が色々と考え込んでいるうちにヴァルターさんがジークフリード様に報告に行ったようで、全力疾走してきたらしいジークフリード様がハァハァ言いながらやって来て、ものすごく感謝された。
コリンナ様の魔法を見たがっていたが残り魔力の問題で回復するまでしばらくお預けということになってしょげていた。
とりあえず、コリンナ様を休ませた方が良いという話になり今日は解散する運びになった。
そのまま歩いて帰ろうかと思っていたら、すでに馬車が用意されていたので、エーリカと一緒に馬車で帰ることにした。
「はあ、私はこれでお役御免ですわね」
「え? どうしてだ?」
「どうしてって……。私がいくら授業をしても一向に魔法を使える気配の無かったコリンナ様が、たった1回の授業で使えるようになったんですのよ。 今後はあなたが、引き継いで授業を行うのでしょう?」
「え? そいつは正直困る。 俺の魔法の有様は知っているだろ? 発動のきっかけは教えられるかもしれないが、実際の使い方までは無理だ。 だから経験豊富なエーリカが助けてくれないとどうなってしまうか分からない」
うっかり初めての魔法とか使ったら爆発したり、吹き飛んだりするからな(経験談)
「そ、そういう事なら、助けてあげないことも無いですわ」
「良かった。それじゃあ、今後ともよろしく頼む」
まだまとまってはいないが俺も聞きたい事がたくさん出てくるだろうしな。
「それにしても、錬金術の流れで魔法を解釈しているとヴァルターさんから伺って半信半疑でしたけど、本当に錬金術の実験から魔法が使えるようになるなんて不思議ですわ」
いやいや、俺からしたら精霊がどうのという方がよっぽど不思議だけどな。
「まあ、錬金術じゃないからな」
「そうなんですの? それじゃあ一体あれはなんなんですの?」
「ああ、あれは科学というんだ」
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ここいらへんで投稿済み分の誤字脱字等の修正を行わせていただきたいと思います。
そのため次回更新は一日空けて2日とさせてください。
修正は行いますが、ストーリーや内容自体の変更予定はありません。
応援ありがとうございます!
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