突然ですが、侯爵令息から婚約破棄された私は、皇太子殿下の求婚を受けることにしました!

星ふくろう

文字の大きさ
16 / 150
第一章 婚約破棄と新たなる幸せ

第十五話 廃棄された伯爵令嬢エイシャ

しおりを挟む
 エルムンド侯にはある意味、申し訳なさを感じてしまいます。

 あの二人の愚か者の責任の一端を、押しつけられたのですからーー

「お父様、何をなさるおつもりでしょうか?」

 殿下は重苦しく、静かにおっしゃいます。

「エイシャ殿のー‥‥‥廃嫡(はいちゃく)だ、ユニス」

 廃嫡(はいちゃく)。

 それはつまり、エイシャが伯爵の人間でなくなるということ。

 貴族ではなく、平民か、もしくはそれ以下のーー

「ふっー…‥‥」

 それは殿下にまで届いたかどうかはわかりません。

 でも、わたしの耳には、確かに響きました。

 心の中に渦巻いていた、怒り、憎悪、妬み、そして復讐心。

 その醜いものがすべて、一瞬だけ。

 小さな笑い声となって、出てしまいました。

 殿下は言われました、復讐は醜いものではないと。

 ですが、わたしには、これは二度と表に出さない感情として。

 代わりに、殿下と同じく、公人としての仮面をかぶりーー

 必要ならば冷酷と叫ばれても毅然とそれを成そうと、心に命じたのです。

 大広間ではお父様が、エイシャに向かわていきます。

 そして、一閃。

 それは父親としての最後の優しさだったのかもしれません。

 革手袋をその指先にもたれて、エイシャの頬を大きくはたかれますーー

 大広間にはその行為に、どよめきが起こります。

 エイシャはよろめき、シルド様がそれを受けとめーーお父様に抗議の声を上げたよう。

 その大声は場内より離れたこのテラスまで、届いてきました。

「何をなさるエシャーナ伯!!!

 ご息女にかのような公然の場で!?

 ここがどこかをお忘れか!??」

 その言葉に、シルド様にしがみつくエイシャ。

 ああ、愚かなわたしの妹。

 まだ自分の周りしか見えていないーー

 そしてお父様の声は凛として、力強く、場内に静かに響きます。

「フレゲード侯爵令息シルド殿。

 それはこちらの言いたい言葉ですぞ。我が娘、ユニスが御気に召さないとあらば、まず両国を通して婚約の辞退をなさるのが慣例というもの」

 お父様ーーこれほどまでにお怒りのご様子を、わたしは初めて目にしました。

「しっ、しかしっ!?

 破棄を受け入れ、新たな申し入れを受けられたのは、そちらの令嬢がたではありませぬか!?」

 と、シルド様の怒鳴り声がまた場内に響きます。

「呆れたバカ息子だな」

 殿下とルサージュ侯がその光景を見ながら笑われてーー

 わたしもついつい、微笑んでしまします。

「令嬢がた?

 はて、当家にはいま嫡子はおりませぬがなーー」

 と、お父様。

 その発言に、わたしとエイシャは、唖然となってしまいます。

「なっ、なにを言われるか、確かに先程ーー

 婚約を申し込んだ折にーーなあ、そうであろう、エイシャ殿!?」

 と、シルド様はエイシャを振り返りみられますが。

 エイシャはことの成行きが理解できていない様子。

 養父となられたエルムンド侯は黙ってお父様とシルド様を見ていらっしゃいます。

「あいにくながら、当家には大公閣下のご息女になられた、ユニス様がいらっしゃったのみ。

 エイシャー……ああ、そうですな。

 確かにおりましたな」

 そう言われて、ほっとした表情をするエイシャとシルド様。

 しかし、まだエルムンド侯のお顔は険しいままです。

「おお、やはり!!!

 エシャーナ伯の思い違いであらせられたか!!!」

 そう叫ぶシルド様。

 しかし、お父様は冷たく言い放たれました。

「姉の婚約者を奪うようなやからを、当家では嫡子と認めるわけにはいきませんのでな。

 すでに、廃嫡の義を、皇帝陛下に願いでた次第ーー」

 と、シルド様の顔が青ざめます。

「ま、まさかーー

 では、エイシャ殿の貴族籍はもう、帝国にはないー‥‥‥と!?」

しおりを挟む
感想 130

あなたにおすすめの小説

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。 結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。 アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。 アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。

「犯人は追放!」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で“価値の高い女性”だった

佐藤 美奈
恋愛
セリーヌ・エレガント公爵令嬢とフレッド・ユーステルム王太子殿下は婚約成立を祝した。 その数週間後、ヴァレンティノ王立学園50周年の創立記念パーティー会場で、信じられない事態が起こった。 フレッド殿下がセリーヌ令嬢に婚約破棄を宣言した。様々な分野で活躍する著名な招待客たちは、激しい動揺と衝撃を受けてざわつき始めて、人々の目が一斉に注がれる。 フレッドの横にはステファニー男爵令嬢がいた。二人は恋人のような雰囲気を醸し出す。ステファニーは少し前に正式に聖女に選ばれた女性であった。 ステファニーの策略でセリーヌは罪を被せられてしまう。信じていた幼馴染のアランからも冷たい視線を向けられる。 セリーヌはいわれのない無実の罪で国を追放された。悔しくてたまりませんでした。だが彼女には秘められた能力があって、それは聖女の力をはるかに上回るものであった。 彼女はヴァレンティノ王国にとって絶対的に必要で貴重な女性でした。セリーヌがいなくなるとステファニーは聖女の力を失って、国は急速に衰退へと向かう事となる……。

田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。 それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。 ――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。 田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?

ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。 卒業3か月前の事です。 卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。 もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。 カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。 でも大丈夫ですか? 婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。 ※ゆるゆる設定です ※軽い感じで読み流して下さい

処理中です...