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一章
兄が妹を思うのは自然なことだろ?
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それから、俺はしばらくの間、ただただ呆然と立ち尽くしていた。なにをしたらいいのか、なにをすればいいのか。正解はなんのか。
それすらも考えられないほど、俺は動揺していた。いや、違う。そもそも、何をしたらいいのかすら思いつかない。何をするべきなのかもわからない。
けど、そこに残った二つの傘を見るだけで、俺の心は誰かに思いっ切り心臓を掴まれたかのように痛む。
相変わらず周囲の音はどこに消えてしまったのか、全く聞こえてこない。
そうして、俺がなにもできないでいると、隣にいた赤里が口を開いた。
それは、まるでなにもないモノクロの世界となってしまった俺の世界に差す、光のようだった。
「私にあんたのことは関係ない。あんたの事情なんかどうでもいい。だから、今のことについてはなにも聞かないし、今後もその話はしないわ。だから、とりあえず私へのお礼をして頂戴」
俺は赤里の一見人の気持ちを考えないその言葉に、温かみを感じた。もちろん、それは俺がそういう趣味を持ち合わせてるからじゃない。
きっと、それが赤里なりの励ましの言葉だから。それに俺は気づけたから。
けど、不器用なその言葉は、俺の心の中の深く深くに突き刺さる。
そして、段々と周囲の音も戻り始め、そして自分のすべきことを理解し始める。
世界に色が、光が戻り始める。
そして、俺は手始めに、赤里に向かってこう言った。
「赤里、ありがとな」
「なっ! なによ! べ、別に、あんたのことを思って言ったわけじゃないから!」
赤里は顔を真っ赤にしてそう言った。俺はそんな赤里を見て、自然な笑みが溢れる。
そうして、俺は心にも少しずつ余裕がうまれる。
なんたなく、俺が赤里を見てると、赤里は放置された二本の傘に近づいて言った。なんでだ? なんて、漠然とそう思ってると、赤里はそれを拾って戻ってくる。
「ほら。これ、あんたらのでしょ。あそこに放置したら邪魔でしょ。持って帰りなさい」
そう言われ、俺は押し付けられるようにしてそれを受け取る。
「なあ、赤里」
「なによ」
「お前へのお礼のことなんだが──」
「なに言ってるのよ。今は私よりも大事なことがあるでしょ。早く行きなさい。あんたにはやるべきことがあるでしょ。そういうのは、全部終わったあとにお願いするから」
そう言って行こうとする赤里を俺は呼び止める。
「赤里っ……!」
「なに? まだなにかあるわけ?」
「本当にありがとな」
「そんなのいいから、とっとと行きなさい! 私はあんたのためじゃなく、自分のために言ってるだけだから。そこんところ、勘違いしないでちょうだい」
「わかってる」
そうして、赤里は他の人の波に飲み込まれるようにして、その場から去って行った。
俺は、そうして一人になって、また不安に襲われる。
けど、俺は手元にある二本の傘を強く抱きしめ、気持ちを引き締め直す。
雨は相変わらず打ちつけるような勢いのまま降り続けている。
そして、彩華は傘を持ってない。
そんなことを思い出し、今すぐにでも走り出したい気持ちを一旦抑え、俺は手元にある自分の傘を差してから、家に帰るのだった。
もしかしたら、彩華が家に帰ってるかもしれないという、淡い期待を抱きながら。
家に着くと、鍵は閉まっていた。今日は鍵を持ってから家を出てる。
遊園地に行く際、先に出たのは俺だったのだが、念の為で用意してたため、その流れで持っていった。
けど、玄関の鍵を開ける前からなんとなくわかってしまった。家の中に彩華はいないんだって。
けど、どうしてもまだ、期待していた。鍵は閉まってるだけで、中には彩華がいるのではないかと。
そう思いながら玄関を開けると、そこには暗闇が広がっていた。
それはどこまでも続いてるのではないかと錯覚してしまうような真っ暗闇で、ただただ絶望が体を支配し始める。
