突然ですが、侯爵令息から婚約破棄された私は、皇太子殿下の求婚を受けることにしました!

星ふくろう

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第一章 婚約破棄と新たなる幸せ

第十二話 晴れ行く恨み

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「で、どうなのだ、シェイルズ。

 父上はどのように?」

 殿下の問いかけに、ルサージュ侯は大きくため息をつかれます。

「いいか、イズバイア。

 騎士団見習いからだから、もう10年近い仲だから言わせてもらうがな。

 あのバカ侯爵の誰だーー

 ああ、そうだ、フレゲード侯だったな。

 あれのふざけた酔狂のために、帝国をかけるような真似はーー!!」

 やはり、そうでした。

 周囲の方々は、殿下の判断をよしとはされていないご様子。
 
 わたしは、己の不始末を詫びます。

「大変申し訳ございません。

 ルサージュ侯。すべてはあの場を諫めれなかったこの、ユニスの失態でございます‥‥‥」

 深々とわたしは罰を受ける罪人のように床に膝をつき、非礼を詫びました。

 しかし、これはルサージュ侯には迷惑だったようで、すぐに立たされてしまいます。

「ユニス公女様。

 あなたは今は格上の御方なのです。

 格下の私に膝を折る等、もってのほか。

 早く、伯爵令嬢から大公家公女としての自覚をもっていただかなくてはーー」

 と、呆れるように諭されます。

「はいー‥‥‥」

 返す言葉がありません。

 身分・格式。それがこれほど難しいとは。

 世間知らずのわたしには、まだまだ不勉強なことばかりです。

「そうだ、イズバイア。

 皇帝陛下は笑っておられたぞ。

 四大公家のうち、二家との大きな繋がりができた、よくやった、とな」

 まったく。親子揃って大胆なかたがただ。

 そうルサージュ侯はぼやかれます。

 多分、戦場でもこの調子なのでしょう。

 殿下は本当に、周りの人々に恵まれていらっしゃいます。

「まあ、皇帝陛下がそうおっしゃられたのならばーー

 遠慮はいらんな」

 そう、殿下は呟かれました。

 遠慮はいらない?

 第二幕を上げる言われたあの宣言といい。

 殿下‥‥‥なにを、お考えなのですか?

「シェイルズ、あちら側はどうお答えだ?」

 殿下はなぜか、わたしを会場から見えないようにその御姿で隠すようになさいます。

 この身長がもう少し低ければーー

 殿方にこのようなお気遣いをさせることもなかったのに。

 少しだけ、おのれの長身をうらめしく思いました。

「そうだな。

 バカはバカなりに、武勲を上げているようだ。

 銀鎖の影、という名を知っているか、イズバイア?」

 あれ?

 とわたしは不思議に思いました。

 なぜ、ルサージュ侯は殿下、とお呼びになられないのかと。

 貴族の礼儀作法ではーー

 あまりにも無礼な行為‥‥‥

「銀鎖の影、か。

 エベルング大陸の中間平野を主に守っている騎士団だったな」

「ああ、名ばかりとはいえ侯爵の令息だ。

 そこの第三師団長だと、さ。

 配下の兵力は約三千」

「まあまあ、だな。

 さて、それを補佐すべき人物はーー」

 と、殿下の視線は、まだ多くの令息令嬢に囲まれたシルド様とエイシャに。

「いない、か」

「同じ銀鎖の影の第二師団。

 そこを率いるエルムンド侯ーー」

 と、ルサージュ侯はわたしを見られます。

「ユニス様の妹君を養女に迎えることを承知なされたあの御方は。

 元は男爵だったようだ。

 たたき上げの武人、といった感だな」

 ほう、と殿下は面白そうに言われます。

「王国も、無能ばかりではない、ということだな。

 格上の第二師団をエルムンド侯に与えることで、あのバカ息子の抑止力に、か」

「殿下ー‥‥‥」

「何かな、ユニス?」

 わたしはつい、口出しをーーそう、あの言葉。

「そのバカ息子を連呼されますとー……」

「心が多少は晴れるだろう?

 我が未来の妃殿」

 
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