突然ですが、侯爵令息から婚約破棄された私は、皇太子殿下の求婚を受けることにしました!

星ふくろう

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第一章 婚約破棄と新たなる幸せ

第二十一話 甘き夏の風

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 そうか、と言われて、殿下は言葉を続けられます。

「では二つ目だ。

 二人でいる時は、僕は君をニアム、と。

 君には、イズバイア、と。

 敬称をつけずに呼んで欲しい。

 そして、正室にと言った言葉に、偽りはない。

 それに君も聞いただろう?

 あの小うるさい」

 と、殿下はテラスの方を向かれ、

「シェイルズが、皇帝陛下の裁可を頂いたと、告げたことを。

 もう、僕たちの婚約は、帝国が認めているのだよ。

 まあ、シェイルズがまたうるさく、物申すだろうけどな」

 と、殿下は何か困ったような顔をされます。

「だからだ。

 もう死のうなんて、思わないでくれないか、僕のニアム」

 と、それは優しくも、春を舞う風が吹くように。

 殿下はわたしを、より強く、抱きしめて下さいました。

「はいー殿‥‥‥イズバイア」

 そう、わたしは。勇気を振り絞って殿下のお名前を呼びます。

「ありがとう、僕のニアム。

 ところで、もう一つ僕からの頼みがあるのだが」

 頼み?

 殿下からわたしに?

 なんのことを言われているのか、その時はまったく、わかりませんでした。

「いま、季節は夏を終えようとしている頃だが」

「はい、イズバイア」

「どうも、あそこでシェイルズが、叫びすぎているようでな」

 と、木々や岩肌の影になって、こちらから見えないテラスではーー

 ルサージュ侯と、なぜかシルド様の怒鳴り声が。

「たぶん、シェイルズが上手くたきつけているのだろうが。

 ふむ。何があったかを見てみようか、ニアム」
 
 殿下はそう言われると、先ほどの球を再びお出しになりました。

「いまのままではわからんな。

 時を戻して、見ることにしよう」

「時を戻すのですか、イズバイア?」
 
 殿下はとても不思議なことをおっしゃいます。

 わたしがそのお言葉の意味を理解できていないと思われたのか、詳しく教えて下さいました。

「これには、あの広間に置いてあるもう幾つかの球が見聞きしたもの。

 その全てが詰まっているのだニアム。

 そして、それらは記録されている。
 
 だから、少しばかりの過去を覗くことができるのだ。

 さて、この辺りか。

 僕たちが落ちた後を見てみようではないか」

 球が映し出したのは、まず大広間にテラスから駆け込んできたルサージュ侯でした。

 ルサージュ侯は義父上、ハーベスト大公に何やら叫んでおられます。

 どうやら、わたしと殿下がこの大河に落ちた、と言われてるご様子。
 
 そしてそれを聞かれたハーベスト大公は、大広間にいた兵士たちに命令をなさっています。

「これは‥‥‥わたしたちの救援をせよ、ということでしょうか?」

 音がないため、わたしにはその全てがわかりません。

 すると殿下は球になにか操作をなさいます。

「これで、聞こえるかな?

 しかし、シェイルズの声は耳に響く」

 と、大広間で叫ばれているルサージュ侯のお声が球から聞こえてまいります。

 なんと、ルサージュ侯はシルド様に大声で詰め寄られていました。

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