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仁ある所に全ての徳集まる(4)
しおりを挟むだ、誰……?
同じ年恰好のご令息がふたり。
前のご令息が駆け出すと、後ろのご令息も一緒になって駆けてきた。
「お前たち、またケンカか!? その子が嫌がってるぞ! 手を離せよ!」
「バルトロメーオ! 黙ってて、これは私とジュスティーナの問題よ!」
「そうですわ、いちいちあなたの正義感を振り回さないでちょうだい!」
い、いえ……!
ほ、本当に痛いので、そろそろ離して欲しいのですけれど……!
思わず目線でバルトロメーオと呼ばれたご令息に助けを求めた。
縮毛の黒い髪に、正義感のみなぎる太い眉、その下には真っ青輝く瞳。
驚くほど素早く、彼は行動した。
バシッと大きな音を立てて、アルベルティーナと、ジュスティーナ様の手を払いのけてくれたのだ。
「痛ったぁい! ひ、ひどいですわ!」
「痛ったっ! 女性に手をあげるなんて!」
その反動では私は前に倒れてしまった。
けれど、た、助かりましたわ。
あらら、手首がこんなに赤くなってしまって……。
気が付くと、私の前には黒い影。
顔を上げると、もう一人のご令息。
直毛のプラチナプロンドを少し気の弱そうな眉の上で切りそろえ、その下の目は明るい緑色。
「大丈夫?」
「恐れ入りますわ……、ええと……」
「僕はカロージェロ……。カロージェロ・シンチェリタ」
まあ、シンチェリタ伯爵のご令息……。
「カロージェロ・シンチェリタ様、ありがとう存じます。
私はミラ・ラーラ・プレモロジータと申します。あの、あちらのお方は……」
「彼はバルトロメーオ・ジュスティッツィアだよ」
あら、ジュスティッツィア伯爵のご令息でしたの。
まさか、メゾシニシスタ王国の有力伯爵家の令息令嬢がそろい踏みとは……。
それにしても、なかなか個性的なみなさんですわ……。
カロージェロ様の手を借りて立ち上がると、三人はまだ言い合っていた。
「お前たちがあの子を引っ張りまわしていたのが悪いんだろ!」
「引っ張っていたのはジュスティーナのほうよ!」
「なにいってるの、アルベルティーナこそ無理やりだったじゃないの!」
「ふたりとも悪い!」
「なんですって、女性に手をあげた罪を棚に上げて、私たちを責めるつもり!?」
「私の手を見なさいよ! 赤くなってるわ! すごく痛かったのよ!」
「私の方が赤いわ! ジュスティーナよりももっと痛かったんだから!」
「うっ……」
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