上 下
9 / 44
一章

女の子の部屋でドキドキゲーム時間《タイム》

しおりを挟む
ピピピ//ピピピ//ピピピ//.............。

「うるせぇー!」

 そう思わず言いながら、に手を伸ばし、止める。
 快適な睡眠を邪魔されたときの気持ちってこんなんなんだろうなぁ~と、漠然と思いながら二度寝に入ろうとする。
 と、そんなときに、

トントントン//

 と、どこか遠慮がちにドアを叩く音がする。
 そして、

「お兄ちゃん、起きてる?今から、考えてないよね?」

 その、遠慮がちにドアを叩いた人物と同一人物だとは思えないほど、遠慮という言葉のないものいいに、『あ~、妹が起こしに来たのか』と、わかる。
 てか、全然信用されてねぇー!
 いや、昨日の夜寝る前に、


「あっ、彩華ー!」

「なに?てか、そんな大声で人の名前呼ばないでくれる?キモい」

 と、まあ、これがいつも通りの兄妹おれたちなわけなんだが......。

「だから、なに?用がないなら呼ばないでくれる?ちょーキモい」

「あのさ、いつも朝、起こしに来てくれてるだろ?」

「なに?別に、お兄ちゃんのためにしてるわけじゃないけど?お父さんさんと朝ごはんで使われた食材のためだけにしてるだけだけど?もしかして、なに?自分のためにしてくれてると思ってたの?」

「いや、そういうわけじゃなくてだな」

「だったらなんなの?早く言ってくんない?私、勉強で忙しいんだけど?私は今年、受験生なんだからね?」

 なんか、いつもよりも辛辣な気がするけど、たぶん気のせいだよな。
 うん、気のせいだ。お風呂でのことをまだ気にしてるわけじゃないはずだ。
 あれは、お互いに忘れるってことになったからな。

「ああ。えっとだな、その、目覚まし時計を買ったから、もう起こしに来なくてもいい」

「はっ?」

「えっと、だから、もう起こしに来なくて平気」

 と、俺がそう言ったとたん、なぜか妹は不機嫌になった。
 いや、割とガチで謎なんですが?


 とまあ、こんなことがあったわけだ。
 で、なぜか昨日からずっと機嫌が悪い。
 まさか、まだ続いてるとは。

「起きてるよー」

 と、今さらのように返すと、

「それじゃ、朝ごはんはもうできてるから、早く食べちゃって」

 そう妹は言い残して、どこか行ってしまった。
 そして、俺はふと思うのだった。
 目覚まし時計を買う必要なかったな、と。
 たって、スマホに目覚ましの機能がついてるのだから。
 そして、俺も学校へ向かうための支度を始めるのだった。


 学校へ向かっている途中、赤里あかりに会う。
 というのは建前で、なぜか赤里に待ち伏せをされていた。
 学校の最寄りの駅で。
 まあ、同じ電車を使ってるのだから、学校の最寄りの駅に早めに来て待っていれば、俺と会えるというわけだ。
 俺は、昨日のことを思い出し、ドキドキしてると、俺に赤里は近づいて来て、俺の着てる制服のポケットに何かを突っ込む。

「ちょっ!お前なにを突っ込んで──!」

「ちょっと、叫ばないでよ。公共の場なのよ?」

 と、彼女に注意されて、「ごめん」と謝る。
 て、それより、

「お前今、なにをポケットに入れたんだ?」

 さっきとは違い、冷静にそう訊くと、赤里は教えてくれた。

「昨日、買ったものよ。それと、これ。もちろん、全額あるとは思うけど、一応あとでちゃんと確認しておいて」

 そう言うと、俺はお金の入ったポリ袋を渡される。
 て、俺はお前が昨日買ったものがなんなのか、全く知らないんだよな。

「その、せっかくだし、一緒に学校に──」

「行くわよ?その方が都合もいいし。それと、毎日この時間にこの場所に来て。一分でも遅れたら、わかってるわよね?」

 はっ?ウソだろ?冗談だよな?冗談だって言ってくれー!
 毎日同じ時間で、ここに来なきゃいけないのか?
 俺は、恐る恐る、

「冗談、だよな?」

 と、訊いてみる。けど、

「冗談なんかじゃないわよ?それによかったじゃないの。こんなにかわいい女の子と一緒に毎日学校に行けるのよ?あんたは、もっと私に感謝するべきよ」

 やっぱり冗談なんかじゃなかった。

「その、いやって言ったら──」

「言いふらす」

「やったー。嬉しいなー」

 明らかな棒読みでそう言う。
 はあ、なんで俺がこんな目に。

「休むときは連絡してちょうだい」

「わかった」

「それじゃ、行くわよ!」

 そうして、俺は学校に向かうことにする。
 そして、俺はこう思うのだった。
『ああ、あのときあんなことを訊かなければこんなことにならなかったのに。人生もセーブできればどんなに幸せなんだろ』と。


「あっ、響鬼ひびき

 赤里と一緒に学校へ向かってる途中、俺は響鬼を見つけた。
 せっかくだからと、俺は響鬼に声を掛ける。

「ああ、悠か。それじゃ、隣の女の子が君の彼女なのかな?」

「ちげぇーよ!えっと、この子は赤里鈴音。ほら、一昨日の」

「ああ、悠の彼女ね。まさか、悠が本当にそういう趣味だったなんてね」

 と、俺と響鬼は、いつものどうでもいいような話をする。
 ただ、赤里は全く俺たちとの会話に加わろうとしない。
 というか、ニコニコほほ笑みながら、俺をみて、聞いてるだけだった。
 なんか、初めて会ったときの彼女と同じような......。

「あ、そうだ響鬼。お前に会ったら話そうと思ってたことがあったんだ」

「なんだい?彼女ができたことのマウントだったら、遠慮しとくよ」

「だから、彼女じゃないっての。いやな、俺、昨日おもしろいことを知ったんだよ。赤里はな──て、痛っ!おい、赤里!なにすんだよ!」

 俺が喋ってる途中で、思いっきり足を踏んでくる。
 けれど、赤里は無言でニコニコしながら、俺に口パクで、『なんで、言おうとしてるの?』と言ってくる。
 まあ、俺には読唇術なんてことはできないから、あってるのかまではわからないけどな。
 けど、昨日のことを思い出して考えてみれば、そんなことを言ってるんだと、なんとなくわかる。
 まあ、俺があのことを言いかけたわけだから、思いっきり足を踏まれたというわけだ。

「悠?どうしたんだい?」

「い、いや、なんでもない」

 俺は焦ったように、響鬼にそう言う。

「あ~、そういうことか。悠、本当にごめん。ちゃんと、気づいてあげられなくて。それじゃ、僕は先に行くよ」

 そう言い残すと、響鬼は何かを察したように行ってしまう。
 て、そういうことじゃねえーよ!
しおりを挟む

処理中です...