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新章 魔導士シルドの成り上がり ~復縁を許された苦労する大公の領地経営~
第十話 その2
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そうねえ、エイシャの脳裏に浮かぶのはあの日。
王国の自分に与えられた子爵領へとたどり着き、馬車から馬小屋のような屋敷に荷物を数人がかりで運び込んだ時に北鹿の角師団の従僕たちも新しい主を迎えに来ていた。
その時に名乗りあって以来ではないだろうか?
「あの日ね。
わたしが、本当にこの人についていって大丈夫なのかしら。
そうぼやいてた以来でしょう?」
「そんなぼやきは忘れた!!
ちゃんと大公になっただろう?」
「なったけど、勝手に離縁されて、勝手に戻ってきた渡り鳥みたいなのもあなたですよ?」
うまい言い様をするな、妻よ。
口喧嘩で勝てるきはまったくしなかった。
「まあ、あの夜から何度も肌を合わせているのに、いっこうに抱きにこず。
こうして迫っても抱きしめて終わらせる。
女としてのプライドはもうズタズタですわね‥‥‥」
誰か適当な騎士からの求愛を受けてみようかしら?
あの書物の内容も刺激的で楽しそうですわ。
そう、菫色の瞳で睨みつけるエイシャの悪戯めいた顔もまたシルドは好きだった。
「ねえ、プロムと呼ぶなら、オーベルシュ。
あなたはどうしてそこまで責任を感じて過ごしているの?
その心の闇は、まるで銀色の鎖に縛られているみたい。
ミレイアと呼ばれた身なら‥‥‥真紅の炎ではその鎖は溶けないの?」
「その炎で焼かれたからこうしているんだけどな、僕は。
エルムンド一人に全部を任せるのは、心苦しいものもある」
王国のこれからの政務のことを言っているのだろう。
また、政治の話ですか。
エイシャのため息は重い。
「逆にあなたは用済みですわよ、旦那様。
王国は第四王子の海軍が壊滅。
なのに、国王奪還を他の海軍も陸軍も魔同師団に至るまで。
それどころか、大臣や諸貴族に至るまで大きな一枚岩が出来ている。
そんなところに二人も大きな狼がいれば、いつかは崩壊するわ」
どうせ、エルムンド様の最終目標は大元帥のその上ですもの。
あの方は下民からの成り上がり方が、気迫が違う。
「いつかは僕とエルムンド派に別れる、か。
貴族勢と文官勢になるだろうなあ。そして、あれは王になるかもしれん」
「なるかしら?
あっさりと引き下がって、ふらりとどこかに行くでしょうよ。
旧友の窮地を救いに来ないような、そんな薄情な義父上様ではないもの」
「十年後、だな。
三人、いや、あれも誰かを妻に迎えているかもしれんな。
二組の夫婦で暮らせれば、それでいい」
ふん。
そんな夢ばっかり語るんだから。
実現していくのがあなただけど‥‥‥
そんなところに惚れているのは秘密だが。
王国の自分に与えられた子爵領へとたどり着き、馬車から馬小屋のような屋敷に荷物を数人がかりで運び込んだ時に北鹿の角師団の従僕たちも新しい主を迎えに来ていた。
その時に名乗りあって以来ではないだろうか?
「あの日ね。
わたしが、本当にこの人についていって大丈夫なのかしら。
そうぼやいてた以来でしょう?」
「そんなぼやきは忘れた!!
ちゃんと大公になっただろう?」
「なったけど、勝手に離縁されて、勝手に戻ってきた渡り鳥みたいなのもあなたですよ?」
うまい言い様をするな、妻よ。
口喧嘩で勝てるきはまったくしなかった。
「まあ、あの夜から何度も肌を合わせているのに、いっこうに抱きにこず。
こうして迫っても抱きしめて終わらせる。
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そう、菫色の瞳で睨みつけるエイシャの悪戯めいた顔もまたシルドは好きだった。
「ねえ、プロムと呼ぶなら、オーベルシュ。
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その心の闇は、まるで銀色の鎖に縛られているみたい。
ミレイアと呼ばれた身なら‥‥‥真紅の炎ではその鎖は溶けないの?」
「その炎で焼かれたからこうしているんだけどな、僕は。
エルムンド一人に全部を任せるのは、心苦しいものもある」
王国のこれからの政務のことを言っているのだろう。
また、政治の話ですか。
エイシャのため息は重い。
「逆にあなたは用済みですわよ、旦那様。
王国は第四王子の海軍が壊滅。
なのに、国王奪還を他の海軍も陸軍も魔同師団に至るまで。
それどころか、大臣や諸貴族に至るまで大きな一枚岩が出来ている。
そんなところに二人も大きな狼がいれば、いつかは崩壊するわ」
どうせ、エルムンド様の最終目標は大元帥のその上ですもの。
あの方は下民からの成り上がり方が、気迫が違う。
「いつかは僕とエルムンド派に別れる、か。
貴族勢と文官勢になるだろうなあ。そして、あれは王になるかもしれん」
「なるかしら?
あっさりと引き下がって、ふらりとどこかに行くでしょうよ。
旧友の窮地を救いに来ないような、そんな薄情な義父上様ではないもの」
「十年後、だな。
三人、いや、あれも誰かを妻に迎えているかもしれんな。
二組の夫婦で暮らせれば、それでいい」
ふん。
そんな夢ばっかり語るんだから。
実現していくのがあなただけど‥‥‥
そんなところに惚れているのは秘密だが。
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