突然ですが、侯爵令息から婚約破棄された私は、皇太子殿下の求婚を受けることにしました!

星ふくろう

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新章 魔導士シルドの成り上がり ~復縁を許された苦労する大公の領地経営~

第二十四話 シルド大公の外遊 3

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 シルドの問いかけにアルム卿は複雑な顔をした。
 まるで答えがあるが、それが正解ではない。
 複数の回答があるかもしれない。
 そんな問題を前にしたような顔つきだった。
「うーん、難しいですな‥‥‥」
「難しい、か。
 どうもこの一行には妙な派閥の関連があるようだな、アルム卿?」
 アルム卿は困った顔になってしまう。
 この大公様には隠し事をするよりは、どんどんと開示していったほうが良い。
 そんな気にさされてしまうからだ。
「どう、お知りになりたいですかな?」
 自分よりも十は歳の離れた上司が三人の騎士のつながりをどう処遇したいかを知りたいようだった。
 シルドは考える。
 アルアドル卿はまあ、ユニス派でもエイシャ派でもない。
 どちらかと言えば、このハーベスト大公家の者。
 そんな雰囲気だ。
 アルム卿はユンベルト宰相の直属だろう。
 帝国に害があると判断すれば即座にシルドを消すだろうし、その際はエイシャにも同時に危害が及ぶはずだ。
 まあ、その前にシルドは妻という、なによりも大事な存在を残してきている。
 ここで反旗をひるがえす気は毛頭なかった。
 あとはユニスとエイシャの問題だがー‥‥‥
「僕は愛妻家か、それとも恐妻家かはわからんが、あれを危険にさらされる。
 もしくは晒すくらいなら、二人で帝国を出るだろう。
 どこか辺境にでも行くさ。
 その方が気楽だ」
 ほう?
 そうアルム卿が面白そうな顔をする。
 彼は多分、十年後に何が起こるかをユンベルト宰相から聞いているはずだ。
 シルドはそう考えていた。
「なら、大公様はもう女大公様と共に去られても‥‥‥誰も、文句は言いますまい?
 なぜ、命を賭けて王国から帝国に帰属されたのですか?」
 うん?
 そんな話をいまさら‥‥‥
「それは仕方がない。
 ユニス様に命を賭けさせたのは僕だからな。
 命には命をもって、償うしかないよ。 
 妻にもそうだ。
 あれがこうしたい、そう望めば僕はそうする」
 僕の存在は、あの姉妹のものなのさ。
 シルドは臆面もなく言って退けた。
「ならば、あのお二方がもし帝国に反旗をひるがえされた場合はー?」
「そんなこと決まっているじゃないか。
 エイシャだけ連れて、さっさと王国なり、枢軸なりに逃げる」
「‥‥‥は?」
 それはあまりにも筋が通らない返事だった。
「いやしかし、あの姉妹のものだと」
「それはそうだ。
 しかし、義姉上にはブルングド大公もユンベルト宰相様もおられる。
 レブナス高家も縁戚、東に南の大公家もそうだ。
 そうなれば、いま名を挙げた全員が帝国を二分するだろう。
 ユニス様はそれだけの功績を挙げられている」
 あのエニシス半島の共同管理権なんてその際たるものだろう?
 そうシルドはアルム卿に問いかける。
「それはそうですが‥‥‥、しかし、ならなぜ逃げる、と?
 最後まで戦うのが騎士ではーー」
「いや、それは少しだけ違うよ、アルム卿。
 このシルドはエイシャだけの騎士だ。
 家も帝国も王国も義姉上も関係ない。
 帝国にはこれだけ世話になったのだ。
 反乱を起こすのなら、さっさと退くのがせめてもの引き際だろう?」
 それはあまりにも変化球ですなあ‥‥‥アルム卿は返事できなくなってしまった。
「恩返しをしたいが、それも出来ず、かといって裏切るならさっさと消える。
 うーむ。
 どうも全ての汚名を受け止めているようにしか見えませんがな?」
「そうか?
 いいのだよ、百年、千年後には反逆者シルド、そう呼ばれるのが今の僕の役目だ。
 聞いてはいるのだろう?
 ブルングド大公の地から何が起こるのか。
 もうかなり先にはなるが、宰相殿は話されているはずだ」
 はあ、とアルム卿はため息をつく。
「最後には一番大きな問題を抱えて去るおつもりですか。
 ご夫婦で歴史に名を残すほどの罪を?」
「義姉上夫婦が幸せになれば、それで僕らはいいのさ。
 ところで、二階のあの二人。
 肌の色は違うが同じ赤毛と来た。
 さて、レブナス高家の御当主は何を御望みかな?」
 シルドとアルム卿は面白そうに二階を見上げた。
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