殿下、あなたが借金のカタに売った女が本物の聖女みたいですよ?

星ふくろう

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秘密の聖女様、大公閣下と共謀する件 16

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 レグルスもまた、まだ食い下がるのか孫よ?
 そう呆れ果てていた。
 そろそろ、目を覚ましてくれないものかと祈りながら、孫の知りたいという過去を聞かせてやる。

「ハーミア。
 それほどに知りたいなら教えておこう。
 まず、大地母神の心はもうこの世のどこにも存在しておらん。
 竜神があの帝都の奥深くに眠る大地母神の肉体を欲するのは、単に懐かしいからではない。
 魔神が妻の氷の女王の意思を尊重し、その友でもあった大地母神の意思を尊重して蓋になったとは逆でな。
 竜神は、妻と共に永遠の眠りにつきたい。
 ただ、それだけを欲している。
 つまり、神としての大いなる感情などもうない。
 あれは単なる赤子の欲望が神になったようなものだ‥‥‥」

「あの――先々代様?
 奥様、もう意気消沈っていうか。
 自分の世界に閉じこもってますからわたしから聞いてもいいですか?」

 サーラはハーミアを抱きしめてレグルスに問いかける。
 この愚かな雷竜がなにを言いだすのか。
 レグルスはとりあえず、聞いてみることにした。

「ふん?
 言うてみよ、サーラ」

「はい、では質問なんですけど。
 竜神様は大地母神様の肉体が欲しくて、でもそれは帝都にあり。
 帝国は魔神様の力を大地母神様に転送することでその復活を目論んでいるんですよね?
 だから蓋の効力が弱まって、それを危惧した魔王様は二年前に進軍された。
 聞いていると、まるで竜神様は蓋を取り除いて、魔族を解放し、妻を取り戻したい。
 そう聞こえるんですけど、なら、そうなると帝国は真っ先に滅びますよね?
 なのに、どうして帝国は竜神様の肩を持って蓋をしている魔神様の力を弱らせ、魔王様と敵対するんですか?
 魔族ってそんなに優しい存在でしたっけ?
 何より、そうなった場合――」

 いまの竜族と人間族、もしかしたら地上の魔族も加わるかもしれない連合軍。
 それで、地下世界の魔族と戦えるんでしょうか?
 サーラのこの疑問は、古竜レグルスを唸らせた‥‥‥

「サーラ、お前はバカなのかそれとも演じているのかわからん時があるな?
 聞いたことはあるか?
 数百年前にアールディアと、あの鉱山を追われた魔王フェイブスタークが一戦を交えたことを。
 大地を割り、大河を生み出し、山脈すらも断ち切った。
 その結果、何が産まれた?」

 へ?
 は?
 サーラの脳裏に出てくるのは――

「まさかの、魔都グレインスケーフ?
 です、か?
 でもそうなると、竜王様と魔王様の共同事業。
 そんな話になりません?」

 まるで、竜王が棲み処を追われた魔族を助けたかのように聞こえなくもない。
 レグルスはにやりと笑って見せた。

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