突然ですが、侯爵令息から婚約破棄された私は、皇太子殿下の求婚を受けることにしました!

星ふくろう

文字の大きさ
103 / 150
新章 魔導士シルドの成り上がり ~復縁を許された苦労する大公の領地経営~

第二十一話 アルメンヌの嘆息 6

しおりを挟む
「だ、抱き上げて、そんなこと、まで‥‥‥。
 そんな本心でもない言葉までーー‥‥‥」
 おいおい、言わせておいてなにを真っ赤になっているんだ?
 この言葉と態度が欲しかったんだろう?
 シルドは悪童に戻った時と、今までの経験を加算した意地悪さでアルメンヌを抱き上げたまま、壁際に押し付けてさらにささやいた。
「本心かどうかはさて、どうかな?
 君がこの旅のあとに欲しがっている安全?
 それとも、失うことのない何か。
 それはーーなんだろうね、アルメンヌ?
 俺なら、外見だの離縁されただの。
 そんな過去にこだわらずに愛する自信はあるぞ?」
「ばっ、馬鹿なことを!!
 あなた様にはエイシャ様がいるではありませんか!!」
 うん、そうだな?
 だが、それを差し置いてでも安息を欲しがったのは君だ、アルメンヌ。
 シルドはそっと悪魔のようにささやく。
「世界でも指折りの魔導士でさらに帝国の大公でもある。
 これ以上の安息を与えれる存在が‥‥‥他にいるのかな?
 なあ、俺のアルメンヌ?」
 ひどい‥‥‥!!
 あまりにもひどい言葉だ。
 甘い言葉とムチを使い分けて、まるで本当の魔導士が悪の道へと誘いこむように。
 そんな言われ方をされれば、心に陰のある女なら‥‥‥
「まさかーーエイシャ様までそうやってーー!!??」
 おっと?
 正気に戻ってしまったか。
 シルドは苦笑して、アルメンヌをそっとベッドの上に降ろした。
「いいや、それはないよ。
 あれは、うん。
 妻だけは、僕の全てなんだ。
 誰よりも、愛してくれている。
 この心の底にあった、憎しみの火すら‥‥‥あれは吹き消してさらに。
 そうだね、更に愛情をくれるんだから。 
 さて、それで満足はしてくれたのかな?
 足りなければ、側室という名目でどこかに屋敷を用意しよう」
「そんな簡単に言わないでください‥‥‥。
 足りる、足りないの話ではないし。
 何より、そんなことエイシャが許すはずがーー」
 そりゃ、妻は許さないだろうな。
 シルドはそんなことは理解している。
 もちろん、エイシャにそんな具申もするつもりもない。
 言うとすればその後ろだ。
「どうせ、いるのはユニス様だろ?」
 あっけなく黒幕を見破られて、アルメンヌは口をパクパクとさせるしかない。
 なぜ分かったのですか、そう言いたそうにする彼女にシルドは、
「面白いものだな。
 義姉上。
 とは言っても、実際は年下だ。
 それでいて、あの方は夫を皇帝にするためなら何でもするだろう。
 君を良い様に利用してでも、ね。
 あいにくと、僕はそういうことばかりを王国でしたきたからな。
 好きではないのさ。
 さ、そろそろ本題に入ろうか。
 まずは、この城塞都市の塔の中身だ。
 そこにどう生活をする構造があるのか。
 シェス大河の氾濫時にどう街が変わるのか。
 あの腐臭の原因は何なのか。
 どれも調べる必要がある」
「いきなりの本題に入られるのですね、旦那様は。
 腐臭の原因ですか?
 その意図が分かりかねますが、なぜこのかっこうが必要なんです?
 普通に大公様としてここの責任者を詰問すればいいではないですか」
 いやいや、それは無理だよアルメンヌ。
 シルドは苦笑する。
「この土地の管理は古いままだ。
 城塞都市の中でもまともに運営されていない。
 そんな自身の恥になるものをどうやって誰がみせたいと思う?」
「恥?
 それは隠すでしょう。
 でもそれすらも見れる権限をお持ちではないですか‥‥‥」
「権限はね?
 では、見に行く時間と場所をもし、指定されたら君ならどうする?」
 アルメンヌは言葉に詰まった。
 それはつまり、汚いものを排除する。
 そこにあるものを退ける。
 誰かがーー
「被害者がでる。
 そういうことですか‥‥‥」
「そう、だからこそ、だよ。
 下はタイツを履くなりそれは任せる。
 では階下にいるよ」
 部屋を出る時にシルドは一言だけ添えて出て行った。
「アルメンヌ、君は美しいよ」
 と。
しおりを挟む
感想 130

あなたにおすすめの小説

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。 結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。 アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。 アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。

「犯人は追放!」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で“価値の高い女性”だった

佐藤 美奈
恋愛
セリーヌ・エレガント公爵令嬢とフレッド・ユーステルム王太子殿下は婚約成立を祝した。 その数週間後、ヴァレンティノ王立学園50周年の創立記念パーティー会場で、信じられない事態が起こった。 フレッド殿下がセリーヌ令嬢に婚約破棄を宣言した。様々な分野で活躍する著名な招待客たちは、激しい動揺と衝撃を受けてざわつき始めて、人々の目が一斉に注がれる。 フレッドの横にはステファニー男爵令嬢がいた。二人は恋人のような雰囲気を醸し出す。ステファニーは少し前に正式に聖女に選ばれた女性であった。 ステファニーの策略でセリーヌは罪を被せられてしまう。信じていた幼馴染のアランからも冷たい視線を向けられる。 セリーヌはいわれのない無実の罪で国を追放された。悔しくてたまりませんでした。だが彼女には秘められた能力があって、それは聖女の力をはるかに上回るものであった。 彼女はヴァレンティノ王国にとって絶対的に必要で貴重な女性でした。セリーヌがいなくなるとステファニーは聖女の力を失って、国は急速に衰退へと向かう事となる……。

田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。 それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。 ――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。 田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。  マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。

【完結】濡れ衣聖女はもう戻らない 〜ホワイトな宮廷ギルドで努力の成果が実りました

冬月光輝
恋愛
代々魔術師の名家であるローエルシュタイン侯爵家は二人の聖女を輩出した。 一人は幼き頃より神童と呼ばれた天才で、史上最年少で聖女の称号を得たエキドナ。 もう一人はエキドナの姉で、妹に遅れをとること五年目にしてようやく聖女になれた努力家、ルシリア。 ルシリアは魔力の量も生まれつき、妹のエキドナの十分の一以下でローエルシュタインの落ちこぼれだと蔑まれていた。 しかし彼女は努力を惜しまず、魔力不足を補う方法をいくつも生み出し、教会から聖女だと認められるに至ったのである。 エキドナは目立ちたがりで、国に一人しかいなかった聖女に姉がなることを良しとしなかった。 そこで、自らの家宝の杖を壊し、その罪を姉になすりつけ、彼女を実家から追放させた。 「無駄な努力」だと勝ち誇った顔のエキドナに嘲り笑われたルシリアは失意のまま隣国へと足を運ぶ。 エキドナは知らなかった。魔物が増えた昨今、彼女の働きだけでは不足だと教会にみなされて、姉が聖女になったことを。 ルシリアは隣国で偶然再会した王太子、アークハルトにその力を認められ、宮廷ギルド入りを勧められ、宮仕えとしての第二の人生を送ることとなる。 ※旧タイトル『妹が神童だと呼ばれていた聖女、「無駄な努力」だと言われ追放される〜「努力は才能を凌駕する」と隣国の宮廷ギルドで証明したので、もう戻りません』

処理中です...