突然ですが、侯爵令息から婚約破棄された私は、皇太子殿下の求婚を受けることにしました!

星ふくろう

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第一章 婚約破棄と新たなる幸せ

第十四話 黒き鷹の智謀 

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「えーー???」

 そう、殿下は軽々とわたしを抱えあげられるとテラスから外へとーー

 放り出された、はずでした。

「-‥‥‥!!!!」

 足元が、支えるものがいきなりなくなった感触に恐怖を覚えーー

 わたしは悲鳴を、声をあげることすらできずに眼を閉じてしまいます。

 しかし‥‥‥

「ユニス、眼を開けてごらん」

 そう、優しいお声が。

 殿下の声が耳元で、聞こえました。

 落下していくはずのわたしの身体は、まるで魔法にかかったかのようにーー

「え……浮いてーー???」

 それは本当にほんとうに不思議な体験。

 なにも支えのないところに、自分がいるという恐怖と、それ以上の大きな安心感。

 その二つの思いに、一瞬ですが心が苦しくなります。

「大丈夫だ、ユニス。

 まだ、落ちるにはすこしばかり、はやいのでな」

 それを聞いてわたしは理解しました。

 殿下は、ルサージュ侯が配置されたというかたがた。

 たぶん、殿下の騎士団、黒き牙のかたがたが何かを策謀。

 いえ、策謀というのは表現がよくありません、智謀をなさったのでしょう。

 あのシルド様とエイシャにーー

 一矢報いれる何かを。

「では、我が未来の妻殿。

 しばし、そのまま空中遊泳を楽しんでおいて頂けるかな?」

 それはーーどういう意味でしょう?

 わたしがこのまま大河に身を投じて、殿下が救いに来られる。

 そういった話のようにわたしは考えておりました。

 しかし、殿下とルサージュ侯は少しばかり違う智謀を謀られた(はかられた)ご様子。

「は、はいー‥‥‥殿下」

 と、この時のわたしにはそうお答えするしかできませんでした。

「さて、さきほど言ったようにこのテラスの光景は、私がユニス、君に跪いたままだがーー

 いつまでもそうはしておれんのでな。

 少しばかり、時を動かそう」

 と、殿下はおっしゃると、なにやらーーこぶし大の宝玉のような、でもそれは石ではなく。

 まるで光が固まったようなーー

 そんなものを片手に、作りだされます。

「見えるかな?

 これは、中においてきたこの球のもう片割れが映したものを見せる魔法でな。

 まあ、偵察などに使われるが、室内の映像だ」

「はいー‥‥‥そうですね、殿下ーー」

 初めて目にする魔法、いえ、魔導というのでしょうか?

 自然では起こりえない奇跡をその場に起こす、神秘の技法。

 それをわたしは、いま見ているのです。

 そして、体感している。

 これはとても刺激的で、とても興味深いものでした。

「実はね、ユニス。

 大変もうしわけないのだが、エシャーナ伯にはーー」

「お父様に、なにか‥‥‥!?」

 ああ、いや、と殿下はわたしの言葉を遮られます。

「エシャーナ伯には何もない。

 また、何も非はないと。

 決して、早まった真似をせぬようにと、お願いしたところだ。

 この場に、いらしておいでたからね」

 殿下がそういうと、大広間の二階。

 神聖ムゲール王国の王族のかたがたの一部が階下を見られている横で。

 真剣にことの成行きを見守っていられるお父様の御姿が。

「やはりー‥‥‥お怒りですね、お父様ーー」

「まあ、この場では、な。

 そしてそろそろ行かれる頃だ」

 行かれる?

 お父様がどちらに???

 球が映し出すお父様はこれまで見たことのない。

 屋敷では決して、見せられることのなかった帝国の武官としてのお顔をしていました。

 階段を伯爵たる威厳を失わず、静かに、そして素早く。

 多くの帝国や王国の令息令嬢の壁をすりぬけられーー

 新たな幸せを手にして喜びの絶えない実妹のエイシャと。

 場をわきまえず、自宅で横柄にふるまうようなシルド様。

 そして、エイシャを半ば押し付けられたエルムンド侯。

 その御三方にお父様は向かって行かれます。

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