けど、俺はそんな考えを振り払う。
俺がそんなことで諦めていいはずがない。こんなんじゃ、赤里に示しがつかない。
「よしっ!」
俺はそう声を出して気合いを入れ直すと、とりあえず家にある部屋の中を探すことにした。
一通りの部屋を探し終えた。そして、ここが最後の部屋だった。
それは、妹の部屋だ。
普段なら入ることすら許されない。いや、こんなときでも、人の部屋に勝手に入るなんてことは許される行為なわけがない。
それでも、俺は入ると決めていた。ここが最後に残ったら、ここも確認すると。
そして、少しばかりの緊張が場を支配する。
ここを見ていなかったらどうしようとか、もしここに彩華がいたとして、俺は彩華になんて声を掛ければいいんだろうと考えてしまう。
けど、そんな考えは捨てる。そんなものは今の俺が考えることじゃない。
だから、俺は意を決したように部屋のドアを開け放った。心の中で『ごめん』と呟きながら。
「これは……」
部屋は奇麗に片付けられていた。
どこか隠れられる場所すら少ない。
けど、その部屋の様子は彩華らしいなと思う。
とりあえず、俺は部屋の中に入り、人が一人入れそうな場所だけを一つ一つ確認する。
けど、彩華はとごにもいなかった。
本当にどこに行ってしまったのか。
とりあえず、家の中にはいないとわかった。
他に心当たりのある場所なんて、どこもない。だって、俺は彩華のことを何も知らない。
実の妹だというのに、俺は彩華のことを何も知らない。何もわからない。
そこでまた、俺は絶望する。
けど、そんなときに、家に電話が掛かってきた。
その音はまるで希望の光のようで、妹からかも知れないと思うと、すぐに電話を取っていた。
『あー、あー。あんた、彩華の兄で間違いないな?』
電話の向こう側から聞こえてきたのは彩華の声ではなかった。
けど、この人が彩華のことを知ってることは間違いない。確実に彩華に繋がってる。
もし、彩華についてわかるなら、そんなことを期待する。
「そうですが、誰ですか?」
『まあ、動揺せずにちゃんと聞け』
そう言って、彼は喋り出したのだった。
今の彩華の現状について。
それすらも考えられないほど、俺は動揺していた。いや、違う。そもそも、何をしたらいいのかすら思いつかない。何をするべきなのかもわからない。
けど、そこに残った二つの傘を見るだけで、俺の心は誰かに思いっ切り心臓を掴まれたかのように痛む。
相変わらず周囲の音はどこに消えてしまったのか、全く聞こえてこない。
そうして、俺がなにもできないでいると、隣にいた赤里が口を開いた。
それは、まるでなにもないモノクロの世界となってしまった俺の世界に差す、光のようだった。
「私にあんたのことは関係ない。あんたの事情なんかどうでもいい。だから、今のことについてはなにも聞かないし、今後もその話はしないわ。だから、とりあえず私へのお礼をして頂戴」
俺は赤里の一見人の気持ちを考えないその言葉に、温かみを感じた。もちろん、それは俺がそういう趣味を持ち合わせてるからじゃない。
きっと、それが赤里なりの励ましの言葉だから。それに俺は気づけたから。
けど、不器用なその言葉は、俺の心の中の深く深くに突き刺さる。
そして、段々と周囲の音も戻り始め、そして自分のすべきことを理解し始める。
世界に色が、光が戻り始める。
そして、俺は手始めに、赤里に向かってこう言った。
「赤里、ありがとな」
「なっ! なによ! べ、別に、あんたのことを思って言ったわけじゃないから!」
赤里は顔を真っ赤にしてそう言った。俺はそんな赤里を見て、自然な笑みが溢れる。
そうして、俺は心にも少しずつ余裕がうまれる。
なんたなく、俺が赤里を見てると、赤里は放置された二本の傘に近づいて言った。なんでだ? なんて、漠然とそう思ってると、赤里はそれを拾って戻ってくる。
「ほら。これ、あんたらのでしょ。あそこに放置したら邪魔でしょ。持って帰りなさい」
そう言われ、俺は押し付けられるようにしてそれを受け取る。
