殿下、あなたが借金のカタに売った女が本物の聖女みたいですよ?

星ふくろう

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秘密の聖女様、大公閣下と共謀する件 15

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 そんな祖父の視線にハーミアは食い下がる。
 まるで、諦められないなにかがそこにある。
 そんな、勢いだった。

「なら、孫なんて立場を返上しますわ‥‥‥すべてが終われば。
 世界を守り、変革する力もありながら‥‥‥おじい様は、スィールズを。
 旦那様を救ってもくれず、御自分は分身をだしていればそれでご満足。
 しまいには、孫が懇願する助力すら足蹴にしてバカと言い張る始末。
 どこに愛情なんてあるのですか!?」

「愛情が欲しいのか?」

「え?!
 そ、それは――」

「愛情だけで言うならば、あの宮殿から出ることを禁じる。
 そういうしかないのだぞ、ハーミア?
 理解しているのかな?」

 ハーミアはサーラと共に、黙り込み、ただ下腹部を抑えてしまう。
 二人とも、そこに大好きな相手の愛情がまだある。
 そう、少し前までは錯覚していたからだ。 

「それは困ります‥‥‥。
 まだ、スィールズを助け出してない。
 帝国への恨みすら晴らせていない。
 あの人が、旦那様がもし、まだ生きていて。
 竜王様の厚い信認を得ていたとしてもー‥‥‥ハーミアはまだ、スィールズを愛しています」

「はあ‥‥‥兵器のように扱われながら、まだ愛を語るかその口は――」

「だって、だってー‥‥‥」

「だって、などと。
 言っただろう、孫よ。
 あの魔王の城で、竜神、竜王、それにスィールズからの。
 その爆弾の起爆命令を阻止したのは‥‥‥魔王なのだとまだわからんか?」

「スィールズが‥‥‥命じていた?
 それ、さっきも気になっていたの、おじい様。
 旦那様はもう意識はー!?」

 あくまで食い下がるハーミアの後ろから、その手を放させたのは誰でもないサーラだった。
 もうやめましょう、奥様。
 同年代の侍女は、すでに竜王への愛を諦めていた。
 そして、自分たちを同じように扱った、竜王と自分の主スィールズ。
 この二人にはもう、愛情などないのだと。
 そう悟ってもいたからだ。

「放しなさい、サーラ!!!」

「奥様、もういいでしょ?
 わたしたち、捨てられたんですよ。
 諦めませんか?
 都合よく殺そうとした相手を愛するなんて、そんな悲しいこと。
 もうやめましょう、奥様?」

 祖父では打ち崩せなかった心の壁を、長年側で親友として生きてきたサーラの言葉は易々と貫いた。
 捨てられたんですよ。
 その一言が、現実のものだと理解出来るまでハーミアは長い時間がかかる気がした。
 何より、この侍女が。
 いや、一度は殺しかけた親友がそこまで割り切れている事実が、ハーミアにはつらかった。
 自分は単なる、女の恨みを国王だという立場を利用して晴らそうとしていた。
 その現実は変わらないのだから。

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