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第二章 王国の闇と真の悪
第四十二話 仮面の二人
しおりを挟む「おい、もういいのでがないのか?
俺の酒も切れそうなんだがな?」
時間をかけて念入りにミレイアの汚れを落としてやり、服まで着せてシルド彼女を抱き上げた。
エルムンド侯と対面する席に座らせると、大丈夫だ、と優しく妻に声をかけてやり手を握ってやる。
ミレイアは自分の舌を斬り落としたシルドの豹変ぶりに怯えていた。
「しかし、あの献身さといい、この気遣いといい。
あれか、やはり逝去された母御の影響なのか?」
そう、10年ほど前に死んだシルドの実母の話を出す。
他に愛妾を作り、家を良く開けていたフレゲード侯爵は、正妻である妻を振り返ることはなかった。
まだ騎士団見習いに上がる前だったシルドは、少ない心の知れたメイドたちと共に母親の世話をしていた。
「そうかもしれんな、母上はもっと動けぬ状態だった。
まだ、ミレイアは良い方だ」
「そうは言うがお前‥‥‥。
王子の命とはいえ、その娘ーいや、奥方の舌を斬り落としたのは、お前だぞ?」
まるで、罪滅ぼしのようだな。
そうエルムンド侯は言う。
「貴公もそれに加わったではないか。
今更、一人だけ罪がないような顔をするな、エルムンド侯」
やれやれ、とエルムンド侯は肩をすくめた。
同罪、か。
その表現は正しい。
シルド、お前は間違ってないよ。
そんな感じだった。
「で、いつになったら仮面をはがすんだ、エルムンド。
無骨なお前に、そんな嫌味な性格は似合わんぞ」
「それを言うなら、お前だってそうだろう、シルド。
なぜ、あんな真似をした?
わざわざ、王国や枢軸連邦にひびを入れるような真似を」
エルムンド侯のその瞳は、そうーー
あの大広間でユニスたちを睨みつけていた力強く、それでいて狙った獲物を逃がさない狩人のもの。
そんな様子に変わっていた。
「ふん、ようやくいつものお前に戻ったな。
なぜしたかだと?
どうせ、心当たりはあるだろうが?」
シルドもまた、愚かな元侯爵令息から、知性と優しさと、深い魔を潜ませた。
そんな目つきに変わっていた。
「そうだな、シルド。王子は多くを見ているーあのお方は東西双方の大陸を平らげる気だ。
三角洲は単なる交渉の材料でしかない。
なにせ、枢軸連邦はすでに大量のミスリル鉱石の眠る鉱山を手に入れている。
おまけに、法王庁はムゲル枢軸連邦の一角にあるときた」
我が王国の利権など、いまはないようなものだ。
エルムンド侯はぼやきながら話を続ける。
「しかし王国は神聖を名乗れる‥‥‥神殿と大司教閣下がいるからな。
法王庁のお墨付きがあるわけだ。
かたや帝国には神殿はあるが神官長のみ。格下の存在だ。
我が王国の繁栄は海運業だ。帝国のあの版図ははるか南方大陸の手前まで広がっている」
あるとすればーー
少し迷い、そしてエルムンド侯は言葉を続けた。
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