「なあ、赤里」
「なによ」
「お前へのお礼のことなんだが──」
「なに言ってるのよ。今は私よりも大事なことがあるでしょ。早く行きなさい。あんたにはやるべきことがあるでしょ。そういうのは、全部終わったあとにお願いするから」
そう言って行こうとする赤里を俺は呼び止める。
「赤里っ……!」
「なに? まだなにかあるわけ?」
「本当にありがとな」
「そんなのいいから、とっとと行きなさい! 私はあんたのためじゃなく、自分のために言ってるだけだから。そこんところ、勘違いしないでちょうだい」
「わかってる」
そうして、赤里は他の人の波に飲み込まれるようにして、その場から去って行った。
俺は、そうして一人になって、また不安に襲われる。
けど、俺は手元にある二本の傘を強く抱きしめ、気持ちを引き締め直す。
雨は相変わらず打ちつけるような勢いのまま降り続けている。
そして、彩華は傘を持ってない。
そんなことを思い出し、今すぐにでも走り出したい気持ちを一旦抑え、俺は手元にある自分の傘を差してから、家に帰るのだった。
もしかしたら、彩華が家に帰ってるかもしれないという、淡い期待を抱きながら。
家に着くと、鍵は閉まっていた。今日は鍵を持ってから家を出てる。
遊園地に行く際、先に出たのは俺だったのだが、念の為で用意してたため、その流れで持っていった。
けど、玄関の鍵を開ける前からなんとなくわかってしまった。家の中に彩華はいないんだって。
けど、どうしてもまだ、期待していた。鍵は閉まってるだけで、中には彩華がいるのではないかと。
そう思いながら玄関を開けると、そこには暗闇が広がっていた。
それはどこまでも続いてるのではないかと錯覚してしまうような真っ暗闇で、ただただ絶望が体を支配し始める。
けど、俺はそんな考えを振り払う。
俺がそんなことで諦めていいはずがない。こんなんじゃ、赤里に示しがつかない。
「よしっ!」
俺はそう声を出して気合いを入れ直すと、とりあえず家にある部屋の中を探すことにした。
一通りの部屋を探し終えた。そして、ここが最後の部屋だった。
それは、妹の部屋だ。
普段なら入ることすら許されない。いや、こんなときでも、人の部屋に勝手に入るなんてことは許される行為なわけがない。
それでも、俺は入ると決めていた。ここが最後に残ったら、ここも確認すると。
そして、少しばかりの緊張が場を支配する。
ここを見ていなかったらどうしようとか、もしここに彩華がいたとして、俺は彩華になんて声を掛ければいいんだろうと考えてしまう。
けど、そんな考えは捨てる。そんなものは今の俺が考えることじゃない。
だから、俺は意を決したように部屋のドアを開け放った。心の中で『ごめん』と呟きながら。
「これは……」
部屋は奇麗に片付けられていた。
どこか隠れられる場所すら少ない。
けど、その部屋の様子は彩華らしいなと思う。
とりあえず、俺は部屋の中に入り、人が一人入れそうな場所だけを一つ一つ確認する。
けど、彩華はとごにもいなかった。
本当にどこに行ってしまったのか。
とりあえず、家の中にはいないとわかった。
他に心当たりのある場所なんて、どこもない。だって、俺は彩華のことを何も知らない。
実の妹だというのに、俺は彩華のことを何も知らない。何もわからない。
そこでまた、俺は絶望する。
けど、そんなときに、家に電話が掛かってきた。
その音はまるで希望の光のようで、妹からかも知れないと思うと、すぐに電話を取っていた。
『あー、あー。あんた、彩華の兄で間違いないな?』
電話の向こう側から聞こえてきたのは彩華の声ではなかった。
けど、この人が彩華のことを知ってることは間違いない。確実に彩華に繋がってる。
もし、彩華についてわかるなら、そんなことを期待する。
「そうですが、誰ですか?」
『まあ、動揺せずにちゃんと聞け』
そう言って、彼は喋り出したのだった。
今の彩華の現状について。
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