3 / 150
第一章 婚約破棄と新たなる幸せ
第二話 大公家の晩餐会
しおりを挟む
当たり前のことですが、通常、貴族階級の令嬢と言うものは人前に出ません。
あくまで家に帰属し、家の為に尽くします。
家の発展のために尽くし、御主人様にお仕えすることを義務づけられます。
それが、貴族の令嬢というものです。
わたしにとってそれが常識でした。
少なくとも、あの夜までは。
数か月前。
百年戦争と呼ばれる長期間に渡る戦争を続けていた帝国と王国。
二つの大陸の覇者同士は、同じ神を崇めていました。
そして、第三勢力と呼ばれる枢軸連邦の仲介によって、戦争は終結します。
いまわたしの右手の薬指を飾っている指輪についている、紫色の美しい石。
膨大な魔力を秘めていて、魔法使いの原動力になる。
貴重なこの鉱石を、殿下は私の指にはめてくださいました。
「ユニス。もう大丈夫だよ。僕が誓おう、もう二度と君を不安にさせたりしない、と」
あの言葉にわたしは救われました。
そして、誓ったのです。
愚かな復讐よりも、もっと恐ろしい。
最高の幸せを手にしたその姿を見せつけてやろう、と。
あの、晩餐会の夜。
わたしに婚約破棄を叩きつけたムゲール王国フレゲード侯爵令息シルドとその妻。
わたしの実の妹エイシャに。
二週間前。
帝国領ハーベスト大公家王城で晩餐会が開かれました。
「お姉さま、皆様素晴らしい男性ばかりですね」
そう、のんびりとした口調で普段は口にできないスィーツを楽しんでいるのは、妹のエイシャ。
漆黒の髪に菫色の瞳。殿方の肩ほどにもない身長。白い肌。
あどけない笑顔と、のんびりとした雰囲気が男性を癒すその性格は、密やかに帝国の貴族子弟の間で噂になっていおり、年齢は十四歳。
すでに多くの有力貴族から求婚の申し込みがきておりました。
対してわたし。
ユニス・エシャーナ。
十七歳。婿取りをするには、少しばかり遅すぎる年齢です。
エイシャと違いお母さま譲りの赤毛に緑の瞳。南方貴族特有の褐色の肌。
この帝国では、蛮族とも呼ばれている南方貴族の血筋はあまり好まれません。
それが、帝国内で結婚適齢期と言われる十五歳を越えても、私に求婚者がいない理由です。
「今夜ですのね。お姉さまにもとうとうー‥‥‥」
そう、エイシャは言います。
わたしは待ち望んだ婚約が、求婚が来たのだと理解しました。
それは突然の出来事でした。
「喜べ、ユニス。お前にもとうとう、求婚者が現れたぞ」
そう、お父様は喜んで言って下さいました。
相手は仇敵の、ムゲール王国フレゲード侯爵令息シルド様。
「侯爵家の令息? 格上すぎはしませんか、お父様?」
貴族には階級というものがあります。
あまりにも格上過ぎる相手の家に嫁ぐには、まず、それに近い、もしくは同程度の貴族の養子になり、それから嫁ぐのが帝国内では常識でした。
「そうだな‥‥‥。私もそこに困っていたのだが」
「でも?」
「なんと、大公閣下がお前を養女にと、申し出て下さった」
大公閣下? 遠い親戚にあたる、帝国の要人。
宰相の職にあるハーベスト大公ユンベルト叔父様。
「叔父様がわざわざ、わたくしの為に、ですか、お父様?」
お父様はその返事の代わりに、わたしを抱きしめてくださいました。
褐色だの蛮族の娘だのと。
お母様が幼い頃に亡くなってから心の行き場を無くしていたわたしを。
ようやく受け止めて頂ける方に出会える。
あの時、私の胸はまだ見ない明るい未来に高鳴っていました。
あの結末を迎えるまでは。
あくまで家に帰属し、家の為に尽くします。
家の発展のために尽くし、御主人様にお仕えすることを義務づけられます。
それが、貴族の令嬢というものです。
わたしにとってそれが常識でした。
少なくとも、あの夜までは。
数か月前。
百年戦争と呼ばれる長期間に渡る戦争を続けていた帝国と王国。
二つの大陸の覇者同士は、同じ神を崇めていました。
そして、第三勢力と呼ばれる枢軸連邦の仲介によって、戦争は終結します。
いまわたしの右手の薬指を飾っている指輪についている、紫色の美しい石。
膨大な魔力を秘めていて、魔法使いの原動力になる。
貴重なこの鉱石を、殿下は私の指にはめてくださいました。
「ユニス。もう大丈夫だよ。僕が誓おう、もう二度と君を不安にさせたりしない、と」
あの言葉にわたしは救われました。
そして、誓ったのです。
愚かな復讐よりも、もっと恐ろしい。
最高の幸せを手にしたその姿を見せつけてやろう、と。
あの、晩餐会の夜。
わたしに婚約破棄を叩きつけたムゲール王国フレゲード侯爵令息シルドとその妻。
わたしの実の妹エイシャに。
二週間前。
帝国領ハーベスト大公家王城で晩餐会が開かれました。
「お姉さま、皆様素晴らしい男性ばかりですね」
そう、のんびりとした口調で普段は口にできないスィーツを楽しんでいるのは、妹のエイシャ。
漆黒の髪に菫色の瞳。殿方の肩ほどにもない身長。白い肌。
あどけない笑顔と、のんびりとした雰囲気が男性を癒すその性格は、密やかに帝国の貴族子弟の間で噂になっていおり、年齢は十四歳。
すでに多くの有力貴族から求婚の申し込みがきておりました。
対してわたし。
ユニス・エシャーナ。
十七歳。婿取りをするには、少しばかり遅すぎる年齢です。
エイシャと違いお母さま譲りの赤毛に緑の瞳。南方貴族特有の褐色の肌。
この帝国では、蛮族とも呼ばれている南方貴族の血筋はあまり好まれません。
それが、帝国内で結婚適齢期と言われる十五歳を越えても、私に求婚者がいない理由です。
「今夜ですのね。お姉さまにもとうとうー‥‥‥」
