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第一章 婚約破棄と新たなる幸せ
第十一話 帝国の若き二頭の鷹
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もしーー
殿下の行く末に、今夜のことが。
何かの妨げになるようならば、この命を捧げることを。
いま決めなければ。
「ユニス。
君は考えすぎだ。
兄上は、帝位にご興味がないのだよ」
そんな皇室内のことを軽々と、殿下は口にされます。
「そなたの母君の御出自であられる、南方貴族の女性にいたくご執心でな。
まあ、恋仲というものは国も身分も放り出させるらしい。
すでに帝位相続を放棄されて、南方貴族のベシケア大公家に婿入りが決まっているのだ」
驚きでした。
「まさか、そのような‥‥‥
第一皇太子、いえ第一皇子の方がーー」
「まあ、そういうわけなのだ。
だから、父上ももう、息子たちにはあまりとやかく言われないのだよ。
いまは、帝国の足元を固め、神聖ムゲール王国と対等に渡り合いながら、枢軸連邦の干渉をさけーー
と、まあ。
そういう中での、あのバカ息子の。
誰だったかーー」
「フレゲード侯爵家第三令息シルド様、ですか?」
バカ息子。
殿下がその言葉を口になされる度に、わたしの心はすこしばかり晴れていきます。
でも、それはここでの。
二人だけの秘密の会話だということは、ある意味、悪戯をしているようで刺激的でした。
「殿下ーー
バカ息子だなんてー」
フフフっとわたしは笑ってしまいます。
このテラスには殿下とわたしの二人だけ。
殿下は入り口を背にされており後ろは見えません。
わたしは、生来の背の高さに加えて、高いヒールを履いていたため、殿下とほぼ同じ目線になっています。
その視界の影に、一人の男性が入り口から入って来られるのが見えました。
「殿下、あの御方は?」
と、私は黒髪の鋭い眼をされた御仁をがいらしたことを殿下にお伝えします。
薄い暗がりで最初は良く見えなかったその方はーー
「来たか、シェイルズ」
と、殿下がお呼びになられたその御方は、テラスに差し込む灯りの中で殿下が着ていらっしゃる礼服に肩から掛けられた、帝国正規軍の紋章と、同じものを掛けられていらっしゃいました。
わたしの乏しい知識にあるそれは、帝国騎士団の一つ、「黒き牙」の紋章。
そして、青いその上着は候爵家以上の貴族に許された正装衣。
「ユニス。
紹介しよう、私の右腕。いや、悪友というべきか。
なあ、ルサージュ侯」
と、そばに来られた殿下と背丈のあまり違わない偉丈夫が困った顔をされます。
「ハーベスト大公家第一公女ユニス様。
ルサージュ侯家第三令息グレアム・シェイルズ・ルサージュと申します。
俺を悪友と呼ぶのはやめろ、イズバイア」
イズバイア。
それは、殿下のファーストネーム。
余程親しい相手のみに、呼ぶことを許されるであろう名前。
イズバイア様。
また一つ、殿下のことを知ることができました。
「ルサージュ侯、今宵は素晴らしき出会いであることを共にしたいと願います。
ハーベスト大公家第一公女ユニス・ニアム・ハーベストと申します。
以後、お見知りおきをーー」
このお二人と共にいれば、もっと殿下のことを深く知ることができる。
わたしはそう思いました。
ただ、一つ。
ルサージュ侯には他の殿方にはない、特徴が一つあります。
それは、左目についた大きな刀傷。
片目。隻眼の黒き鷹。
ああ、そうだ。と、わたしは思い出しました。
帝国には二頭の勇猛な鷹がいる。
黒い牙をもち、白と黒に別れた強大な獣。
それはこの方々だったのだと。
殿下の行く末に、今夜のことが。
何かの妨げになるようならば、この命を捧げることを。
いま決めなければ。
「ユニス。
君は考えすぎだ。
兄上は、帝位にご興味がないのだよ」
そんな皇室内のことを軽々と、殿下は口にされます。
「そなたの母君の御出自であられる、南方貴族の女性にいたくご執心でな。
まあ、恋仲というものは国も身分も放り出させるらしい。
すでに帝位相続を放棄されて、南方貴族のベシケア大公家に婿入りが決まっているのだ」
驚きでした。
「まさか、そのような‥‥‥
第一皇太子、いえ第一皇子の方がーー」
「まあ、そういうわけなのだ。
だから、父上ももう、息子たちにはあまりとやかく言われないのだよ。
いまは、帝国の足元を固め、神聖ムゲール王国と対等に渡り合いながら、枢軸連邦の干渉をさけーー
と、まあ。
そういう中での、あのバカ息子の。
誰だったかーー」
「フレゲード侯爵家第三令息シルド様、ですか?」
バカ息子。
殿下がその言葉を口になされる度に、わたしの心はすこしばかり晴れていきます。
でも、それはここでの。
二人だけの秘密の会話だということは、ある意味、悪戯をしているようで刺激的でした。
「殿下ーー
バカ息子だなんてー」
フフフっとわたしは笑ってしまいます。
このテラスには殿下とわたしの二人だけ。
殿下は入り口を背にされており後ろは見えません。
わたしは、生来の背の高さに加えて、高いヒールを履いていたため、殿下とほぼ同じ目線になっています。
その視界の影に、一人の男性が入り口から入って来られるのが見えました。
「殿下、あの御方は?」
と、私は黒髪の鋭い眼をされた御仁をがいらしたことを殿下にお伝えします。
薄い暗がりで最初は良く見えなかったその方はーー
「来たか、シェイルズ」
と、殿下がお呼びになられたその御方は、テラスに差し込む灯りの中で殿下が着ていらっしゃる礼服に肩から掛けられた、帝国正規軍の紋章と、同じものを掛けられていらっしゃいました。
わたしの乏しい知識にあるそれは、帝国騎士団の一つ、「黒き牙」の紋章。
そして、青いその上着は候爵家以上の貴族に許された正装衣。
「ユニス。
紹介しよう、私の右腕。いや、悪友というべきか。
なあ、ルサージュ侯」
と、そばに来られた殿下と背丈のあまり違わない偉丈夫が困った顔をされます。
「ハーベスト大公家第一公女ユニス様。
ルサージュ侯家第三令息グレアム・シェイルズ・ルサージュと申します。
俺を悪友と呼ぶのはやめろ、イズバイア」
イズバイア。
それは、殿下のファーストネーム。
余程親しい相手のみに、呼ぶことを許されるであろう名前。
イズバイア様。
また一つ、殿下のことを知ることができました。
「ルサージュ侯、今宵は素晴らしき出会いであることを共にしたいと願います。
ハーベスト大公家第一公女ユニス・ニアム・ハーベストと申します。
以後、お見知りおきをーー」
このお二人と共にいれば、もっと殿下のことを深く知ることができる。
わたしはそう思いました。
ただ、一つ。
ルサージュ侯には他の殿方にはない、特徴が一つあります。
それは、左目についた大きな刀傷。
片目。隻眼の黒き鷹。
ああ、そうだ。と、わたしは思い出しました。
帝国には二頭の勇猛な鷹がいる。
黒い牙をもち、白と黒に別れた強大な獣。
それはこの方々だったのだと。
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