22 / 150
第一章 婚約破棄と新たなる幸せ
第二十一話 甘き夏の風
しおりを挟む
そうか、と言われて、殿下は言葉を続けられます。
「では二つ目だ。
二人でいる時は、僕は君をニアム、と。
君には、イズバイア、と。
敬称をつけずに呼んで欲しい。
そして、正室にと言った言葉に、偽りはない。
それに君も聞いただろう?
あの小うるさい」
と、殿下はテラスの方を向かれ、
「シェイルズが、皇帝陛下の裁可を頂いたと、告げたことを。
もう、僕たちの婚約は、帝国が認めているのだよ。
まあ、シェイルズがまたうるさく、物申すだろうけどな」
と、殿下は何か困ったような顔をされます。
「だからだ。
もう死のうなんて、思わないでくれないか、僕のニアム」
と、それは優しくも、春を舞う風が吹くように。
殿下はわたしを、より強く、抱きしめて下さいました。
「はいー殿‥‥‥イズバイア」
そう、わたしは。勇気を振り絞って殿下のお名前を呼びます。
「ありがとう、僕のニアム。
ところで、もう一つ僕からの頼みがあるのだが」
頼み?
殿下からわたしに?
なんのことを言われているのか、その時はまったく、わかりませんでした。
「いま、季節は夏を終えようとしている頃だが」
「はい、イズバイア」
「どうも、あそこでシェイルズが、叫びすぎているようでな」
と、木々や岩肌の影になって、こちらから見えないテラスではーー
ルサージュ侯と、なぜかシルド様の怒鳴り声が。
「たぶん、シェイルズが上手くたきつけているのだろうが。
ふむ。何があったかを見てみようか、ニアム」
殿下はそう言われると、先ほどの球を再びお出しになりました。
「いまのままではわからんな。
時を戻して、見ることにしよう」
「時を戻すのですか、イズバイア?」
殿下はとても不思議なことをおっしゃいます。
わたしがそのお言葉の意味を理解できていないと思われたのか、詳しく教えて下さいました。
「これには、あの広間に置いてあるもう幾つかの球が見聞きしたもの。
その全てが詰まっているのだニアム。
そして、それらは記録されている。
だから、少しばかりの過去を覗くことができるのだ。
さて、この辺りか。
僕たちが落ちた後を見てみようではないか」
球が映し出したのは、まず大広間にテラスから駆け込んできたルサージュ侯でした。
ルサージュ侯は義父上、ハーベスト大公に何やら叫んでおられます。
どうやら、わたしと殿下がこの大河に落ちた、と言われてるご様子。
そしてそれを聞かれたハーベスト大公は、大広間にいた兵士たちに命令をなさっています。
「これは‥‥‥わたしたちの救援をせよ、ということでしょうか?」
音がないため、わたしにはその全てがわかりません。
すると殿下は球になにか操作をなさいます。
「これで、聞こえるかな?
しかし、シェイルズの声は耳に響く」
と、大広間で叫ばれているルサージュ侯のお声が球から聞こえてまいります。
なんと、ルサージュ侯はシルド様に大声で詰め寄られていました。
「では二つ目だ。
二人でいる時は、僕は君をニアム、と。
君には、イズバイア、と。
敬称をつけずに呼んで欲しい。
そして、正室にと言った言葉に、偽りはない。
それに君も聞いただろう?
あの小うるさい」
と、殿下はテラスの方を向かれ、
「シェイルズが、皇帝陛下の裁可を頂いたと、告げたことを。
もう、僕たちの婚約は、帝国が認めているのだよ。
まあ、シェイルズがまたうるさく、物申すだろうけどな」
と、殿下は何か困ったような顔をされます。
「だからだ。
もう死のうなんて、思わないでくれないか、僕のニアム」
と、それは優しくも、春を舞う風が吹くように。
殿下はわたしを、より強く、抱きしめて下さいました。
「はいー殿‥‥‥イズバイア」
そう、わたしは。勇気を振り絞って殿下のお名前を呼びます。
「ありがとう、僕のニアム。
ところで、もう一つ僕からの頼みがあるのだが」
頼み?
殿下からわたしに?
なんのことを言われているのか、その時はまったく、わかりませんでした。
「いま、季節は夏を終えようとしている頃だが」
「はい、イズバイア」
「どうも、あそこでシェイルズが、叫びすぎているようでな」
と、木々や岩肌の影になって、こちらから見えないテラスではーー
ルサージュ侯と、なぜかシルド様の怒鳴り声が。
「たぶん、シェイルズが上手くたきつけているのだろうが。
ふむ。何があったかを見てみようか、ニアム」
殿下はそう言われると、先ほどの球を再びお出しになりました。
「いまのままではわからんな。
時を戻して、見ることにしよう」
「時を戻すのですか、イズバイア?」
殿下はとても不思議なことをおっしゃいます。
わたしがそのお言葉の意味を理解できていないと思われたのか、詳しく教えて下さいました。
「これには、あの広間に置いてあるもう幾つかの球が見聞きしたもの。
その全てが詰まっているのだニアム。
そして、それらは記録されている。
だから、少しばかりの過去を覗くことができるのだ。
さて、この辺りか。
僕たちが落ちた後を見てみようではないか」
球が映し出したのは、まず大広間にテラスから駆け込んできたルサージュ侯でした。
ルサージュ侯は義父上、ハーベスト大公に何やら叫んでおられます。
どうやら、わたしと殿下がこの大河に落ちた、と言われてるご様子。
そしてそれを聞かれたハーベスト大公は、大広間にいた兵士たちに命令をなさっています。
「これは‥‥‥わたしたちの救援をせよ、ということでしょうか?」
音がないため、わたしにはその全てがわかりません。
すると殿下は球になにか操作をなさいます。
「これで、聞こえるかな?
しかし、シェイルズの声は耳に響く」
と、大広間で叫ばれているルサージュ侯のお声が球から聞こえてまいります。
なんと、ルサージュ侯はシルド様に大声で詰め寄られていました。
0
あなたにおすすめの小説
結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。
佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。
結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。
アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。
アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。
「犯人は追放!」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で“価値の高い女性”だった
佐藤 美奈
恋愛
セリーヌ・エレガント公爵令嬢とフレッド・ユーステルム王太子殿下は婚約成立を祝した。
その数週間後、ヴァレンティノ王立学園50周年の創立記念パーティー会場で、信じられない事態が起こった。
フレッド殿下がセリーヌ令嬢に婚約破棄を宣言した。様々な分野で活躍する著名な招待客たちは、激しい動揺と衝撃を受けてざわつき始めて、人々の目が一斉に注がれる。
フレッドの横にはステファニー男爵令嬢がいた。二人は恋人のような雰囲気を醸し出す。ステファニーは少し前に正式に聖女に選ばれた女性であった。
ステファニーの策略でセリーヌは罪を被せられてしまう。信じていた幼馴染のアランからも冷たい視線を向けられる。
セリーヌはいわれのない無実の罪で国を追放された。悔しくてたまりませんでした。だが彼女には秘められた能力があって、それは聖女の力をはるかに上回るものであった。
彼女はヴァレンティノ王国にとって絶対的に必要で貴重な女性でした。セリーヌがいなくなるとステファニーは聖女の力を失って、国は急速に衰退へと向かう事となる……。
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
田舎娘をバカにした令嬢の末路
冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。
それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。
――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。
田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる