殿下、あなたが借金のカタに売った女が本物の聖女みたいですよ?

星ふくろう

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秘密の聖女様、大公閣下と共謀する件 2

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「ふぬっ―――!!!」
 
 渾身の一撃がその痩躯から、最近、やせ衰えたと噂の四十代の肉体から相手へと解き放たれた。

「ぐうっ‥‥‥ほぉ――!!??」

 何故だ‥‥‥!!??
 何故、そんなに――強いっ!!!!????
 腹に大公が遠心力をつけて放った回転回し蹴りをその全身で受けとめ――
 刺客は宙を舞った‥‥‥
 可哀想に――その一撃の威力と重さ、回復までの時間を身をもって知っている大公やその周りを固めている連中はそう心で呟いていた。
 総勢、百人近い彼らはみな、大公を狙って夜襲をかけ、返り討ちにあった者ばかりだからだ。
 刺客の身体は素晴らしい勢いで宙を舞い、壁に激突して盛大ないい音を鳴らした。

「なんだ‥‥‥もう終わりか?
 我こそは、南の王国最強の刺客だのなんだのと威勢のいい言葉ばかりではないか‥‥‥」

 いまは軽い運動程度。
 そう思わせるような余裕の笑顔で、ザイール大公は残る数名の刺客を見渡した。
 その周りは子飼い?
 いや、返り討ちに会い、勝手に子分になった連中が固めていて逃げ場はない。
 彼等は焦りを隠せないでいた。

「くっー‥‥‥!!
 事前情報と違うではないか!! 
 何が老いぼれの腹ばかりた育ったブタ大公だ!?
 どこにそんな相手がいる‥‥‥」

 刺客の一人がそんな声を上げる。
 それは問いかけというよりは、悲鳴に近い叫び声だった。
 そして、周囲の子分たちがそれにうなづき――

「うんうん、俺も叫んだ、その言葉‥‥‥オヤジは強すぎるんだよな」

「そうそう、俺もだ。
 あの回し蹴りくらって三日はうなったからなあ‥‥‥」

「あら、でもわたしたちには優しかったわよ?
 ねえ?」

 子分を自称する中にいる数人の女殺し屋たちが、

「うん、優しかったよ。
 ボクは毒殺しようとしたんだけどねー‥‥‥見事に全部、胃の中に転送されたし、あはは――」

「あんたね、それは殺されかけたっていうのよ。
 まあ、それでも回復魔法をかけて助けられてるなんて、毒殺失敗、ね。
 わたしは間抜けにも、床に描かれた雷の紋章を踏んで感電‥‥‥気づくまでベッドにいたわ――」

「あ、それあたしもやられた。
 おまけにこの剣、四本とも叩き折られたのに新しいの下さるんだもの、旦那様、素敵すぎてー‥‥‥」

 と、うっとりとした視線を大公に向ける女性陣。
 男性陣はあからさまな、待遇に非難の視線を、『オヤジ』いや、組長などと呼び尊敬するザイール大公に向けた。
 旦那様、早くその無粋な連中を片付けて下さいまし。
 お茶とお菓子を御用意致しますわよ。
 そんな声や、がんばれーおじさま――!!
 格好いい!!!
 そんな黄色い歓声を背に、大公は早くこんかい、面倒だ。
 そう言う感じに、刺客たちにくいっ、くいっと人差し指で挑発をかけていた――
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