空のペットボトル

星ふくろう

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 数日後、ヒロキが仕事中に、にいながやってきた。
「珍しいな?
 どしたよ?」
 彼は商品を放り込みながらそう声をかける。
「‥‥‥売れるの?」
 それをにいなは指差して言った。
 うーん‥‥‥ヒロキの返事は重たい。
「あんまり、かな。
 ここは人も少ないしな」
「そうなんだ」
 なら、一つ買ってあげる。
 高校生の少ないこづかいで、彼女はそれを購入して帰って行った。
「まいどありーってわけでもないけど。
 まあ、ありがたい」
 その日の昼間。
 うだるような暑さの中、橋の下で昼食を済ませて休んでいたヒロキに、にいながいつの間にかやってきた。
 あんまり背は高くないんだよな。
 いつも同じカッコしてるのに、今日はスカートにブラウス。
 少し余所行きのかっこうだった。
「いい?」
 隣、そう指先でにいなはヒロキに問いかける。
「いいけど、汗くさいぞ、俺?
 よけたほうがいい」
 実際に、自分でも嫌になるくらい汗のにおいがひどい。
 制服も着替え、制汗スプレーも振ってはいるが。
 あまり、役には立たない。
 だが、にいなは
「まあ、みんな変わらないから」
 そう言って遠慮なくそこに座ると、やはり手製のおにぎりを食べ始めた。
「食べる?」
 まるで余分に作ってきたように、しかし、不格好なそれを少女は手渡してくる。
「ん?
 ああ、いいなら‥‥‥」
 まあ、味は悪くない。
 塩分がきついのもこの仕事にはありがたい。
「ねえ、なんでその仕事してんの?」
 いきなりの質問。
 なんで?
 それを答えるには少々恥ずかしかった。
「いや、まあ」
「にいな、17歳だけど。
 ヒロキさん、少しだけ上でしょ?
 大卒?」
 そうだよ、とヒロキは返す。
「その仕事してる人って、シングルマザーの人とか。
 もう定年なった人とか。
 30代の人とかしか、この辺りじゃ見ないのに。
 なんで?」
 よく観察してるなあ。
 そうヒロキは思ってしまう。
 うーん。
 話して笑われないかな? 
 でも、この子も俺に研究のこと教えてくれたしな。
 まあ、いいか。
 そう思い、ヒロキは仕事の鍵束を取り出す。
「いま、この地区だけなんだ。
 で、あの販売機の設置する場所の契約を取ればとるほど、この鍵のレベルアップってか。
 開けれる台数が多くなる」
「台数が多い?」
「マンションの鍵みたいなもんだよ。
 部屋数がすくないマンションから、ほろ」
 そう言い、河川沿いにそびえたつタワーマンションを指差す。
「あんな部屋数が多いものまで。
 俺はこの市内の全部の販売機を開けれるマスターキー。
 金色だからゴールドカードなんて呼ばれてるけどな?
 それを手にするのが夢なの」
 ふうん。
 にいなは不思議に言う。
「それが手に入ったらどうなるの?」
「自分の会社が持てる。
 資金もいまの会社が出してくれて、で、俺が設置した販売機の売り上げはずっと俺のもの。
 まあ、あれが第一号なんだけどな?」
 この前、にいなが購入した販売機を指差す。
「あれがヒロキの夢の第一歩なんだ?」
「まあ‥‥‥自慢にはならないけどな?
 にいなはなんであれやってるの?」
 少女はかなり考えていた。
「にいなは海洋学者になりたくてー‥‥‥」
 へえ、それも意外だ。
 ヒロキはその話に興味を覚えた。
「でも、大学に行くには、うーん。
 にいながしたいのは、潮流の研究なの。
 世界の海には巻き込まれたら逃げ出せない。
 そんな潮流がいくつかあって、それは日本海にもあるんだけど。
 その研究をしてる大学は日本には二つしかないの。
 どっちも国立で、倍率が高い」
「いまの学力じゃむずかしい?」
 コクン、と悲しそうに少女はうなづく。
「でも、それをやりたいの。
 なら、この河で似た調査をやって。
 そのデータを‥‥‥そういった高校生の科学研究発表の大会があるの。
 世界大会まであるけど、日本大会でも上位に残れればー」
「可能性がある、と?」
「うん。だから夏休みを使ってやろうかなって」
 それであんなに毎日、朝から晩まで粘ってたのか。
「夢を追い求めることは大事だ。
 かなわなくてもな。頑張れよ?」
 あ、美味しかったよ。
 ありがとう。
 そう言い残して、ヒロキは仕事に戻った。


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