突然ですが、侯爵令息から婚約破棄された私は、皇太子殿下の求婚を受けることにしました!

星ふくろう

文字の大きさ
19 / 150
第一章 婚約破棄と新たなる幸せ

第十八話 ユニスの後悔

しおりを挟む
「ようやく出番のようですな」

 と、ルサージュ侯がおっしゃいます。

「殿下、よいですか?

 決して、遊び心をお出しになりませんように。

 良いですね?」

 とさきほどの仲睦まじい二人とは違ったーー

 臣下としての仮面をつけたルサージュ侯がそこにはいらっしゃいました。

 遊び心を出さないように、と釘を刺された殿下は困ったように肩をすくめます。

「しかしなあ、シェイルズ?

 多少はーーいいだろう?」

 と言い、殿下は悪戯をする子供のようなお顔をなされます。

「ならんと言ってるだろうが!

 いいか、イズバイア!
 
 絶対に、泳ぐなよ!?」

 と、殿下はルサージュ侯に再度、釘を刺されて面白くなさそうなお顔をされます。

 このお二人にはやはり、この掛け合いが御似合いだと。

 わたしは思ってしまうのでした。

 そして、殿下とルサージュ侯は、わたしに向かって球を見せられます。

「そろそろだなーー」

 そうルサージュ侯が言われるとーー

 球が映すわたしと殿下の、広間から見える光景は、殿下が膝を折り、わたしに求婚なされたあと。

 わたしを抱きしめようとなさいますが、そこに映るわたしはなぜか、その手を振り払いーー

「さて、ではユニス。

 我らが出番だ」

 と、殿下がわたしを見ておっしゃいます。

「すまぬな、ユニス」

 その言葉の合間に球に映った光景はーー

 止める殿下を振り切り、テラスを越えるわたしが!!

 わたしはこの時、なぜか冷静に、事態を見ている自分がいることが、不思議でなりませんでした。

 こころの中では、大声で叫んでいるのに。

 まさかーー!?

 そして、わたしの体は今度こそ‥‥‥

 大河へと向かったのでしたーー

 そして空中での支えが掻き消え、悲鳴を上げる暇もないままに、その場から消えた時。

 わたしはーー

 信じられないものをこの目にしました。

 それは手すりを勢いよく跳び越えーー

 大河に向かって身を投げうつ殿下の御姿!!!

 そしてルサージュ侯の、あまりにも悲痛な叫び声が、その背中を追いかけます。

「なっ!???

 殿下!???

 殿下ああああああーーーーー!!!???」

 その叫び声がわたしの耳にも届いた瞬間。

 ふわっと‥‥‥

 わたしは大いなる何かに。

 優しくて、たくましい。

 一度は大河に投げ打とうとしたこの身を、抱きとめていただいたあの両腕を。

 もう一度、この身で体験したのでした。

「ユニス!!

 目を開けたまえ!

 どうだ、この光景は??

 さあ、空を舞うぞ!!!」

 そう。

 落ちるという、恐怖。

 本能にしみついてしまっている、あの耐えがたい拒絶感。

 そこから逃げたいがために、わたしは両目を固く閉じていました。

 もうこの身の役目は終わったのだと、そう思いながら。

 殿下までも巻き込んでしまうほどに、愚かな女に産まれたことを後悔するほどにーー

 その全てを諦めておりました。

 しかし、突如として落下が止まりーー

 抱き止められたその両腕はとても懐かしく。

 そのお声が聞こえた時。

 わたしはーー

 ほんの一瞬でも、死を望んだ自分を叱りつけました。

 殿下は必ず、来て下さると。

 必ず、この愚かな女を、いえ、必要だと断言して下さったあのお言葉を。

 信じきれていなかった、わたし自身を、情けなく思いました。

しおりを挟む
感想 130

あなたにおすすめの小説

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。 結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。 アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。 アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。

「犯人は追放!」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で“価値の高い女性”だった

佐藤 美奈
恋愛
セリーヌ・エレガント公爵令嬢とフレッド・ユーステルム王太子殿下は婚約成立を祝した。 その数週間後、ヴァレンティノ王立学園50周年の創立記念パーティー会場で、信じられない事態が起こった。 フレッド殿下がセリーヌ令嬢に婚約破棄を宣言した。様々な分野で活躍する著名な招待客たちは、激しい動揺と衝撃を受けてざわつき始めて、人々の目が一斉に注がれる。 フレッドの横にはステファニー男爵令嬢がいた。二人は恋人のような雰囲気を醸し出す。ステファニーは少し前に正式に聖女に選ばれた女性であった。 ステファニーの策略でセリーヌは罪を被せられてしまう。信じていた幼馴染のアランからも冷たい視線を向けられる。 セリーヌはいわれのない無実の罪で国を追放された。悔しくてたまりませんでした。だが彼女には秘められた能力があって、それは聖女の力をはるかに上回るものであった。 彼女はヴァレンティノ王国にとって絶対的に必要で貴重な女性でした。セリーヌがいなくなるとステファニーは聖女の力を失って、国は急速に衰退へと向かう事となる……。

田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。 それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。 ――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。 田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?

ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。 卒業3か月前の事です。 卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。 もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。 カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。 でも大丈夫ですか? 婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。 ※ゆるゆる設定です ※軽い感じで読み流して下さい

処理中です...