突然ですが、侯爵令息から婚約破棄された私は、皇太子殿下の求婚を受けることにしました!

星ふくろう

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新章 魔導士シルドの成り上がり ~復縁を許された苦労する大公の領地経営~

第二十話 アルメンヌの嘆息 5

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「あの、旦那様‥‥‥」
 恥ずかしそうに扉を開けたアルメンヌはそっとシルドを部屋に招き入れた。
 あれから朝になり、彼が目を覚ました時。
 アルメンヌはなにか決意を固めたようなそんな顔つきをしていた。
 うん、どうやら決めてくれたらしい。
 シルドはさて、これから劇団の公演の予行演習をしなければなとそっと微笑んだ。
 階下の食堂で一同が介した時、アルメンヌは普段と変わらない姿で降りて来ていた。
 昨晩なにがあったのかを誰も口にはしないが気にはなるものらしい。
 イルバン卿辺りはまだ若さも勝ったのだろう、好奇の視線をシルドたち二人に向けていた。
 食事が終わり、昼過ぎにでるからそれまでは自由にしてくれ。
 シルドは三人の騎士にそう言い渡すと、アルメンヌを伴い自室へと戻った。
 そしていまーー

「うん、では見せてもらおうか?」
 部屋に入るとそれまでとはまったく違う、女性としての艶やかな色気に満ちたアルメンヌがそこにはいた。
 服のデザインにも拠るのだろうが、鍛え上げらえた肉体はそのプロポーションもしなやかで胸も豊満であり、腰つきも細く、抱きしめれば折れそうに見えた。
「サイズは合うのかい?」
 誉め言葉の一つもないのかな?
 せっかく、普段はしない化粧をして髪飾りまで手間をかけたのに。
 これは女としては寂しい限りだった。
「いいえ、そのー‥‥‥お尻が少しだけ大きくて、服の方が。
 これで座ると、余計に奥までーー」
 見えてしまいます。
 そこまでは恥ずかしくて言えなかった。
「なるほど。
 なら、薄いタイツでも履くか?
 それとも絹のズボンなら薄手で傷も見えまい」
「え?
 だってそれをすると、このスリットの意味がーー??」
「南方の衣装だと言えばわからんだろ?
 何も全部を見せる必要もあるまい。
 ああ、そうか。 
 この服だと下着なしになってしまうのか‥‥‥」
 それはあまりにもふしだらだな。
 アルメンヌにも悪いことをしてしまう。
 そう言うシルドは何かを考え着いたらしい。
「少しだけ待っていてくれ。
 どうせ、この案の元はどこかはわかっている」
「は?
 はあ‥‥‥」
 また待ちぼうけですか、わたしは?
 この衣装のまま?
 もうそれは遠慮したかった。
「あの旦那様。
 もうこれでいいですから。
 下着なしでいけと言われるならば、それでも構いません。
 そのーー」
 その?
 構わないと言われてもー‥‥‥シルドは返答に困る。
 アルメンヌはいまは情婦なのを忘れないでください。
 そうシルドに訴えた。
「わたしは昨晩、抱かれたことになっているのですよ!?
 旦那様に!!!
 イルバン卿のあの目を見ましたか???
 どれほど楽しんだのだろう。そんな目でした。 
 それが良いか悪いかとは言いません。
 でも、抱いたという前提なら。
 ちゃんと‥‥‥誉めて下さい!!」
「は?
 あ、いやーーそれは・・・・・・」
 もう、煮え切らない人!! 
 アルメンヌは短気だ。
 情熱的でそれでいて、自分を控えめにしている時も多い。
 この時は、シルドを愛する情婦を演じなければならなかった。
 それを命じた本人が一番理解していない。
「本当に、朴念仁ですね!! 
 綺麗か、似合わないか、大好きか、愛しているか!
 どれかくらい言いなさいよ!!」
 いや、そんなに胸元があわらな様子で迫るなーー
 シルドは冷や汗をかく。
 しまった。
 この舞台を張ったのは自分だと言う事を失念していた。
 ついつい、エイシャのことだけに目が行きすぎていた。
『フレイドルのシルド』
 そう呼ばれて喧嘩に女に遊びに明け暮れていた。
 あの十代後半の自分ならどうしただろう?
 ふと、そう思いあの時代に立ち返って考えてみる。
 そうだなー‥‥‥僕。
 いや、俺ならこう言うだろう。
 エイシャ、許せよ?
 そう心で謝罪して、シルドはアルメンヌを抱き上げそっとささやいた。
「ああ、綺麗だ。
 誰よりも、いまのお前は輝いている。
 俺といる時はその輝きが一番増すようにしたいものだ。
 美しいよ、俺のアルメンヌ」
 と。
 
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