金貨一枚の聖女

星ふくろう

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最高神エリアルの聖女 1

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 ウィンダミア帝国帝都アフルァリアを出港して約三日。
 隣の大陸へと向かう交易船。
 いや、その名を借りた奴隷船イルグス号の受難といえば、予想外の嵐に遭遇したことだろう。
 季節外れの凪がまず訪れた。
 船は人力で櫂をこいで動かさねばならず、なぜか海の精霊も、風の精霊も奴隷商人ザイードに雇われた精霊使いの命令を聞き入れなかった。

「おかしいーー!?
 こんなことはいままで一度もなかったのに‥‥‥!!
 まるで、海神がお怒りのようだーー」

 精霊使いはそう呟くと、

「済まないがわたしの契約は破棄させてもらう。
 ここにいたのでは、命が無くなりそうだ。
 金は後から戻しに行く」

 そう言い、転送魔法でアルファリアへと戻ってしまった。
 百人ほどの奴隷の中には、手足に枷と逃げれないように鉄球をつけた鎖をつながれたアリスがいた。
 あの日の神殿でのドレスも宝石も何もかも奪われた。 
 麻袋に手と首を出す穴を開けたものを着せられていた。
 他の船員たちが不安がり、奴隷たちの間にもその恐怖が波及した頃。
 
 次はいきなりの嵐が船を襲った。
 天空にははるか太陽まで届きそうなほどの漆黒の雲が世界を覆い、この世が闇に包まれたように思えた。
 我先にと逃げ出そうとする船員たちの乗るボートは、激しい波間にあっけなく消えて行った。
 一体、誰がこのようなトラブルを招き入れたのか。
 それは誰にも分らなかった。
 
「この船は沈むぞ。
 もう俺たちもお前らも一蓮托生だ‥‥‥。
 せめて最後に良いことくらいしておきてえもんだーー」

 船員の一人がそう言いだした。
 善行をすれば神様の怒りが治まるかもしれない。
 誰かがそう言い、残る十数人の船員が船倉えと向かった。
 彼らが考えた善行。
 それは、生きる可能性を残す事。

「反乱を起こしたきゃ、武器は上にもそこの棒でもどうにでもなる。
 好きにすりゃあいい。
 最後くらい、人間らしく死にたいだろ?
 そんな、鉄の重しだの鎖だの‥‥‥なあ。
 人間のするもんじゃねえよ‥‥‥」

 船員が各自そう言い、そして奴隷たちの鎖や枷を外して回った。
 アリスの枷も外され、最後に残った一人が自由になった時。
 甲板から悲鳴が轟いた。

「大津波だーーーーっ!!!!!!!!!」

 船のマストの帆先を軽々と超えるだけの高さをもつその波の壁は、容赦なく船に襲い掛かる。
 何かに捕まれ!!
 まだ生きれるかもしれんーーー!!!
 誰かが船倉でそう叫んだ時、甲板にいた船員は唖然としていた。

「‥‥‥うっ、うそーーだろっ!!??
 なんで‥‥‥波が止まってんだよー‥‥‥。
 あの大津波がーーそんなことあるわけが‥‥‥」

 
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