ある神官の告白

彩月野生

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消せなかった恋心

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ヘルマンは、彼を忘れたくて神官の身となった。
だが、身も心も魔の者によって穢れたヘルマンを、受け入れてくれる神などいない。
それでも諦めきれず、世界中を旅して、成人してから十年後。
やっと受け入れてくれる神殿が見つかった。
慈悲の女神が存在する国。ヘルマンは女神に祈り続けて無事に神託を受けた。
三十路を過ぎだばかりで神官になれたものの、他国の人間であるヘルマンは、周囲となじめず孤独であった。

友人はいたが、かつての罪を悟られたくはないと深い仲にはなれなかったのだ。

それでも、神官として過ごす日々は充実しており、すっかりリーヌスの事など頭から消えていた。
そう、思っていた。昨夜までは。

「……なぜ、なぜいまになって」

ヘルマンはもう四十路の半ばになっていた。
そろそろ外界から引っ込み、神殿の奥にて過ごそうかと思っていたのだ。

王に気に入られたリーヌスは、城の一室を借りてしばらく滞在するらしい。
神官達は王に呼びつけられ、リーヌスと一言挨拶を交わしたのだ。
その際に、ヘルマンはリーヌスの姿を見て、胸の奥にしまった筈の焦がれる気持ちを再熱させてしまった。
視線があうと全身が痺れて硬直して、呼吸さえ忘れるところだった。
隣にいた神官に小突かれて我に反り、どうにか乗り切ったのだが、不審に思われただろう。

――ちゃんとあって話したい。たった一言でもいい。

あの様子からして、リーヌスはヘルマンの事などすっかり忘れているようだった。
本当はどうして棄てただとか、問い詰めたい気持ちもあったが、無意味な行為なのだと己の心をどうにかしずませた。

ヘルマンは思い切った行動に出た。
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