そう、エイシャは言います。
わたしは待ち望んだ婚約が、求婚が来たのだと理解しました。
それは突然の出来事でした。
「喜べ、ユニス。お前にもとうとう、求婚者が現れたぞ」
そう、お父様は喜んで言って下さいました。
相手は仇敵の、ムゲール王国フレゲード侯爵令息シルド様。
「侯爵家の令息? 格上すぎはしませんか、お父様?」
貴族には階級というものがあります。
あまりにも格上過ぎる相手の家に嫁ぐには、まず、それに近い、もしくは同程度の貴族の養子になり、それから嫁ぐのが帝国内では常識でした。
「そうだな‥‥‥。私もそこに困っていたのだが」
「でも?」
「なんと、大公閣下がお前を養女にと、申し出て下さった」
大公閣下? 遠い親戚にあたる、帝国の要人。
宰相の職にあるハーベスト大公ユンベルト叔父様。
「叔父様がわざわざ、わたくしの為に、ですか、お父様?」
お父様はその返事の代わりに、わたしを抱きしめてくださいました。
褐色だの蛮族の娘だのと。
お母様が幼い頃に亡くなってから心の行き場を無くしていたわたしを。
ようやく受け止めて頂ける方に出会える。
あの時、私の胸はまだ見ない明るい未来に高鳴っていました。
あの結末を迎えるまでは。
0
あなたにおすすめの小説
結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。
佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。
結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。
アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。
アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。
「犯人は追放!」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で“価値の高い女性”だった
佐藤 美奈
恋愛
セリーヌ・エレガント公爵令嬢とフレッド・ユーステルム王太子殿下は婚約成立を祝した。
その数週間後、ヴァレンティノ王立学園50周年の創立記念パーティー会場で、信じられない事態が起こった。
フレッド殿下がセリーヌ令嬢に婚約破棄を宣言した。様々な分野で活躍する著名な招待客たちは、激しい動揺と衝撃を受けてざわつき始めて、人々の目が一斉に注がれる。
フレッドの横にはステファニー男爵令嬢がいた。二人は恋人のような雰囲気を醸し出す。ステファニーは少し前に正式に聖女に選ばれた女性であった。
ステファニーの策略でセリーヌは罪を被せられてしまう。信じていた幼馴染のアランからも冷たい視線を向けられる。
セリーヌはいわれのない無実の罪で国を追放された。悔しくてたまりませんでした。だが彼女には秘められた能力があって、それは聖女の力をはるかに上回るものであった。
彼女はヴァレンティノ王国にとって絶対的に必要で貴重な女性でした。セリーヌがいなくなるとステファニーは聖女の力を失って、国は急速に衰退へと向かう事となる……。
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
田舎娘をバカにした令嬢の末路
冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。
それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。
――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。
田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。
【完結】濡れ衣聖女はもう戻らない 〜ホワイトな宮廷ギルドで努力の成果が実りました
冬月光輝
恋愛
代々魔術師の名家であるローエルシュタイン侯爵家は二人の聖女を輩出した。
一人は幼き頃より神童と呼ばれた天才で、史上最年少で聖女の称号を得たエキドナ。
もう一人はエキドナの姉で、妹に遅れをとること五年目にしてようやく聖女になれた努力家、ルシリア。
ルシリアは魔力の量も生まれつき、妹のエキドナの十分の一以下でローエルシュタインの落ちこぼれだと蔑まれていた。
しかし彼女は努力を惜しまず、魔力不足を補う方法をいくつも生み出し、教会から聖女だと認められるに至ったのである。
エキドナは目立ちたがりで、国に一人しかいなかった聖女に姉がなることを良しとしなかった。
そこで、自らの家宝の杖を壊し、その罪を姉になすりつけ、彼女を実家から追放させた。
「無駄な努力」だと勝ち誇った顔のエキドナに嘲り笑われたルシリアは失意のまま隣国へと足を運ぶ。
エキドナは知らなかった。魔物が増えた昨今、彼女の働きだけでは不足だと教会にみなされて、姉が聖女になったことを。
ルシリアは隣国で偶然再会した王太子、アークハルトにその力を認められ、宮廷ギルド入りを勧められ、宮仕えとしての第二の人生を送ることとなる。
※旧タイトル『妹が神童だと呼ばれていた聖女、「無駄な努力」だと言われ追放される〜「努力は才能を凌駕する」と隣国の宮廷ギルドで証明したので、もう戻りません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる