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第二章 王国の闇と真の悪
第三十八話 王族からの追放
しおりを挟む大司教がシルドとミレイアこと元エイシャの婚儀を上げ、その余興を王子が楽しんでいた頃。
何層もの防壁に包まれている大公城の最後の内壁に向かい、その十数台の馬車の列はゆっくりと走っていた。
さすがに王国の王族たちに加え、上位貴族を総勢で数十人乗せるには、馬車は一台では足りない。
帝国側からの贈り物を載せた荷馬車や、男爵以下の下級貴族が乗る馬車もそこに含まれる。
エルムンド侯の指揮する銀鎖の影の第二師団が、今回の送迎の任務に当たっていた。
王子やエルムンド侯が乗る馬車は、隊列の後方いた。
その後に、銀鎖の影の騎士団の騎士たちが続いていく。
後方を大きく固める配置で移動を続けていた。
まだ、ここは帝国領。
いざ、大公家の私兵なり、帝国軍なりが攻撃してきた際。
王族を守れるよう考えられた配置だった。
防壁の最内壁を抜け市街地へと隊列が入ったところで、王子たちが乗る馬車の窓を騎士の一人が手で軽く叩く。
防壁を抜けた、そういう合図だった。
「どうやら、大公城は無事に通過したようですねーー」
相変わらず足の上に腹がある、というよりは腹の上に首を載せいる。
そんな感じに見える肥りすぎた大臣が安堵の声を漏らす。
もし、王国側を無事に帰す気が無ければ‥‥‥
あの内壁の扉を閉め、枢軸連邦の寄越した人間たちもろとも殺戮の血の雨が降っていただろう。
「馬鹿か、大臣?
襲うなら、これからだ。
市内は見てみろ。
この両国の和平の宴などど言い、祭り騒ぎだ。
この人込みに乗じて、民衆に化けさせた兵士に横腹を狙わせるのが定石だ。
隠れる建物の影などそこかしこにあるぞ。
これを利用しない手はないとは思わないか?」
まるで、自分ならこうする。
そんなことをこの王子は平気で言う。
大臣は背に汗をかきながらどうか王都まで無事に帰還できるように祈った。
「ところで、アンバス子爵夫妻。
ここは王族とそれに連なる者がいていい場所だ。
いつまで、この中に座っている気かな?」
「お、王子。
しかし、僕はフレゲード侯爵家の人間。
王族の末端にー‥‥‥くっ!?」
シルドは再度、王子に蹴りをくらわされて黙らされる。
「いいか、王国でも帝国でも公爵家・侯爵家。
これが王族に連なる身分であることは変わらんがな。
まあ、そちらのエルムンド侯のように、珍しく武功だけでのし上がられる武人もおられるがーー」
そう、王子は評価しているぞ、そんな様子でエルムンド侯を見る。
「はっーー
王子、このエルムンド。
お褒めのお言葉を頂き、嬉しい限りです」
うんうん、そうだろう。
王子は嬉しそうに微笑むと、シルドを再度蹴り上げた。
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