突然ですが、侯爵令息から婚約破棄された私は、皇太子殿下の求婚を受けることにしました!

星ふくろう

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新章 魔導士シルドの成り上がり ~復縁を許された苦労する大公の領地経営~

第十六話 アルメンヌの嘆息 1

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 まったくもう‥‥‥
 いきなりいい気分で酒に酔い寝ていたら起こされてーー
 与えれられたのがこれだ。
 アルメンヌは心から吐き出すようにしてため息をつく。
「あの頃はまだ最下位に近いとはいえ、貴族だったのに。
 旦那様からは失態を責められて離縁され、行く宛もなく旧知のエイシャを頼ればこれ、か‥‥‥」
 なんてついてないんだろう、わたしは。
 シルド様に抱かれるようになれと言われ近付けば拒否され、あんな高い場所に誘拐されそうになるし。
 情婦にする気などないと言いながら、シルド様はこんなものを着せようとするし。
 本当についていない。
「わたしはただ、この旅を無事に終わらせてそのまま、情婦か側室でいいからあの大公城のどこかで暮らせればそれで良かったのに。
 なんでこうなったんだろう……」
 ぼやいてもなにも解決しないことは分かっている。 
 彼女の主はこれを着ろ、そう言い付けたのだ。
 こんなスリットの激しい服なんて‥‥‥下着なしに馬にまたがればどうなることか。
「はあー‥‥‥」
 どうぞ、旦那様。
 自分から諦め顔でアルメンヌはシルドを室内に迎え入れた。
 窓から降り注ぐ‥‥‥月光が妙ななまめかしさを醸し出していてこれはこれで色気のある光景だった。
 シルドはアルメンヌを上から下まで嘗め回すような視線で眺めた後に満足そうにうなづいた。
「うん、これなら文句はでまい」
 その一言が我慢の限界に達していたアルメンヌの怒りに触れる。
 南方の女性は気が短いのだ。
「なにが文句はでない、ですか!?
 あれほど、エイシャが大事だと言いながらーー!!!
 あなたは‥‥‥情婦にするつもりはないと言いつつ、どうせ。
 どこかの領主にでもわたしを抱かせ、その気を引こうとそんなお考えなのでしょう!?」
 は?
 シルドは間の抜けた顔にはならないが、そういう手もあるな。
 そんな一言が漏れ出てしまう。
「そんな、そんなー‥‥‥。
 大公様ならばまだしも、どこぞの荘園の宗主だの、領主だのにまで手を出されるくらいなら‥‥‥」
「ならどうする、と?
 だいたい、なんで僕ならいいんだ?
 君のその姿は、こう言うと妻には怒られるが。
 掛け値なしに美しいぞ?
 他にも良い相手はいるだろう?
 その‥‥‥傷を込みで考えても、だ」
 そう言って下さるだけまだましですわ、そうアルメンヌは嘆息する。
「前回の帝国と王国との戦。
 まだ数か月前ですが‥‥‥。
 レブナス高家の麾下のある城を夫がいないまま籠城戦となり、南方大陸のある国の侵攻から守れませんでした。
 いまは盛り返して奪い返したようですけどね。
 おかげさまで、この傷も含めて、要らんと捨てられましたわ。
 殿方の愛ってなんなのでしょうね、旦那様。
 数年を過ごした間柄だったのに」
 それは気の毒だったな‥‥‥こっちは新婚早々、こんな任務で愛し合う暇もないのだが。
 シルドもまた、ため息をついた。
「旦那様がため息をつかれる理由なんてないじゃないですか。
 明日からは、こんないい情婦を連れて馬の上で好きなようにわたしをいじれるんですから。
 何より、この傷を見せることで情け深い主人だと人は思うでしょう。
 エイシャの計画がどうかは知りませんけど。
 そんなことに使われるなんて、恥ずかしいやら悲しいやら。
 この責任は取って頂けるのでしょうか?」
「責任‥‥‥!?
 いや、それはーー」
「だって、女ですよ、わたし。
 これでも元貴族ですよ?
 それを情婦扱いして他の男に抱かせる気なのでしょう?
 内実を知るために?」
 いくばくかの情けをいずれは与えて頂かねば困ります。
 アルメンヌはそうシルドに嘆願する。
「いや待て、抱かせる気はない。
 まあ、馬には乗せるが……その傷は隠せる。
 そんな魔導もある。
 これはあくまでシルド劇団としての演技なのだ。
 そう、頼むからーー悲しそうな顔をするのはやめてくれ」
 シルドも一応、男である。
 女の涙には弱かった。

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