少しだけ狂った世界線で僕らは愛を語らう

星ふくろう

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第二章

補整される世界線 3

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「あの‥‥‥なんで、秋津さんが高遠さんの家に?
 あ、そっか友達だからか」
 半ヘルの甘利佳南は何も知らないのかそう二人に質問する。
「あー‥‥‥その、急に押しかけてごめんなさい。
 友紀君、いる?」
 樹乃と七星の内心は、
(うわーめんどくせー女がきた)
(どーすんのさ、兄貴の女の手癖、こんなに悪かったの?)
(そんなのななせは知らない。
 でも、ここに住んですぐあれだから。
 その事実は推して知るべし‥‥‥)
(どゆこと!?)
(だからーじゅのさん‥‥‥。
 荒れた後の二人はすぐに寝てしまうでしょ。
 先に起きてまたななせがじゅのさん殴ったことに気づいて泣いてた時に優しくされたら‥‥‥)
(ふーん、じゃあ、もっと太いの。 
 この腕くらい突っ込んどけば言い訳ね?
 寂しさがまぎれるなら??? ねえ?)
「いや、それは虐待ですからー‥‥‥」
「は?!
 ぎゃく、なに??」
 あ、しまった。 
 ヒソヒソやってのがついつい。
 七星に樹乃がおバカ、そう叱りつける。
「あの、でー‥‥‥。
 友紀君は??」
 中ではあのバカ夫婦がイチャイチャしてるだろうし、自分たちはこれから出かけたい。
 実にタイミングの悪い登場の仕方だった。
「うーんー」
 樹乃が悩ましそうな声を上げる。
 その間に、七星は樹乃の胸ポケットから目的のものをそっと盗み出していた。
「まあ、仕方ないよ。
 樹乃は話聞いてあげたら?
 じゃねーななせはいきまーすー」
 と、スターターを押して飛び出していく。
「え、ちょっ、あんた首わ…‥‥。
 外されてるし、相変わらず逃げ足だけは早いんだから。
 まあ、いっか。三日したら戻るだろーし」
「あの、樹乃さんだったけ?
 それは・・・・・・?」
 聞きづらそうに、佳南が指差すそこには七星に巻いていた首輪と鎖の残りがーー
「へ?
 ああ、あのバカが勝手に逃げようとしたからじゃれてたの。
 で、友紀が何?
 あんた、遠矢狙いだったんじゃないの、甘利さん?」
 樹乃は相手が年配でも気に入らないと遠慮がない。少しだけ、ほんの少しだけだが‥‥‥
 とりあえず、中に入れてよ、とガレージを指差し、樹乃もバイクを中に戻す。
 せっかく、下であの二人が喧嘩を始めたころから荷造りをしたのに無意味になりかけた。
 そうぼやきながら、シャッターを自動で締めるボタンを押す。
 ああ、そういえばここ密室なんだ?
 ふと樹乃はその現実に気づく。
 友紀が七星を奪おうとしたなら、樹乃もしてみようかな?
 そんな悪戯心が出てきた。
「広い家なのね、友紀君、お金持ちなんだー‥‥‥」
「これは遠矢兄貴夫婦のもの。
 あたしと友紀は居候!」
 バタン、と本宅へと通じる半地下のガレージの扉を閉めて施錠する。
「え、なんで鍵‥‥‥??」
 ふーん、あたしよりは少し背が低いけど、まあ友紀好みだよねえ。
 胸もあるし、スタイル抜群。
 それでいて、清楚なお姉さん、か。
 なんでこんなんが友紀を好むんだか。
 秋穂といい、みんなあの甲斐性のない優しさと抑えれない暴力性の合間にある無責任な愛情にーー
 惹かれるんだろうなあ‥‥‥そこには、下心なんて無いからみんな騙される。
 馬鹿ばっかり。
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