突然ですが、侯爵令息から婚約破棄された私は、皇太子殿下の求婚を受けることにしました!

星ふくろう

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第一章 婚約破棄と新たなる幸せ

第六話 皇太子殿下の恩寵 

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 ああ。
 と、一声。
 男性の声がわたしの耳に届きました。
「そうでしたね。
 それは、帝国でも王国でも変わらぬ不文律。
 ならば‥‥‥おい、侯爵殿」
 そこにシルド様が引き出されたのは、帝国の貴族令息の御一人。
 確かお名前はー???
「彼は、我が王国でも指折りの名家、エルムンド侯爵家の当主殿だ」
 ああ、そうでした。
 年の頃は二十代前半のシルド様よりも年長。
 三十代半ばを過ぎた頃合いの武官風の男性です。
「シルド様、これはなりません‥‥‥」
 そう。
 エルムンド侯はまだ、常識の有られる方の様でした。
 静かに諭すように。
 シルド様を導こうとされていました。
 しかし、シルド様の情熱的な瞳は、エイシャの菫色の瞳から離れることはありませんでした。

「侯、どうだ。
 ここは俺に貸しを作ると思ってだなーー」
 そのような言葉がわたしの耳を通じて、心を鞭打ちます。
 シルド様に一時とはいえ。
 一瞬とはいえ、捧げようと思った淡い恋心を。
 その言葉は踏みにじっていくのです。
 そして侯爵様は立場上、抗うことが出来ない様子。
 仕方ないといったように渋々と返事をなさいました。
「わかりました、シルド様」
 どんな交換条件を、シルド様がエルムンド侯に持ちかけられたのかは、わたしにはわかりません。
 しかし、エイシャをエルムンド侯の養女に迎える。
 その件を、承諾されたことだけは、わたしにも理解できました。
 わたしはたまらず、叫ぶように。
 いいえ、力なく。叫びます。
 その時、わたしは知りませんでした。

 叔父様が。
 ハーベスト大公ユンベルト義父上様が。
 わたしの背後にやってきたことを。
「シルド様、なぜそのような無体なことをなさるのですか‥‥‥」
 しかし、シルド様の態度は変わりません。
「すまないユニス。君よりも‥‥‥エイシャが美しい!!!」
 エイシャが美しい!?
 あのわたしを褒めて下さったあなた様はどこへーー!?
 わたしの心の淡い思いは、この瞬間から憎しみへと姿を変えました。
 そして、シルド様はわたしの後ろへと。
 そう、ハーベスト大公に向かって叫んだのです。
「いかがかな、大公殿!
 この婚約、王国と帝国との違いはあれ、もともとは公爵家と侯爵家のもの。
 ならば、妹君を我が友人の家に迎えて侯爵令嬢とし、新たに婚約しても‥‥‥
 多少の序列に差異はあるが‥‥‥何ら問題はないだろう!?」
 ‥‥‥と。

 このあまりにも恥知らずな行為に、ハーベスト大公は怒りを隠しきれませんでした。
 しかし、この晩餐会のホストとして。
 義父上様はその怒りを、しかも、国賓として招待された相手に向けることはできないでしょう。
 この場を収まりがつくような方策など、愚鈍なわたしには想像もつきませんでした。
「義父上様‥‥‥」
 わたしは何とか、この場を取り繕う方法を考えます。
 しかし、義父上様は大丈夫だよ、ユニス。
 と優しくわたしを止められます。
「フレゲード侯殿。
 婚約破棄を申されたこと、また、この場での新たな求婚をされるなど。
 ご酔狂で済まされるには、いささか、余興が過ぎませんかな?
 それとも、それが王国の矜持と申されますか?
 このユニスは、我が愛娘。
 何が御不快か、お聞かせ願いたいものだ」
 静かに。
 しかし、帝国宰相としての顔を以って。
 義父上様はシルド様に迫ります。
 ですが、シルド様は特に意に介することはなくーー
「酔狂ではりません、大公殿。
 わたしは、これほどにも、酔ってなどおりませぬゆえーー」
 そう、申されたのです。
 これは、明らかな越権行為。
 王国と帝国の絆を割くかもしれない、危険な情事。
 一つ、ことを間違えればーー
 また、百年戦争の再発ともなりかねません。
 しかしーー
 ここに、全てを収められるかたがたが参られました。

 そう。
 王国側の王族のかたがたと、帝国側の皇族のかたがたです。
 両者はどうやら、上階からこの騒動を眺めていらしたらしく。
 その意見もまとめられているようでした。
 そしてーー
 あの御方が現れたのです。

 
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