殿下、あなたが借金のカタに売った女が本物の聖女みたいですよ?

星ふくろう

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秘密の聖女様、魔王に債権を売り渡す件 8

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「奥様、なんですかね、あれ!?」

 サーラが窓越しに外を見て叫び声を上げる。
 なによ、騒々しい。
 ハーミアはようやく暖かくなったわ、そう安堵しながら外を見てーー絶句した。

「馬じゃない?
 何よあれ‥‥‥まるで木馬が浮いているようなそんなものに誰もが乗り、そして移動している??」

 現代風に言えば、浮かぶバイクに乗って人々が移動しているようなものだ。
 そんな光景をいかに魔法技術が発達しているとはいえー‥‥‥
 初めて目の当たりにすれば、驚ろくのは当たり前だった。

「奥様ーー!!
 あれ、いいですね!
 この馬車よりも早いですよ!!」

 能天気なサーラは新しいもの好きだからその出会いに素直に喜んでいる。
 ハーミアの脳裏に浮かぶのはまったく真逆の光景だ。
 
「あなたは本当に気楽ねえ、サーラ?
 考えてもごらんなさいよ、あんな馬よりも早く、人よりも高く飛べる。
 そんなもので攻めて来られたらどうなると思ってるのよ??」

 あ‥‥‥っ。
 サーラは現実に引き戻された。
 仮に竜が一頭。
 天空から魔法で爆撃をするだけでも人類には脅威なのだ。 
 そこまでではなくてもあんなものが、『日常』、で使用されているということはつまり。

「軍事用にもっと高精度のものが用意されていてもおかしくはない、そう言われたのですね、奥様。
 でも、魔族は年々、その勢力を弱まらせてきたはずでは‥‥‥??」

「そうねえ?
 まあ、その答えももう少しすればでるんじゃない?
 魔族の生きる力の源は魔素で、魔素は自然界に溢れているはず。
 でも、どうかしらね?
 もし、どこかで誰かがそれを生み出していて、魔族がそれを源に生きて来たーー」

「サーラ、奥様はな?
 誰かがその生み出すものを止めてしまい、魔族という種族を滅ぼそうとしたのではないか。
 そう考えておられるのだ。
 そんな蛮行など、神の作られた世界の構造を壊しかねない。
 魔王様にお会いすれば、それはわかることだがな‥‥‥」

 グランはそうサーラがわからない部分を補助してやる。
 レベッカが面白そうに、後部座席にいる四人の拘束された武装神官を見やった。
 話せないように沈黙する魔法をかけられている彼ら。
 特にエミリオ皇太子の従姉妹である、シュネイル侯爵令嬢エリーゼ。
 彼女は自分の横にある窓から外の魔都を睨みつけていた。

「どうやら、その真実どころか、魔族の技術の革新すら面白くなさそうな方々もおられるようですね。
 ねえ、エリーゼ様?
 帝国の帝都が、大地母神が与えてくださる知識による多くの知恵がもしかしたら魔族よりーー」

 声が出せない分、エリーゼは肉体で怒りを表現していた。
 荒々しく、座る座席を蹴りつけている。
 人類至上主義の神官にしてみればーー

「エリーゼ様、仮にも皇族。
 しかも、大地母神の大神官様がそのような行為をなさるのはどうかと思いますが?」

 レベッカはさもおかしそうな顔をしてやる。
 多分、彼女はこう言いたいはずだ。

(ふざけないで!
 この裏切り者どもが!!
 竜王様を、竜神様をー‥‥‥愚弄する愚か者共が!!)

 と。
 やれやれ、とレベッカは頭を振る。
 竜王様がお怒りになる行為を、例えハーミアが竜族の王族の端くれにいて。
 自分たち竜がその護衛についているとはいえ‥‥‥許されるわけないじゃない、と。

「やめなさい、レベッカ。
 エリーゼ様は皇族の御方。
 からかうのは。
 エリーゼ様、あなた様には魔王様のお子様との婚姻をして頂きます。
 婚約者の隣国の王子には申し訳ないですがー‥‥‥。
 政治の道具として、魔族に仕えて頂きますよ。
 いいですね?」

 ハーミアはどこまでも冷酷にそう宣言した。
 エリーゼが舌を噛み切れないように拘束した魔法は彼女の尊厳を打ち砕いていく。
 一人静かに涙を流す公爵令嬢をハーミアはあくまで、もの、として見るようにしていた。

「これも魔族と帝国の為。
 まあ、エミリオ皇太子への恨みもありますけどね。
 そして、陛下への恨みも。
 お覚悟下さいね、エリーゼ様」

 ハーミアはふふっ、と笑ってそう言い放った。
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