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第一章 婚約破棄と新たなる幸せ
第十五話 廃棄された伯爵令嬢エイシャ
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エルムンド侯にはある意味、申し訳なさを感じてしまいます。
あの二人の愚か者の責任の一端を、押しつけられたのですからーー
「お父様、何をなさるおつもりでしょうか?」
殿下は重苦しく、静かにおっしゃいます。
「エイシャ殿のー‥‥‥廃嫡(はいちゃく)だ、ユニス」
廃嫡(はいちゃく)。
それはつまり、エイシャが伯爵の人間でなくなるということ。
貴族ではなく、平民か、もしくはそれ以下のーー
「ふっー…‥‥」
それは殿下にまで届いたかどうかはわかりません。
でも、わたしの耳には、確かに響きました。
心の中に渦巻いていた、怒り、憎悪、妬み、そして復讐心。
その醜いものがすべて、一瞬だけ。
小さな笑い声となって、出てしまいました。
殿下は言われました、復讐は醜いものではないと。
ですが、わたしには、これは二度と表に出さない感情として。
代わりに、殿下と同じく、公人としての仮面をかぶりーー
必要ならば冷酷と叫ばれても毅然とそれを成そうと、心に命じたのです。
大広間ではお父様が、エイシャに向かわていきます。
そして、一閃。
それは父親としての最後の優しさだったのかもしれません。
革手袋をその指先にもたれて、エイシャの頬を大きくはたかれますーー
大広間にはその行為に、どよめきが起こります。
エイシャはよろめき、シルド様がそれを受けとめーーお父様に抗議の声を上げたよう。
その大声は場内より離れたこのテラスまで、届いてきました。
「何をなさるエシャーナ伯!!!
ご息女にかのような公然の場で!?
ここがどこかをお忘れか!??」
その言葉に、シルド様にしがみつくエイシャ。
ああ、愚かなわたしの妹。
まだ自分の周りしか見えていないーー
そしてお父様の声は凛として、力強く、場内に静かに響きます。
「フレゲード侯爵令息シルド殿。
それはこちらの言いたい言葉ですぞ。我が娘、ユニスが御気に召さないとあらば、まず両国を通して婚約の辞退をなさるのが慣例というもの」
お父様ーーこれほどまでにお怒りのご様子を、わたしは初めて目にしました。
「しっ、しかしっ!?
破棄を受け入れ、新たな申し入れを受けられたのは、そちらの令嬢がたではありませぬか!?」
と、シルド様の怒鳴り声がまた場内に響きます。
「呆れたバカ息子だな」
殿下とルサージュ侯がその光景を見ながら笑われてーー
わたしもついつい、微笑んでしまします。
「令嬢がた?
はて、当家にはいま嫡子はおりませぬがなーー」
と、お父様。
その発言に、わたしとエイシャは、唖然となってしまいます。
「なっ、なにを言われるか、確かに先程ーー
婚約を申し込んだ折にーーなあ、そうであろう、エイシャ殿!?」
と、シルド様はエイシャを振り返りみられますが。
エイシャはことの成行きが理解できていない様子。
養父となられたエルムンド侯は黙ってお父様とシルド様を見ていらっしゃいます。
「あいにくながら、当家には大公閣下のご息女になられた、ユニス様がいらっしゃったのみ。
エイシャー……ああ、そうですな。
確かにおりましたな」
そう言われて、ほっとした表情をするエイシャとシルド様。
しかし、まだエルムンド侯のお顔は険しいままです。
「おお、やはり!!!
