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第一章 婚約破棄と新たなる幸せ
第三十話 ユニスの希望
しおりを挟むユニスが参りますーー
その言葉は、わたしの決意の表明。
そして、弱い過去のわたしへの‥‥‥
さよならを告げる言葉でした。
殿下に上着をお返しし、侍女の持ってきてくれた羽織りをまとうと、わたしはシルド様へと。
ルサージュ侯や義父上が良いのか?
と殿下を見ますが殿下はなにも言いません。
ありがとう、イズバイア。
ニアムに勇気をくれて。
そう心に刻み、わたしはシルド様の元へ。
「シルド様ーー」
そう声をかけると、彼はなにか悔やむようにわたしを見られました。
「エルベド帝国ハーベスト大公家子女のユニスでございます。
神聖ムゲール王国フレゲード侯後令息シルド様」
そう言いわたしは静かに一礼を。
「今宵は多くのことがございました。
悲しいことも、良いことも。
ユニスの本心をお伝えしたいと思います。
お聞きくださいますか?」
と。
わたしは今夜は、さまざまな奇行をされた彼ですが。
その良心に、届けばと思い、願い出てみました。
「ユニス公女ー‥‥‥。
このシルドで良いならば、どうぞ。
申されよーー」
恥ずかしそうに、悔やむような口調で、シルド様はそう言い、わたしにきちんと顔を向けられました。
「はい、ありがとうございます。
シルド様。
最初、ユニスはあなた様をお慕いしておりました。
まだ会ったこともない御方ですが、嬉しかったことは真実です。
あなた様がエイシャを、実妹に運命を感じられたのでしたら。
大変、悲しいことですが、シルド様からの婚約破棄をわたしはお受けしたいと、そう思います。
また、実妹がエルムンド侯様の養女に迎えていただけるあのご配慮に。
お礼を申し上げます。
伯爵家と侯爵家では家柄も格式も違う世界。
実妹が苦労しないように心を砕いていただいた事。
わたしは忘れません」
ここまで言うと、シルド様は慌てて否定されようとされました。
「い、いや違うんだ、その話はーー」
しかし、わたしはそれを遮るように言葉を続けます。
「エイシャは‥‥‥
今宵の、あの行動は伯爵家の恥だとわたしは思います。
ですが‥‥‥あの子は、決して愚か者ではありません。
軽率な行いは若さゆえのものもあると思います。
その点は、どうか年長者であるシルド様に正しく導いて欲しいのです。
あの子が、侯爵家夫人として王国で胸を張って生きていけるように。
姉としてお願いしてもよろしいでしょうか、シルド様」
どうかお願いいたします、とわたしは一礼を彼にしました。
ここで断られれば、また、新たな火種が起きることをシルド様も考えられるはず。
この御方が、本当に王国の武人であるなら。
それを信じての、お願いでした。
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