突然ですが、侯爵令息から婚約破棄された私は、皇太子殿下の求婚を受けることにしました!

星ふくろう

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第一章 婚約破棄と新たなる幸せ

第十六話 静かなる武人

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「左様ですな、シルド殿。

 いえ、フレゲード侯爵令息殿。

 これで当家と貴家との御縁はすべてなきものとなりましたゆえにーー」

 お父様は静かにエイシャを見下ろされます。

 そして強く、宣言なさいました。

「お前はそのエイシャという名も、二度と、使うことは許されんと思え。

 帝国に、お前の籍はない。

 どこにもなーー」

「そんな!?

 お父様、あんまりです!!!

 だって、わたしを御望みになられたのはーー」

 と、エイシャはシルド様を指さして叫びます。

「あちらの神聖ムゲール王国、フレゲード侯爵令息シルド様ではありませんか!!!!

 シルド様!?

 まさか、御自身で発せられたお言葉をーー」

 ひるがえすおつもりですか!?

 そう叫びたかったのでしょう‥‥‥

 ほんとうに、愚かな妹です

 この場での最善の策は、沈黙だというのに‥‥‥

 しかし、その言葉を遮ったのはーー

「お黙りなさい、名もなき娘よ。

 ここはそなたの居場所ではない」

 そう、シルド様にエイシャを押し付けられたエルムンド侯、その人でした。

「え……義父上さまーー!???」

「残念だが、まだ義父上ではないよ、名もなき娘よ。

 儀式も、我が神聖ムゲール王国国王の御許可も頂いてはーー

 いない」

 侯はエイシャが、さらに出そうとする不満を黙らせます。

「だが、王国の爵位を持つ人間が述べた言葉には、責任がある。

 しかし、ここは帝国領大公家」

 そこでエルムンド侯はお父様と、義父上。

 ハーベスト大公に、詫びのつもりなのでしょう。

 一礼をなされ‥‥‥

「一度でも養女にすることを認めた私が、それを破棄することは私の恥だがーー」

 と、ここでシルド侯がまた叫ばれます。

「そうだ、エルムンド侯!

 侯が恥をかかれる必要はない!!

 責任を問われるならば!!!」

 と、ハーベスト大公とお父様。

 お二人を指差されーー

「軽々しく破棄を受け取り、また私の婚約を受け入れたそちらの二家にも、相応の非がある!!」

 と更に声を張り上げました。

 ああ、なんて愚かなシルド様。

 エルムンド侯がこの場を、いさめようとなされている中でーー

 それをあえなく、感情に従って潰してしまう。

「本当にーー」

 と、ルサージュ侯がため息をつかれます。

「事態の原因が自身だという、自覚はないのかこのバカ息子はーー」

 と。

「シルド殿‥‥‥!」

 エルムンド侯は少し声を荒げて、シルド様を呼ばれます。

 しかし、シルド様のお声は止まりませんーー

「怒りはないのか、エルムンド侯!

 我らはこの二家の!!

 しかも令嬢ごときに恥をかかされたのだぞ!!??」

 令嬢ごときーー

 わたしは殿下をそっと仰ぎ見ます。

 殿下も、やはり、女性はものとお考えで?

 しかし、殿下のお顔はそうではなく。

 令嬢ごときという、その恥知らずな発言に。

 怒りの矛先を向けられていました。

 そして、広間にはこれまでにない、強き声が響きます。

 それは武人の声。

 戦場に響くような、勇ましいお声でした。

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