エシャーナ伯の思い違いであらせられたか!!!」
そう叫ぶシルド様。
しかし、お父様は冷たく言い放たれました。
「姉の婚約者を奪うようなやからを、当家では嫡子と認めるわけにはいきませんのでな。
すでに、廃嫡の義を、皇帝陛下に願いでた次第ーー」
と、シルド様の顔が青ざめます。
「ま、まさかーー
では、エイシャ殿の貴族籍はもう、帝国にはないー‥‥‥と!?」
あの二人の愚か者の責任の一端を、押しつけられたのですからーー
「お父様、何をなさるおつもりでしょうか?」
殿下は重苦しく、静かにおっしゃいます。
「エイシャ殿のー‥‥‥廃嫡(はいちゃく)だ、ユニス」
廃嫡(はいちゃく)。
それはつまり、エイシャが伯爵の人間でなくなるということ。
貴族ではなく、平民か、もしくはそれ以下のーー
「ふっー…‥‥」
それは殿下にまで届いたかどうかはわかりません。
でも、わたしの耳には、確かに響きました。
心の中に渦巻いていた、怒り、憎悪、妬み、そして復讐心。
その醜いものがすべて、一瞬だけ。
小さな笑い声となって、出てしまいました。
殿下は言われました、復讐は醜いものではないと。
ですが、わたしには、これは二度と表に出さない感情として。
代わりに、殿下と同じく、公人としての仮面をかぶりーー
必要ならば冷酷と叫ばれても毅然とそれを成そうと、心に命じたのです。
大広間ではお父様が、エイシャに向かわていきます。
そして、一閃。
それは父親としての最後の優しさだったのかもしれません。
革手袋をその指先にもたれて、エイシャの頬を大きくはたかれますーー
大広間にはその行為に、どよめきが起こります。
エイシャはよろめき、シルド様がそれを受けとめーーお父様に抗議の声を上げたよう。
その大声は場内より離れたこのテラスまで、届いてきました。
「何をなさるエシャーナ伯!!!
ご息女にかのような公然の場で!?
ここがどこかをお忘れか!??」
その言葉に、シルド様にしがみつくエイシャ。
ああ、愚かなわたしの妹。
まだ自分の周りしか見えていないーー
そしてお父様の声は凛として、力強く、場内に静かに響きます。
「フレゲード侯爵令息シルド殿。
それはこちらの言いたい言葉ですぞ。我が娘、ユニスが御気に召さないとあらば、まず両国を通して婚約の辞退をなさるのが慣例というもの」
お父様ーーこれほどまでにお怒りのご様子を、わたしは初めて目にしました。
「しっ、しかしっ!?
破棄を受け入れ、新たな申し入れを受けられたのは、そちらの令嬢がたではありませぬか!?」
と、シルド様の怒鳴り声がまた場内に響きます。
「呆れたバカ息子だな」
殿下とルサージュ侯がその光景を見ながら笑われてーー
わたしもついつい、微笑んでしまします。
「令嬢がた?
はて、当家にはいま嫡子はおりませぬがなーー」
と、お父様。
その発言に、わたしとエイシャは、唖然となってしまいます。
「なっ、なにを言われるか、確かに先程ーー
婚約を申し込んだ折にーーなあ、そうであろう、エイシャ殿!?」
と、シルド様はエイシャを振り返りみられますが。
エイシャはことの成行きが理解できていない様子。
養父となられたエルムンド侯は黙ってお父様とシルド様を見ていらっしゃいます。
「あいにくながら、当家には大公閣下のご息女になられた、ユニス様がいらっしゃったのみ。
エイシャー……ああ、そうですな。
確かにおりましたな」
そう言われて、ほっとした表情をするエイシャとシルド様。
しかし、まだエルムンド侯のお顔は険しいままです。
「おお、やはり!!!
エシャーナ伯の思い違いであらせられたか!!!」
そう叫ぶシルド様。
しかし、お父様は冷たく言い放たれました。
「姉の婚約者を奪うようなやからを、当家では嫡子と認めるわけにはいきませんのでな。
すでに、廃嫡の義を、皇帝陛下に願いでた次第ーー」
と、シルド様の顔が青ざめます。
「ま、まさかーー
では、エイシャ殿の貴族籍はもう、帝国にはないー‥‥‥と!?」
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