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第一章 婚約破棄と新たなる幸せ

第二十ニ話 怒りの奴隷令嬢

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「貴様ーフレゲード侯爵令息殿!!!

 どうなさるおつもりか!???

 ユニス公女様はおろか、皇太子殿下までもが大河に身を投げられた!!!

 これはひとえに、すべてあなたの責任ですぞ!!!」

 そう、演技とは思えないほどの剣幕でルサージュ侯はシルド様に怒鳴りつけておいででした。

 しかし、シルド様もこれには黙っておられず、

「なにを以って僕の責任とおっしゃるか!!!

 そなたはーー」

「これは失礼。
 
 私はエルムド帝国騎士団黒き牙は副団長。

 ルサージュ侯家第三令息のグレアムと申します。

 さて、フレゲード侯爵令息殿。

 こたびのこの問題、あなた様のご酔狂が全ての引き金となった程度には。

 ご理解いただいておりますでしょうな?」

 そう、片目に鋭い刀傷を持つルサージュ侯は静かに怒りを称えてシルド様におっしゃいます。

「すっ、酔狂とは無礼な!!!

 例え、僕がユニス公女との婚約を破棄したとはいえ!!

 その後に受けられたのはあちらの!!!」

 と、そこには実妹のエイシャ、いえ、元エイシャが泣き崩れております。

 しかし、妹は何かに取りつかれたように顔をゆっくりと上げました。

「エイシャ?

 こんな顔をするなんて!?」

 と、そこには思わずわたしが叫んでしまうほどに‥‥‥

 怒りと憎しみに満ちた実妹がシルド様をにらみつけておりました。

「これは、凄まじき形相だなー‥‥‥」

 それは、殿下も思われたらしく、信じられないという顔をなさいます。
 
 実妹はゆっくりと立ち上がり、シルド様に向かって歩いていき‥‥‥

「フレゲード侯爵令息シルド様。

 わたくしは、ええ!!!

 名もなきはした女のわたくしは!!

 まだ、あなた様の婚約の申し込みをお断りしてはおりません。

 お姉さまとわたくし。

 どちらを選ばれますか!?

 シルド様!!!?」

 と叫び、詰め寄ったのです!!!

「なんという大胆さ‥‥‥」

 これにはイズバイアも呆れてしまったご様子。

 周りにいらしたエルムンド侯や、お父様もあっけに取られているご様子。

 シルド様は実妹のその迫力に、数歩、引き下がってしまわれました。

「なっ、なにを言うか、はした女風情が!!

 僕はムゲール王国の公爵家令息だ!?

 家柄が無ければお前などーー」

 と、そこまで言われてシルド様は、はっ、と周りの視線に気づかれます。

 同じ王国の令息令嬢、帝国の令息令嬢、はては王国の王族のかたがたや帝国の皇族のかたがたの。

 あまりにも冷たく、そして、非道ぶりを責めるような視線に。

 そして、実妹はさらに詰め寄ります。

「貴族が、家柄がなければならないとおっしゃるのでしたら!

 なぜ、お姉さまをお捨てになられたのですか!?

 あの時点ではお姉さまは大公公女!!! 

 王室にも匹敵する家柄だったのですよ!??」

 そう、実妹はシルド様を責め立てるように叫んでいました。

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